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詩集『飼育記』(関富士子著)より

願懸け列車・



(おれを飼ってくれよ。)

暗闇を走る列車は速いのだか遅いのだか

終点までは止まらない

あんたからひたすら遠ざかりながら

クロスワードを解読する

(庭のすみっこにつないでくれ。)

音が腰のあたりでつながると

二つの意味が立ち上がる

会いたさ一心

心そこ信じて

列車に願懸け

鈴掛け橋架けた

(ちびったらぶってくれよ)

あだな酒のみ情けなく

悲恋連めん身も世もなく

羽根もあわせず歯の根もあわず

恥掻き走りかけ端駆けた

(ときどきくちをなめさせてくれ。)

あんたのためならなんでもしたい けれど

屈する姿勢であたしに強いる

寄り添うふりであたしを試す

あんたのやりくちにさよならしてきた

天に点と照り

地には血と散る

(おれを犬にしてくれ。)





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詩集『飼育記』(関富士子著)より

裏切り裏返し・



宵のくち座布団裏返す

小布折り返し大針刺し貫き

古綿打ち直し大根煮返し

風邪ぶり返す

思い返せばくやしあの日の裏切り

むらむらと仕返し思案す

お頼み申しあぐる今般の仕儀

問答果つるところはかばかしく返答もなし

万事休し尽くし迷路引き返しならず

ゆめゆめ事なかれの自戒もままよ

かくなるうえは前言翻し

問い詰め寄れば問い押し返し

袖引き止めれば見返し切り外す

怒り狂えばそらぞらしくねめ回し

哀願泣訴すれば嘲笑い蹴り返す

夜かきくどき昼寝返り打ち回れば

てんてん居所引き越し河渡る

その背中突き刺し抜き戻せば

死に返り生き戻る繰り返し







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