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vol.27

坂輪綾子の詩1 新作詩

リボン


リボン


はじまり
体の中でぱたっと音がした
不吉な音
それっきり
  
ベッドをあたためる日々が続いた
  
私の体の中心にあった石は
いつのまにかなくなっていた
どこへも行けない日々
どこかへ行きたい気持ちもまた
萎えてしまった
  
昨日までの笑顔をくやむ
だれよりもすばやく私が私をあわれんでみる
  
謝ったりお礼を言ったり気持ちを伝えたり
ひととおり
枕の中に入れておく
過去をえらびながら
そろそろと後ろ歩き
  
美しい涙は横どりし、
いきなり熱心に腕をつかまれたので
おどろいて後ずさったところ
増水した目黒川に
背中から
スローモーションで
落ちていった
  
なつ、という名前の女の子がいる
もちろんかわいらしく
それはそれは幸福そうに
わらっている
ふたつのみつあみの先に
リボンを揺らして
  
この先
約束は不確かになり
希望は限定される
  
はじまりはじまり
おしまい

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