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vol.17
 

「「弦が奏でる心とリズム」青木栄瞳の詩の世界」の感想


2000.6.28  桐田真輔

 6月25日の小雨降る夕刻、立川市のこぶし会館で開催された「「弦が奏でる心と リズム」 青木栄瞳の詩の世界」に行く。この催しは、パンフレットを見ると、立川アンサンブル(国立音楽大学卒業生、在学生、地域住民を中心にした弦楽合奏団)が主催する、今回で3回目になるという演奏会ということだが、今回は第二部で青木栄瞳さん、清水鱗造さんが、詩の朗読をされるというので、愉しみにしていたのだった。

 7時から開演。第一部「弦楽合奏とバレエ」は心弾む「80日間世界一周」の演奏で幕があき、指揮者宮野義傑氏の挨拶からカルテット編成でのピアソラの「リベルタンゴ」へと、演目が気持ちよく流れてゆく。再度アンサンブルに編成を変えてのコレルリの「合奏協奏曲第9番」の演奏の後は、レスピーギの「リュートの為の古風な舞曲とアリア」。この曲に合わせて、踊り手、ジャスティーナ・レスリー、ジャクリーン・レネさん(振り付け、ジャンセン由美さん)によるクラシックバレエが、赤と青のほのかな照明をバックに会場奥の舞台で華やかに演じられた。

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 10分間の休憩を挟んで、第二部「詩人青木栄瞳朗読とトーク」が、小坂奈穂さんの軽やかな電子ピアノの独奏から幕をあける。青木栄瞳さんが登場して、自作詩「夏の少女とバランス感覚(テキストがあります)」の朗読。続いて、青木さんが、御庄博実氏の『御庄博実第二詩集』から「私は鳩!」「マリン・スノー」の二作品を バーバーの「アダージョ」の演奏に合わせて朗読した。

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 次に清水鱗造さんが登場。清水さんは、今日演奏されている方たちは、みんな僕の子供くらいの年齢で、、というようなしぶい挨拶をされて(^^;、あらかじめディーリアスの「二つの水彩画」を聴いて、曲に合わせて書き下ろしたという新作詩「水に触れる葉」「かたつむりの虹」を朗読。詩の朗読と演奏を交互に入れるという形で朗読されたのが工夫されたところ。

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 「パッフェルベルのカノン」をバックに青木さんが、「聡明なピアノ」「UVカット」(青木栄瞳詩集『ハ長調の海とパラソル』所収)の二作品を朗読。青木さんの声は、とても張りがあって気持ちがいい。ここで今回コンサートマスターをされた岡田鉄平氏がヴァイオリンのスリリングで優美な独奏を披瀝。弦の魅力がたっぷり伝わってくる。次に、青木さんが新詩集『バナナ曲線』からの「ドルフィンキック」「めくるめく・マクルメク」の二作品を、岡田さんのヴァイオリン(清水さんの掲示板の青木さん情報によると「オリジナル・「パガニーニ」崩し」)で朗読。しめくくりに指揮者の宮野さんの挨拶の後、アンコール曲として、豊穣な「G線上のアリア」が朗々と流れて演奏会は終わったのだった。

 構成も破綻無く内容もバラエティに富んでいて、とても見応え聴き応えのある演奏・演舞・朗読の会だったと思う。音楽と詩の朗読の兼ね合いでいえば、「マリン・スノー」の朗読と、「ドルフィンキック」とヴァイオリン独奏の組み合わせがとても気持ちが良かった。前者は海や空といった変わらぬ雄大な自然のスケールを想起させる弦の調べが、詩の言葉に裏打ちされてしみじみと心になじんでくるように感じられた(突飛かもしれないが、小林秀雄の戦争についての文章を思い出した)し、後者は、いるかが海原を疾走したり、不思議な声で鳴いている様子を歌った軽快な詩の気分が、岡田氏のすばらしい弦の(パガニーニ崩しの(^^;)技巧で、鮮やかに視覚的なイメージとして脳裏に広がったのだった。両者とも詩と音楽が渾然してひとつの独立した世界を作っているという不思議な感じだった。

 自分としても、いろんな発見があった。清水さんの朗読とあわせたディーリアスの曲が美しくて、後日LPやCDを8枚ほど借りた(^^;ので、これから暫く聴きこんでみるつもりだし、青木さんが代読された御庄博実氏の詩にも興味を持って、当日受付で詩集を買い求めたので、これもしばらく枕頭におくことになりそう。

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 写真は私が当日デジカメで撮影したものを掲載させてもらいました。踊りの方や演奏者の方々に事前に了承していただいていませんが、どうぞあしからず。なお当日50枚くらい撮影したので(下手ですが)、もしメールに添付して送ってほしいという方がいたら、mail桐田(kiri@air.linkclub.or.jp)まで。。

 来る7月9日に江戸東京博物館第一会議室(午後2時〜8時)で行われる、ふみの会主催の詩誌の展示即売をかねた朗読会イベント「第二回 TOKYO ポエケット in 江戸博」でも、清水さんの詩誌「boobytrap」代表(^^;としての、青木さんの朗読と岡田さんの演奏が聴けるもよう。絶対すばらしいので、興味のある方は是非に。。

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e-mail: mail桐田真輔
KIKIHOUSE



『弦が奏でる心とリズム』


詩朗読 青木栄瞳 ゲスト清水鱗造・御庄博実
バレエ ジャックリーン・レネー ジャスティーナ・レスリー ジェンセン・由美
指揮 宮野谷義傑 弦楽合奏団 立川アンサンブル
ソロ おかだ鉄平(vn) 大貫聖子(vn)河村治(cello)
6月25日(日)6:40会場 7:00開演
立川市こぶし会館
(JR立川駅のりかえモノレール砂川七番 徒歩1分、西武新宿線玉川上水駅徒歩5分)
入場料1000円
主催 立川アンサンブル 問い合わせ 042‐536‐4638


<雨の木の下で>「雨の塔」をみていた(布村浩一)

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