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vol.16

present for you <詩りとり詩>


伝 節  (しりとりし)
            木村恭子


その老いたる父
地名のない 因習深き野に住む
息子はにかむ 麦笛を吹く
草むらの中 風が傾き
気の触れた 高島田結った
大食の花嫁 めとる
撮る写真 しんから笑わず
図々しく くだを巻き 奇矯なり

律儀な息子 これを愛し
シニカルな 慰め 目もくれず
ずさんな家事 時間は屁なり
理解不能な話 知らぬ慣習
羞恥なき非礼 
いさめぬ息子 恋ゆえ承知

父これを恥じ じっとしておれぬ
ぬばたまの闇 身を潜め
めとった嫁 女々しい息子
殺さんとして 手をくだす
すなわちまず嫁 冥土に旅立ち
遅刻して息子 ここに旅立つ

妻むすび頬ばり 旅愁なし
静かな夫麦笛鳴らす
澄んだ夏に 虹のかかれる


木村恭子さんの充実した個人詩誌「くり屋」4号に詩りとり詩を見つけました。木村恭子さんは「詩学」の投稿欄で毎月作品を読ませていただいている方でもあります。
さっそくrain treeに載せさせてくださいとお願いしたところ快くOKをくださいました。木村さんのお手紙から、一部を紹介します。
「言葉を繰り出す練習」・・・詩りとり詩の本質を早くもつかんでいらっしゃるようです。(関富士子)

私の「伝節」どうぞどうぞ何にでもご使用になってください。嬉しいです。これは、言葉を繰り出す練習にやってみました。3-4行は自動筆記みたいに何も意図せず、ただ浮かんで来る言葉を並べ、そうしているうちに何となく(こんなストーリーに)という風に筋を組み立てるように運びました。こんな事をするようになったのも、「rain tree」の影響ですヨ。」(木村恭子


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