vol.17
青木 栄瞳
夏の少女とバランス感覚
《ベッドで目覚める仔猫の前足のように 》
つま先で
遮光カーテンを開けた少女。
七月の光線が ひたいに絡む 直射の
エッセンス・リンスは
白に限る ホワイトの匂い。
I'm sixteen.
ツユ明け宣言が
ピ ン
カレンダーの 止め金の上で
スピン三回転半。
きのうのボーイフレンドのフル・ネームは
教室の黒板で 紛失。
ニュー・シネマ気分の 主役は
夏の長い休暇。
ま ち
人混みの都市が好き。
そ と
外界は
パンク(RUNK)な ライヴ・ハウス。
完熟したい
アイスボックス
産直メロンを冷やす 冷蔵庫は
ガラス皿に載る
果物ナイフのように磨かれ、
外出先を決める
少女の白いパランス感覚が夏の髪を束ねる。
《月曜日の市民プールは水が冷たい。》
(少女は)
向かい風をもカーブさせるサンダルを
突っかけ、
そ ら
ハンサムな青空が拡大している
市民プールへ
独走。
マガジン・ボックスがウインクする
コンビニ前は、
一瞬タッチの斜め読み チェックで
通過。
ソバカスの鼻っぱしは上向きにして、
夏休みは 御機嫌の
三越・特選品。
プールサイド
・ ・ ・ ・ ・ ・
花壇の ひまわり並びが (今年も)
元気印の 快感二列縦隊。
単純細胞じゃない?
花の種って!
マサキ君、
貸したCD、返してよね!
(初公開の)ピンカールした睫は
風通しの良いオープン・カー。
(乗る? 反る? )
ビキニ
水着の花模様がフリル・フリルして
人ざわりの
夏の汗。
解禁、
初泳ぎ。
(さて、初泳ぎの サカナになる かな。
水中バレエをする
セブンアップ シャワー
冷たい 7 UPソーダの 泡 みたいに――
マサキ君、
新作のCD、貸そうか!
《月曜日の市民プールは水が冷たい。》
突っかけサンダルの少女が
プールサイド経由
お持ち帰りの品は
氷いちごミルクと
新作のボーイ・フレンド。
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│借りた日(93.7.15 ) │
│返す日 (93.7.22 まで) │
│借りた本「夏の少女とバランス感覚」│
│八王子市中央図書館 0426-64-4321 │
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返却日が通過。
夏のレポートは まだ白紙のまま
机の上にサングラスが二つ並んでいます。
水中メガネじゃ 眠れない!
(第一詩集「カパ」より驢馬出版)
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