日記(不定期)

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本(ミステリー中心)の感想とライブ(ジャズ&ロック)の感想が多いです。ミステリーの場合にはネタばれもあるので,ご注意下さい(マウスで選択し反転させると読めます)。人が殺される話が嫌いな人は抜かしてお読み下さい。

2005年1月

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

日記の色分け  読書:グレー 音楽:ピンク 生物:グリーン 歴史:ブラウン

1月20日(木)

読書: 職場のAさんより借りて,川上弘美椰子・椰子』を読みました。夢物語風とでも言うんでしょうか。数行の日記が一年分続き,四季の切れ目に8ページほどの短い話が出てくるスタイルです。いきなり出だしから<もぐらと一緒に写真をとる。もぐらの全身を見るのは初めてである。>などと始まるので,にやにや笑いながら読んでしまいましたが,全部がそのようなわけのわからないちょっとした夢のような話ばかりです。子供の頃,大晦日の度に弟に自分で作った物語熊とか猫が主人公だったかな)を話してあげたことを思い出しました。ユーモラスな絵も楽しいですね。

まだ体調がちょっとよくないので,今日のライブ(大友良英's NEW JAZZ FESTIVAL)はパスすることに。

1月19日(水)

スタンドの電気を付けたまま寝てしまったので,起きたら何か体が痛い。頭もちょっと痛い。目も少しだけ痛いかな。

今日は今年初めてのライブ鑑賞の日。待望の大友良英's NEW JAZZ FESTIVAL(5days)です。初日の今日はNEW JAZZ ENSEMBLE plays Eric Dolphy「Out to Lunch」。Eric Dolphyの名盤「Out to Lunch」を全曲演奏するということですが,わりと好きなアルバム(ヴィブラフォンが効果的に使われている)なので,楽しみです。前売り番号は105番(出遅れたましたな),なかなかの混み具合。テーブル席の後ろで立ち見です。リーダーの大友良英(ギター,ターンテーブル奏者)はフリージャズからノイズとかいうのを経て今は音響派とか言われている音楽をやっている人で,けっこうその世界(?)では有名な人(国際的にも)。難しい理論とかやってるわりには,何となく気さくそうな感じの人です。大友さんのライブを観るのは約1年ぶり(そんなに行ってなかったかな?)。その前の3年間では10回ほど聴きに行ってたので,久しぶりにという感じがします。

今日は海外からAlfred Harth(ts,bcl),Axel Dorner(tp),Mats Gustafsson(bs)の3名が参加,津上研太(as)を交えてのホーン隊は音に厚みがあって聴き応えがあります。特にMats Gustafssonのバリトンサックスは演奏の幅が広いというのか,多彩な感じで印象に残りました。津上さん。ヴィブラフォンは高良久美子。やっぱり「Out to Lunch」にはヴァイヴが欠かせませんね。じっくりヴァイヴの響きを聴かせる曲が多かったのもよかった。水谷浩章(cb,最近結婚されたそうで,おめでとうございます)と芳垣安洋(ds)のリズム隊は,12/31にも聴きましたが,今日もやっぱり楽しそう。

今回初めて見たのがSachiko M(sine waves)と宇波拓(computer,最初と最後の2曲のみ参加)の二人です。音的にどちらが何をやっているのか僕にはよく分かってないのですが,たぶんツピーとかピーとか鳴ってる音がSachiko Mさんのsine wavesで,ザーとかガーが宇波さんの出している音ですかねぇ? 単なる効果音というだけでなく,これらの音(ノイズ)がある時とない時では演奏に微妙な違いがでるんだそうです。確か大友さんのホームページに書いてあったような気がする。余談ですが,以前職場で大友良英NJQのCDをかけていて「ピーって雑音が耳障り」と言われたことがありました。でも聴き慣れるとけっこう癖になるものですよ。

で,曲も演奏も(客も?)とてもよかったのですが,体のあちこち(特に背中と腹の筋?)が痛い状態で聴きに行き,さらに立ちっぱなしだったので,聴くのに何となく集中できなかったのが残念でした。特に後半は足も痛くなり,きつかった。最後の曲はもともと複雑な曲に水谷さんがさらに複雑なホーンアレンジをしたとのこと。聴いていて頭の中が何だかぐるぐるとしてきました。最後に時計の振り子みたいな音が流れ,音が小さくなり余韻を残して終わり。アンコールはなし。「アルバムの最後の曲が終わった後に,ボーナストラックとか余計なの入ってるのって嫌でしょ」とのこと。

「明日明後日は人が少なくて寂しいのでぜひ来て下さい」「こんなDolphyなんて昔の音楽聴いてもしょうがないので,明日明後日のを聴いてください」と言って笑う大友さんでした。ちなみに5日間のうち4日以上聴いた人は,高校生・大学生の時に演奏した音源のCDが貰えるらしいです。

1月18日(火)

何となく体がしんどい。風邪の影響がまだ残っているのか,なかなか疲れがぬけません。また時間ばかりがどんどん先にと進んでいく。何かを追いかけて来た僕は息をするのもきつくて,立ち止まって見送っているだけ。←こんな夢を最近見ました。シャレにならないので,なるべくなら現実にやらないように。

川上弘美『椰子・椰子』を借りました。絵(山口マオ)からして楽しそうです。

今日もまた,積んどく本が増える。明日からの大友良英ライブの前売り券を買いに行き,ついでに本屋に寄る。喜国雅彦『本棚探偵の冒険』・森博嗣『奥様はネットワーカ』・浦賀和宏『眠りの牢獄』・牧野修『黒娘』・山田正紀『風水火那子の冒険』。増えすぎ! それと,気になったのは野村宏平『ミステリーファンのための古書店ガイド』。どうするか迷ったけれど,今回はパス。また今度,気になった時に買うかもしれない。古本屋通いだしたらちょっと大変だよな。

牧野修黒娘―アウトサイダー・フィメール』を読みました。−−近づく男どもは、問答無用で骸(むくろ)に変わる! クールな長身美女アトムと甘ロリ系美少女ウラン。2人の去った跡に築かれた惨殺死体の軌跡を辿って、迫り来る謎の男。逃げるように旅をつづける殺戮の女神が目指しているのは…… エログロ系ヴァイオレンス・ホラーとでも言うのでしょうか。ストーリー的にはわりと単純で,女性蔑視主義にかたまった迫害者たちを(そうじゃない普通のスケベな男たちも含めて)かたっぱしから虐殺していく話です。単純さゆえにというか,何か象徴的とでもいうようなものを感じます。そういえば“エログロ”という言葉は最近あまり見かけないですね。“鬼畜系”とかの言葉で代用されるようになったのか。“エログロ”の代表的な存在であったろう山田風太郎の忍法帖や江戸川乱歩の大衆小説などを頭に浮かべても,あながち間違いではないような。とにかく他の作品(『傀儡后』とかってどうでしょう?)も読んでみたくなりました。

1月17日(月)

今日は天気がいい。

読書: 昨夜の続き,東川篤哉学ばない探偵たちの学園』を読み終わりました。−−「だんしがしんだいでしんだ」 回文もどきの第一声で始まった足跡なき密室殺人,続けて起きるアイドル高校生の失踪。芸能人も多く通う私立鯉ヶ窪学園でおきたこの大事件に,学園探偵部の3人と顧問の生物教師がお気楽に(あくまでぬるく)乗り出す。−−密室物のユーモアミステリーです。にんまり系です。トリックなど,たまに何だかなーという部分もありますが,まあまあです。ユーモアもちょっと何だかなーという部分がありますがまあまあです。語り手がちょっとだけ何だかなーですが...まあ微妙なラインってとこですね。大笑いもしないけれどつまらなくもないと。登場人物表からしてユーモア入っているので,それだけでも読めばだいたいどんなユーモア加減かわかりますよ。どちらかというと短編向きな人のような気もしました。同じパターンが何度も繰りかえされると辛いかなという意味で。辛口なことばかり言ってるようですが,楽しみながら読めたのでわりと好印象。なので,僕自身の評価では6.5/10点(最近では標準作)。

しかし,1月も半分終わってしまったなんて信じられないよ。信じたくないよ。

夜,具合が悪くなったので,夕食後は早く帰る。おかしいな,早く寝たはずなのに。ライブ(大泉学園でやるやつ)もどうするか迷って今日はパス。19日の大友良英NJEから聴きに行くことになりそう。

1月16日(日)

読書: 昨夜から今日の昼間まで,寝て起きてを繰りかえしながら,岡野宏文・豊崎由美百年の誤読』を読みました。20世紀の百年間に日本文学史上で話題となった本やベストセラーを計100冊取り上げ,バッサバッサと語り斬る痛快な書評対談。今その本を読むことに意味があるか,という視点から見ているのも面白い。あげ足取りも豊富です(名作といえど突っこみ所は必ずある)。近年のベストセラーはかなりダメダメで,失楽園もハリポタも愛される理由もぼろくそです。戦前は文芸作品が多いのですが,戦後(特に昭和35年以降)はビジネス書などのハウツー物やタレント本とかも多いのが,何か変な感じ。そういうのが売れるのが戦後のベストセラーという現象なのか,戦前のそういう本は売れても記録に残りにくいのか,どうなんでしょうか。スターのスキャンダル暴露とかは昔も盛んだったと思うのですが。

まあ,とても読み応えあり。1冊ごとの話はどれも面白いのですが,さすがに100冊分まとめて一気に読むにはきつかった。まあ少しずつ区切って,あるいはまず自分が読んだことがある本から読むのがいいでしょう。しかし,出てくる20世紀のベストセラー100冊(+21世紀の10冊)ですが,ほとんど僕も読んでないな。教科書に載っていた「羅生門」「城の崎にて」「山月記」以外では,堀辰雄『風立ちぬ』と養老毅『バカの壁』(半分だけ)ぐらいですね,読んだのは(→注,付記)。そういえば,本文中にも「読んで役に立つ事なんてほとんどないのに,成功した実業家や大富豪の自伝をなぜ読みたがるのか」って疑問がよく出てきますが,アレってどうしてでしょうね。やっぱり単にあやかりたいのかな。中身を読まなくても,持ってるだけでいいことがあるような,そんな感覚なのでしょうね。

ぼろくそが目立つ中で,『風立ちぬ』は意外にもかなり高い評価だったので嬉しかったですね。僕も最終章の「死のかげの谷」がとても好きだったんで(あの章だけ独立に読んでもいいよね。何より恋人が死んだ後の話なのに,そのことには直接的に触れずに“悲しい”という言葉さえ使わずに,現在の心境だけで感動させるテクニック。堀辰雄は基本的にテクニックの作家だと思うし,他の作品とかだと鼻につく部分もあるんだけど,それでもあの章はいいですね。あの章があるだけで評価大。それに比べ本当に今の安易な恋愛物の書き手は...以下略。まあセカチューとか読んでもいないのに文句言うのもアレですが)。そういえば昔テレビで,軽井沢で若者に「『風立ちぬ』の著者は誰?」という質問をして,一番多かった答えが松田聖子っていうのは笑えました。というか笑えなかったというか(どっちだよ?!)。

夜,何となく憂鬱に。大したことじゃないんだけど,こんな時の気分転換ということで山手線に乗りました。電車の座席に座って本を読んでいると,何となく気持ちが和みます。短い時間を同じ閉鎖空間で過ごした人たちが適度に入れ替わっていくのが,どうも気分的に落ち着くらしい。そういう療法とかありそうでしょ。だれか心理学(精神医学)的に説明できる方はいませんか? 

まずその前に,昨日も買ったばかりだというのに,新宿の本屋で衝動買い(?)。森博嗣『そして二人だけになった』・若竹七海『死んでも治らない』・鯨統一郎『なみだ研究所へようこそ!』・高田崇史『QED 竹取物語』・西尾維新『零崎双識の人間試験』・山田風太郎『不知火軍記』のなんと6冊。それはおいておいて,余計なことを考えてしまって読書にさえ集中できない時がたまにあるのだけれど,そういう気分でも電車の中だとなぜだかよく読めるのですよね。

てなわけで,山手線で一周しながら,東川篤哉『学ばない探偵たちの学園』を読みました。読み終わらなかったので,感想は後。日曜夜の山手線は品川→東京間は特に乗客線が少なくて,ローカル線のようでした。本を読みつつ時々つい笑ってしまったりで,ちょっとだけ恥ずかしかった。

付記(1/18):読んだのが5冊(話)だけということもなかった。『澁江抽斎』「赤い人魚と蝋燭」「押絵と旅する男」『頭の体操』『窓ぎわのトットちゃん』『もものかんづめ』も読んでました。それでも十分の一ですか。

1月15日(土)

朝から雨,雨,雨。北国では大雪もありですが,東京は雪にはならなそう。世間では今日からセンター試験も始まったそうで,大雨(大雪)の中ご苦労様です。実を言うと僕みたいな技術職にも,明日は試験監督のアシスタントが何年かに一度回ってきます。今回(明日)も当たっているのだけれど,交代要員なので自宅待機。担当会場が女子校だったので,こういう時に当たっておきたかったですが,この雨の中行くよりはましですね。(女子校だと一般的に設備が新しくてきれいなので,すごしやすい。男子校でも,暖房効いてねえぞっていうのはさすがにないですけれど。)

そう言えば第132回の芥川賞・直木賞が13日に決定したようですね。今回はあまり注意してなかった。芥川賞の阿部和重『グランド・フィナーレ』は受賞できてよかったですね。奈良の事件とかあったりで,タイミング的にまずいかとか思いましたが(主人公が元?ロリコン)。まあ基本的に別物だけれどね(そうじゃないとナボコフも泣くよ←意味不明)。事件みたいなのはやっぱり特殊だから。しかし芥川賞なんかを取る前に読んでおきたかった作家ではあります(何か受賞したから買うみたいなのもちょっと... って,そんなもん気にしてるんじゃねえよ!)。この前,中原昌也とどちらを先に読むか迷ったんだけれどさあ。って,だから...そういう問題ではない! とりあえず『シンセミア』は読みたいなと。

さて直木賞の角田光代も,芥川賞候補が3回に直木賞候補が2回目と,何度も名前が挙がっていた人だったので,よかったですね。伊坂幸太郎は残念でしたが,今や売れっ子なのでまた機会があることでしょう。

寒いので外に出たくないと思いつつ,新宿の本屋で買い物。岡野宏文・豊崎由美『百年の誤読』,伊坂幸太郎『チルドレン』,天城一『天城一の密室犯罪学教程』の3冊。

1月14日(金)

夕方より職場の組合の新年会あり。ビールを飲む。

伊坂幸太郎オーデュボンの祈り』を読む。文庫化された際に買ったきり,なかなか読む気にならかなったもの。何となく,そろそろ読んでみようかと。で,久しぶりの◎。−−コンビニ強盗に失敗した伊藤がたどり着いたのは不思議な島。150年も外部と交流のないその奇妙な島に住んでいるのは,人語を話し未来の予知をするカカシ,嘘しか言わない画家,島の規律として殺人を繰り返す男など,奇妙な人々(?)ばかり。ある夜カカシが殺された。なぜカカシは,自分の死を予測できなかったのか?−− デビュー作ということもあるが,すごく若々しいというか,とにかくさわやか。けっこうダークな部分もあるのだけれど(主人公を追う警察官・城山のたちの悪いこと悪いこと,登場人物達にも暗い過去が…),それなのに読後感にはさわやかさだけが残ります。虚構と現実をバランスよく織り交ぜた大胆なストーリーに,洒落た会話も面白い。最近すれてきて(笑),そこら辺の本格ミステリなどではびっくりできなくなってきた今日この頃,久しぶりに興奮するミステリーを読みました。7.5/10点。

1月13日(木)

朝,荒野で何かの金属を探す少年達の夢をみる。最後の場面では,池に浮かんでいる蛾を棒ですくい上げる。何だろう。

川上弘美の短編集『竜宮』より,「北斎」「竜宮」「狐塚」「轟」の4編を読む。どれもわけの分からない、変な夢みたいな展開の話ばかりなのに、なぜか自然に納得させられてしまうのが不思議。何となく不安になり、かつ何となく安心するそんな話。本は知り合いが図書館から借りた物をちょっと読ませてもらっただけ。次の機会を待ちましょう。

床屋に行き,早めに帰って早めに寝る。

どうやら,今年最初のライブに行くのは来週になりそう。

1月12日(水)

もう風邪はよくなったみたい。気分的にもわりと快調。そろそろライブとか行きたいな。

岡野宏文・豊崎由美『百年の誤読』。やっぱり読みたい。ネットで読者評を読むと,Amazonではわりと酷評されているが‘はてな’ではかなり高評価。おそらく,意見が合う部分には「そうそう。そうなんだよね」,合わない部分には「ダメだな。まだまだ読みが甘いよ」って,楽しみながら読む余裕がない人には合わないんだろうね。書評を読んでいてそう思った。僕の場合はわりと意見が合いそうなので,どっちみちまあ問題なしだろう。そんなのでいちいち怒ってちゃだめだよ。

今夜は『ファウストVol.3』より,奈須きのこD D D JtheE.」と舞城王太郎駒月万紀子」を読む。「D D D JtheE.」はまずタイトルの意味が僕には不明。悪魔憑きと戦う男の話。場面転換(時間の前後関係)が分かりにくい。短編としては説明文が多いが,話自体はまあまあか。連作にすると面白いかもしれない。毎回,後輩が殺されたと勘違いしては忘れるとかね。 「駒月万紀子」はよく分からない。登場人物である奈津川次郎のキャラクターが読んでいてだんだん分からなくなる。頭の中に“次郎”の人格を誕生させては成長させ殺していく男。次の奈津川家サーガではどう出るのだろうか。

1月11日(火)

まだ熱下がらず。風邪薬に頼っている状態。3日寝込んだのだからさっさと治ってくれ。まあ寝てなければもっと酷くなったのかもしれないし,このぐらいですんでよかったと考えましょう。

新聞の書評欄を読んで,岡野宏文・豊崎由美の書評本『百年の誤読』を読んでみたくなりました。サルトルの『嘔吐』を「訳文がよくない」といい,<火曜日 記すことなし。実存した>は豊崎だったらこう訳す<ぶっちゃけ暇。なんかオレ今,超いるって感じ>,これだったら読みたくなるかも。 それはさておき,最近切り抜いて集めている新聞の書評欄をうまく整理できないか,考慮中。

西島大介凹村戦争』を読みました。ハヤカワSFシリーズJコレクションの1冊。コミックで1300円はちょっと高いかな。−−山に阻まれ携帯電話もラジオの電波も届かない隔離された場所,凹村。何も起こらない平穏な毎日を友人達とおくる中学3年の凹沢アル。この平和な村に,ある日空から落ちてきた物体X。<火星人さん早く!侵略しに来て! 地球はいい星ですから…>−− 単純化された絵,表情の乏しいキャラクターに少ない心理描写,小説とかで言えばいわゆる‘行間を読みとらせる’作風は,好き嫌いが別れるかもしれないですね。あっさりしたストーリー展開にあっさりしたラストからは,ある種の余韻みたいなものが漂っている,そんな感じです。西島大介のイラストは最近いろいろな所で見かけますが,最初に気になったのはユリイカ号外の西尾維新特集だったかな。あれを見て興味を持った人にはお勧めかもしれません。

何となく気分悪し。訳もなく落ち込む(まあ風邪のせいだね)。こういう時こそ,アレを読まないと。

で,佐藤友哉虹色のダイエットコカコーラレモン(短縮版)」。(今日から寝る前に『ファウストVol.3』を読むことに。今頃感はあるがせっかく買ったからね。)色シリーズは今回初めてだけれど,本作は最新作(最終作?)。既作を読んでいればもっとよく分かるのかもしれないが,これだけ読んでもよかった。何となく今の気分だと,こういうのがうまく響いてくる。登場人物は<覇王>をめざす主人公(19歳♂無職,虹色のどこかを追い求める),「はさみ」ちゃん(元同級生,他人に興味がない,はさみが武器),ユカちゃん(癌で余命2ヶ月の10歳)の3人。最初から最後まで壊れている物語。暴走するトラック,逃げまどう群衆(肉のカタマリ)たち。3人の中では「すべてに意味がない」というユカになぜかシンパシーを感じる。最後の絶望までも。もしかしたら人生の最後には僕にも同様の感情がやってくるのだろうか。そんな予感もしてしまう。


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