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vol.16


少年の経歴  2000.5.25  関 富士子

 あの時14歳だった少年が、17歳なった。その3年間に特別なことは何もなかったように思う。

 学校が楽しくなくなるのっていつごろ?と尋ねると、中2の後半ぐらいかなと言う。学校には休まず行き、友だちも多い。サッカー部で活躍したかったが、けがが続いてレギュラーになれなかった。いじめというほどのことはないが、スニーカーを盗まれて困ったことが何度かあった。ふだんはマイペースだが、あるときキレて、クラスでいちばん強い奴を殴ったことがあった。

 体育は得意だが勉強が嫌いで、塾にも行かずのんきだったが、遊び歩くようなことはなかった。映画が好きになって、落ち込んだときに「スタンドバイミー」をくり返し見ていた。ゲームに熱中してよく叱られた。ぼーっとして生活習慣や約束事に無頓着なのに、服や持ち物は自分で選ばなければ満足しなかった。

 受験は希望していた近所の県立高校に推薦で受かった。サッカー選手になる夢を思い出したが、部員が80名もいて無理なことは明らかだった。女の子に告白されて付き合ったものの、二度目のデートもしない うちにふられた。朝は必ずシャンプーをして髪をセットし、遅刻気味に出かける。高2の夏休みにちょっと髪を染めてみた。

 サッカーをやめてボクシングをやりたいと言いだしたのは高1の冬だったか。雑誌に出ていた広告を見て、ジムに通い始めた。独りで気ままに練習できるところが気に入ったらしい。筋肉がついてきたのを、鏡の前でチェックしている。いつでもどこでも突然シャドウを始める。しゅっしゅっと息を吐きながらすばやくこぶしを繰り出す。まだスパーリングはさせてもらえない。

 なぜ人を殴りたいのか、彼の心の中はわからない。




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