植物地誌

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ポプラ

新市街にある遠い方の駅までの大通りに直立して並ぶ。夕焼けの舞台背景

では、いずれも細長い紡錘形となり、腕を張り出して空を仰ぐ。無数の徽

章は三角形で裏面に綿毛がなく、若いうちはさらに大きい。ロビンソン風

力計を備えるが、少しの風にも揺れ動き、淡色の裏面をひるがえす。雌雄

異種。雌の木はほとんど見られない。乾燥した中央アジア、タリム盆地、

あるいは荒涼の北欧フィヨルドでの憂わしい思い出に雄花を垂らし、20本

の雄しべを束ねる。
ツユクサ

早朝の散歩道、休耕田の野原、ウコギの藪陰、畑などにごくふつうに捨て

られている走り書きのメモ。長さ１．５～２cmの二つ折になったハート型

の紙切れが散らばる。意味ありげな文字が、虫食いのように一言ずつ記さ

れている。青インクが容易に読み取れず、捨てられた場所ににじんで消え

てしまう雑草である。紙は白っぽく、基部が鞘になる。うち３枚は白くて

小さく、２枚が大きくて青く、１枚は白くて小型。間にはさまれた栞は変

形して花粉を作らない。文字は楕円形で薄茶色に熟したら３片に破れてこ

ぼれる。
ヒナギク

病臥するあなたの庭園に棲息する多年草。盛りは春であるが早春から笑う。

花茎は背伸びしたねずみぐらいで、揺れる頂部に径２～３cmの顔を１個つ

ける。顔の周辺に細長いベロが付き、中心には黄色の小花がたくさんつい

て体毛がない。ベロの色はふつう白で先端が淡黄色になるが、紅色、白色、

赤紫色などもある。ほとんど顔全体が細長いベロ（黄色くない）に変わっ

た八面咲きもあり、花茎も背伸びした猫ぐらいにおよぶ。

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スギナ

緑色の柔らかいミニドレス。全体として箒状である。栄養茎に何段ものギ

ャザーがあり、それぞれのギャザーからフリルが輪生している。フリルは

小さい膜質の鱗片状に退化して、フリルどうしが合着して、ギャザー部分

で、ウエストを鞘状に囲んでいる。茎どうしは長いチェーンでつながれて

いる。チェーンにも節がありフリルが輪生する。胞子茎（つくしんぼ）は

少女用。ギャザーもフリルも淡褐色。先端に一個の胞子ぶくろをつける。

食用。屋敷の裏のいちご畑の東側を流れる堀割の土手に繁茂する。鞘状の

フリルの長さがふつうの二倍にもなり、縁が白色の膜質のものはイヌスギ

ナである。

コマクサ

栽培は難しい。北西のハリモミの林をぬけ、イバラの藪をこいで息の希薄

な青白い礫地にたどりつくと、夏の南中の光が礫地全体をおおう時刻に、

いっせいにリボンをほどく。街角にいても、目と口を閉じてうなだれると、

かさこそと音が聞こえる。分裂した青みのある白っぽい緑色の包装紙。多

年草で高さはバネじかけのびっくり箱ぐらい。リボンの結び目から基部が

嚢状に突起し先が反曲した贈り物があらわれる。萼片は長さ２～３mm。実

は長楕円形で長さ１cmぐらい。
マクワウリ

果実は円柱状、楕円体、果皮は緑色で縦の縞模様がある。果皮の白いもの

や黄色いものもある。インド地方の野生種が中国のカケスについばまれ、

朝鮮のツルについばまれた。二千年後、屋敷の中庭に金瓜売りがやって来

る、たくさんの虻をつれて、甘い汁を滴らせて。人々が群がる、スプーン

をかざして。金瓜にスプーンを突き立てる。舌がひりつくまでほおばるた

くさんのキリギリスの顎。その咀嚼の音を聞きつけて、あなたのベッドか

ら垂れ下がる腕。指先が床をはいまわって、夕べ落としたスプーンを探す。

唾に輝いていたスプーン。新しいほこりの粒子が、横たわる人の全身を覆

う。

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