「国民年金法と外国人問題」では、国民年金(新法・旧法)の範囲内での外国人
差別を検討してみた。しかし、公的年金は国民年金だけではない。国民年金
(拠出制)の制度発足前に既に、民間の労働者を被保険者とする厚生年金保
険、船員保険が既に存在した。これらには国籍要件はない。両年金制度とも制
度発足時には、在日朝鮮人・韓国人とも「大日本帝国臣民」であった。既に厚
生年金保険・船員保険の被保険者であった者を「講和条約国籍離脱者」として
一方的に日本国籍を奪い、「日本国民」との間に差別を持ち込んだ。しかし、
過去に保険料を負担してきた年金制度において被保険者資格を奪うことはでき
なかったのであろう。これで公平は確保できたであろうか。以下便宜的に厚生
年金保険に関して論じてみる。