面影・
ちぢかんだままのあそこを囲んで
裸のわたしたちは当惑した
こんなに愛しあっているのに
なぜこいつはしょぼくれて
欲望もなくうなだれているんだ
かわいそうに
わたしはしかたなくそいつをつまんで
息を吹きかけてみた
おまえがなれなれしすぎるんだ
あなたがつめたすぎるのよ
わたしたちは憎みあい服を着て別れた
それから季節はめぐり
わたしたちの愛のかけらも
胸に刺さらず指からもこぼれたころ
ちぢかんでいたあいつが
背伸びをして語りはじめた
わたしの欲望はあなたたちの愛からははるか遠くの砂地のサボテ
ンのようなものにあります。色彩にあふれながらもすぐにあおざ
め、係累からも隔たり、わたしというかよわいトゲを求めていつ
も咲いているのです。しかしわたしは見えず聞こえず面影はその
姿をなぞることもできません。ええむしろ面影もなくあいまいな
サボテンのままで、わたしの恋人はむなしくわたしを待っていま
す。彼女はいつもわたしだけを身内に包みたいと願っていますが、
彼女もわたしの姿を知りませんから、あらゆる形を包むことので
きるように、休みなくぶるぶるとふるえながら、自分の姿を変え
ているのです。あなたたちの愛がわたしという形をとって仮りそ
めに現れるのを潔しとせずに、幻の恋人と思いを遂げるまで、わ
たしは一本の単純なアンテナとなっていたい。わたしがキャッチ
するのは、はるかな恋人の絶えまない欲情そのものです。