不条理な年金制度の期間は一応は是正されたかに見える。しかし。「国民年金法と外国人問題」で論じたように日本国籍者との差別が残されている。
また、昭和36年4月以降、昭和61年前までの期間が合算対象期間とされるのは、いわゆる「新法適用者」(大正15年4月2日以後生まれ)に限られる。旧法適用者(大正15年4月日以前生まれ)に対しては、通算対象期間とされず適用されない。国民年金への加入を拒まれ、本人の責に帰する理由もな
いにもかかわらず厚生年金保険の年金受給権を得ることができず、脱退手当金のみしか受けられなかった人への措置はされていない。
年金給付において、法の遡及適用は、「国民年金と外国人問題」で書いたように既に中国残留邦人への特例、沖縄特例などで為されている。また、平成6年
改正法においても障害給付に関して、現行法の納付要件を満たしていれば、過去に受給権を得られなかった人を対象に遡及適用している。
国籍条項の撤廃の現実的利益を実現するためにも、既に脱退手当金を受給し年金受給権を失っている人に対し、少なくとも昭和36年4月以降の20歳から60歳までの期間を合算対象期間としたならば発生したで
あろう厚生年金保険の受給権を脱退手当金の返還を条件に認めるべきであろう。
これ は旧法適用者にも認めるのが条理といえる。
なお、日本国籍者に対しては、社会保険審査会:平成11年2月26日裁決において大正2年生まれの受給権者に係わる22年前の脱退手当金の支給を取り
消して年金の受給権を認めた行政措置を追認している。外国人の被保険者であった者にも、新法適用者・旧法適用者を問わず同様にあり扱われるべきであ
ろう。