天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第14話プロローグ編『お正月を届ける』

めっちゃ短い前回までの話。

「実はSMAPファンだった正広に付き合い、早坂家の1998年はSMAPと共に開けた。今年はどんな年になるのか、早坂兄弟のおみくじは何だったのか、腰越奈緒美が年を越したのは、パリなのかバリなのか!謎は深まる(笑)」

yukio

「あけましておめでとうございますーっ!」
腰越人材派遣センターの初出社は、1月5日の事だった。
元気よくドアを開けた正広は、入るなり両腕をつかまれた。
「な、何っ?」
左腕に派手なモダン柄の振り袖を、今風に着崩した千明、右腕にこちらもモダン柄の振り袖の典子がいる。
「うわぁ、すごーい、二人とも!」
「さ、ひろちゃんも」
「えぇっ?俺ェーっ!?」
振り袖だと言うのに、いつもと変わらない大きな歩幅で二人は歩き、奥のロッカールームに正広を引きずって行く。

一瞬の出来事だったため、後から入った由紀夫も、呆然とその背中を見送るしかできなかった。
「あらあら、あんたもよ」
「何がぁ」
上品な、しかしこっちも振り袖姿の奈緒美が社長席からいい、由紀夫が怒鳴り返す。
「腰越人材派遣センターの仕事始めは、着物で正装って決まってるでしょおー?」
「そんなもん、去年やおととしはやってねぇだろ!」
「今年からそうなったのよ。ほら、あんたも着替えて」
「着物なんて持ってねぇっての!」
「知ってるわよ、そんなの。もう、大変だったんだから。ちょっと?野長瀬?」
「はいはい、準備できてますぅー」
黒い羽織袴の野長瀬が給湯室から出てきた。
「由紀夫ちゃん、こっちです、こっち」
「なぁんでだよおー!」
「いいから急いで!初詣いかなきゃいけないんだから!!」
ブーブーブー。文句を言っても、奈緒美は言い出したら聞かない。
「何、おまえ着付けできんの」
「できますよぉー?任せてください。はい、こちらです、こちら」

由紀夫に用意されていたのは、渋い濃い緑の和服。
「よかったぁ。俺も羽織袴かと思ったじゃーん!」
「いえ、それはこっちにちゃんとあるんですけどね?」
開けられた畳紙の中に、紋付きの羽織が見える。
「何だよ、それー!」
「社長デザインの、早坂家の紋です」
「バカじゃん?」
「まぁまぁ。あ、はい、こちら。足袋はいて下さい?」

意外に手際のいい野長瀬に和服を着せられ、給湯室を出た由紀夫は、すっ飛んでくる千明の額を、思いっきり伸ばした腕で押さえた。
「あけましておめでとぉーん!」
「おめでと、おめでと。何だよ、おまえそれ…」
「かぁわいいでしょ?ほら、見てぇ!ここ、ここ!ほら、クマちゃんもいるの!」
千明の振り袖は、ピンクを基調に様々な模様がついているもので、袖の後ろ側に、確かにテディベアもいた。
「…シルクの無駄遣い…」
「でも、由紀夫もかぁっこいいぃーっ!似合うね、似合うね、和服!」
分厚いぽっくりをはいているというのに、ぴょんぴょんその場飛びをしてる千明。
「はいはい。…あ!おい!正広は!?」
「うふぅふぅふぅふぅー」
不気味な笑い声を残し、千明はロッカールームに消えた。
「ちょっと、奈緒美!」
「あら、似合うわね。グッチに行ったんだけど、和服は作ってないって言われてねぇ」
「バカじゃねぇの?んなもん作ってるはずが…」

「ジャジャーン!」
ロッカーから出てきたのは、こちらも和服姿のジュリエット星川だった。
「お待たせしましたー」
典子、千明も、出てきて拍手をする。
「やだよぉーっ!」
「正広!?」
「何!似合うじゃない!」
星川が一度消えて、次に開かれたドアの前に現れたのは、見事な古典柄の振り袖を着た、正広だった。
「なぁんで、振り袖なんだよぉー!」
「それねぇ、気にいって買ったんだけど、千明じゃ話にならないし、典子でもちょっとねぇ」
立ち上がった奈緒美は、正広をくるんと後ろを向けて帯びの結びを確認する。
「あんた、意外な特技があるわよねぇ」
「日本女性として、着物が着られるなんて当たり前じゃないかしら?」
オホホホホ!と星川が高らかに笑う。
「だいたい、あんたさぁ、なんで振り袖なのよ」
「未婚だもん」
「その年になって振り袖着てるのなんて、黒柳徹子くらいよ」
「誰があそこまでの年よっ!!」
「そじゃなくってぇ!」
年寄り二人が騒いでいるところに、正広が割って入る。
「何で、俺!?典子ちゃんや千明ちゃんがダメでも、菊江ちゃんなら似合うでしょー!」
「あ、だめ。菊江の好みじゃないのよ、この柄」
白地に、綺麗な典型的な古典柄。帯も、古いいいもの、らしい。
「兄ちゃぁーん!」
つっころびそうになりながら、由紀夫に向かってダッシュしようとする正広を、周囲の人間が慌てて止める。
「危ないですよっ!ひろちゃんっ!」
「やだぁ!ねぇ、兄ちゃんっ!」
騒いでる正広をじっと見て、由紀夫は奈緒美に何か言ってやろうと睨み付けたところ。
「さ、ひろちゃん、お年玉上げるから」
「あ!じゃあいいですぅー!」
ぴょん!と方向転換して、ほらほら、とポムポムプリンのぽち袋をひらひらさせてる奈緒美に駆け寄って行く正広。
「…お年玉程度で体売ってんじゃねぇーっ!」
「だってお年玉だよ!ほら!あ!兄ちゃんにもあるっ!」
育て方を間違ったか…!天を仰ぐ由紀夫だった。

全員が和服になり、続いて出かけるのは、近所の神社。
「初詣っ、初詣っ!ひろちゃん、初詣行ったぁ?」
「行ったよ。元旦に兄ちゃんと行った」
「えぇー、いいなぁー。あたしも行きたかったぁー」
正広の順応力は大したもので、自分が振り袖を着せられているのは、大して気にならなくなっているらしい。
奈緒美が先頭、すぐ後ろに野長瀬と由紀夫が従い、さらに後ろに派手な振り袖の集団がいるものだから、和服の多い神社の境内でも一目をひいてしょうがない。
が、それこそが奈緒美の望むところ。
「いやぁーん、いいわねぇ、やっぱりぃ」
「見栄っ張り…」
「なんか言ったっ!?」
「いやぁー?」

お参りをして、おみくじをひく。
由紀夫と正広の初詣の時は、二人ともが中吉で、そこそこの運勢だった。
「今日は、何かなぁー!」
ドキドキしながらあけたおみくじには。
「兄ちゃん!兄ちゃん、兄ちゃんっ!」
長い袖をぶんぶん振りまわしながら、由紀夫を呼ぶ。
「腕むき出しになるからやめなさい」
由紀夫は、正広の腕を押さえて、下に下ろさせた。
「はい。何?」
「大吉!大吉っ!」
「お、すげぇじゃん」
大吉のおみくじを見せられて、ニコニコ笑顔の正広の髪に手を置く。
「兄ちゃんは?」
「俺?中吉。変わらず」

「ささ、集まってくださぁーい!」
放っておけば旗でも振りかねない勢いで、マヌケな若旦那みたいな野長瀬が一同を呼び集める。
「これから、ランチに参ります」
「ランチだぁ?」
「さ、こちらでございますぅー」
大型のバンに乗せられて、一行は青山に向かった。

「なぁ」
「みんな注文決めた?大丈夫?注文するわよ?」
「なぁ!」
「兄ちゃん、飲み物何?コーヒー?」
「おまえも疑問を覚えろ!なんで、この寒いのにオープンテラスだ!!」
派手な着物の一行は、青山のよく目立つオープンテラスに座っていた。
「バッカねぇ、これも宣伝よ、宣伝。さ、野長瀬」
「はいっ、社長」
「あんたも行きなさい、千明」
「なぁんで、なぁーんでぇーっ?」
「あんた他に仕事できなんだからビラ配りくらいしなさぁーいっ!!」
奈緒美に怒鳴られ、大袈裟な泣き真似をしながら千明は野長瀬にくっついて歩道に出た。
イヤでも目立つ一行に目をひかれる人たちに、どんどん配られるチラシ。

「あ!こら!気をつけろ!」
その頃テラスでは、オープンサンドに手を伸ばそうとしていた正広の袖を由紀夫が押さえていた。
「これ汚したら、俺ら何年タダ働きされるか解んねーぞぉー?」
「えっ!そなのっ?」
「そぉんな事ないわよぉー!」
大袈裟に手を振る奈緒美だったが、小さく舌打ちしたのを由紀夫は見逃さない。
「でも、ひろちゃん、ホントによく似合うわねぇ。成人式、楽しみにしててねぇ」
「えぇー…?俺、成人式も振り袖なのぉー?」

やや意気消沈した正広をからかいながら、一行は徒歩で事務所に戻った。
「さてっと。後は、挨拶回りだわね。ひろちゃんと由紀夫と…。野長瀬車の準備して」
「はいっ」
「何で、正広や俺までが挨拶回りっ?」
「あら、せっかくそんなに似合うのに。見せなきゃもったいないでしょ?典子、こっちに来る人いるかもしれないから、接待よろしく」
「はぁーい」
「千明は典子の言う事聞いて、それであんたは…」

一人一人、指差しながら指示する奈緒美の手が止まった。全員の視線も、その先に集まった。
「…あんた、誰…?」
「あ、あの…」
和服の若い女の子だった。上品な訪問着で、髪をアップにしている。
「あの…、これ…」
おずおずと差し出したのは、さっき野長瀬たちが配っていたチラシ。
「あら!まぁまぁ、登録ですかっ?」
突如お仕事モード。典子はお茶入れに走る。
「いえ、あのっ」
大人しそうな、その女の子は、慌てて手を振る。
「あの、こっちの…っ」
ほっそりした指先が指差しているのは、ちらしの片隅についでのように載せていた「届け屋」の文字の上だった。
「お届け物が?」
「はい…。あの、お願いしたいんですけれど…」

1998年。腰越人材派遣センター、ひいては早坂由紀夫の最初のお客様は、和服の似合う上品かつ妙齢の女性であった。

<つづく>

ひろちゃんの振り袖(笑)いや、私は好き(笑)さて、来週はどうなってしまうのか!一体どんな仕事なのか!予定としては、腰越人材派遣センター冬の突発社員旅行、温泉編になるのか!?ならんかもしれん!!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

What's newへ

Gift番外編1話前編に

Gift番外編1話後編に

Gift番外編2話に

Gift番外編3話前編に

Gift番外編3話後編に

Gift番外編4話前編に

Gift番外編4話後編に

Gift番外編5話に

Gift番外編6話に

Gift番外編・番外編前編に

Gift番外編・番外編後編に

Gift番外編7話に

Gift番外編8話に

Gift番外編9話に

Giftスペシャル番外未来編に

Gift番外編もしかしたら前編に

Gift番外編もしかしたら後編に

Gift番外編10話に

Gift番外編11話に

Gift番外編12話プロローグ編に

Gift番外編12話前編に

Gift番外編12話後編に

Gift番外編13話プロローグ編に

Gift番外編13話前編に

Gift番外編13話後編に

Gift番外編年末年始特別編に

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ