[Sky Walking] 空中散歩

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空中散歩 PART 2

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朗報は突然訪れる。
軽い口約束のつもりでかわした約束を律儀にも彼は実践してくれた。先日打ちっ放しで再会した彼が我が家に訪問してくれたのだ。 私は彼を家に招き入れ、先日の話の続きにまた花を咲かせた。
「ところで、今日来たのはひとつ頼みがあってきたんだ。」と友人。
「なんだ、頼みって?金なら無いぞ。」
私は笑って答えた。
「実は10月にヘリコプターの体験搭乗というのをやるのだが、そこに空きができてしまったんだ。」
「体験搭乗?」
「これは一般公募をほとんどしていないので知らないだろうが、毎年自衛隊の入隊希望者や民間人にヘリコプターを体験してもらうという企画をやっているんだ。」
私の好奇心に火がついた。
「詳しく聞かせてくれ。」
「堅苦しく考えなくてもいいんだ。ただ搭乗してもらえればいい。別に金もかからないし、その体験搭乗をしたからといって、自衛隊に入隊してくれって話でもない。」
「乗る。いや是非乗せてくれ。」
「そんな簡単に決めていいのか?」誘った友人もあっけないほど早い私の決断に苦笑いしている。
「こんなチャンスはきっと2度とない。乗ると言ったら乗る。」
「じゃ、この用紙に必要事項を記入してくれ。それと万が一の時のために緊急連絡先と携帯番号を・・・」
私は言われるままに用紙の空欄を埋めていく。舞い上がった心を表すかのように文字もいつもより踊っているように見えた。
飛行機には過去十数回搭乗したことがある。しかし飛行機の窓から本格的な写真を撮ろうと思ったことはない。分厚い二重の窓にあまりにもアングルが固定されすぎて しまうためだ。しかし今回は違う。もしかしたら本当の”空撮”ができるかもしれない。
乗れるだけでも幸運だろう。しかし私は・・・。
「写真撮影はできるのだろうか?つまりカメラの持ち込みはOK?」
腐っても鯛・・・という表現がふさわしいかどうかは別にして、仮にも軍隊(形式)である。 最初によぎった素直な疑問だ。
「それは問題ないはず。毎年の例からいっても今年だけNGにはならないだろう。一応確認しておくが。」
(やった!)
それは最後のハードルを飛び越えたような気分だった。

それから一ヶ月。一日千秋の思いでその日を待った。
そして待ちに待った搭乗当日。天候は朝から小雨が降り続いていた。 天候不順の場合は順延、または中止。
(・・・雨よ。止んでくれ。)
順延の場合は朝9時に例の友人から電話が入る手はずになっていた。
(鳴るな・・・鳴るな・・・鳴るな・・・。)
鳴ることを祈りつつ待つというのは経験があるが今回は全くの逆。なんとも奇妙な感じだ。
そして電話は沈黙したまま時間は過ぎていった。

(・・・決行だな。)
外を見ると西の空にわずかだが青空が広がってきていた。
昼食を摂り終え、機材のチェックに取りかかる。
レンズは前日、入念に埃を払い磨き抜いておいた。今回レンズは広角から望遠まで一本で 済ませられるTAMRONの28-200をチョイス。フライト時間がわずか20分程度の予定だから、途中 レンズを交換する暇など無いだろう。手ブレ防止機能の付いたISレンズに最後まで心が残ったが 重さと取り回しの煩雑さから今回は置いていくことにした。フィルムはISO100のポジを3本、400を1本 、念のためネガのISO100と400を各一本バッグに詰め込んだ。
後は友人が迎えに来るのを待つばかりだ。

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