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vol.27

<雨の木の下で>

 オレンジ色の電車 2003.9.19 坂輪 綾子


 朝洋服を選んで着てくるのだけれど、午後になって街を歩いていてショーウィンドーに映る自分の姿にはっとする。今日はこの服を着ていたんだ、と思う。オレンジ色の電車に乗ることはめったにないので、扉のところに立ってぼんやりと外を眺めていて、景色にオレンジ色の車体が現れると、はっとする。ああ今日はオレンジ色の電車に乗っていたんだと思う。長いパンを持ったまま、めったに行くことのない目的の場所へ近づく。そこでは、とがったところのない楽器から音が聞こえてくる。磨かれた鏡のような黒い石の床から、見たことのあるひとがこちらを見下ろしている。長いパンを抱えて少し前のめりになっていぶかしげな顔でじっと見下ろしている。それからはっとしたように、少し前のめりになって歩き出す。朝選んだ洋服を着ている。私とは靴の裏でつながっている。


 
紙版"rain tree"no.27掲載2003.9.19
<雨の木の下で>関富士子
<詩を読む>詩のリアリティを求めて―森原智子の詩「飲茶店『クレオール』考」を読む(関富士子)へ
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