リボン
|
| はじまり
| 体の中でぱたっと音がした
| 不吉な音
| それっきり
|
| ベッドをあたためる日々が続いた
|
| 私の体の中心にあった石は
| いつのまにかなくなっていた
| どこへも行けない日々
| どこかへ行きたい気持ちもまた
| 萎えてしまった
|
| 昨日までの笑顔をくやむ
| だれよりもすばやく私が私をあわれんでみる
|
| 謝ったりお礼を言ったり気持ちを伝えたり
| ひととおり
| 枕の中に入れておく
| 過去をえらびながら
| そろそろと後ろ歩き
|
| 美しい涙は横どりし、
| いきなり熱心に腕をつかまれたので
| おどろいて後ずさったところ
| 増水した目黒川に
| 背中から
| スローモーションで
| 落ちていった
|
| なつ、という名前の女の子がいる
| もちろんかわいらしく
| それはそれは幸福そうに
| わらっている
| ふたつのみつあみの先に
| リボンを揺らして
|
| この先
| 約束は不確かになり
| 希望は限定される
|
| はじまりはじまり
| と
| おしまい
|
|