rain tree homeもくじ執筆者別もくじ詩人たち最新号もくじ最新号back number vol.1- もくじBackNumberback number8 もくじvol.8ふろくWhat's New閑月忙日rain tree から世界へリンク関富士子の詩集・エッセイなど詩集など
gui20周年フェスタもくじ


小野原教子 vol.8
 gui20周年フェスタ Poetry Reading 

京都から駆けつけてくれた小野原教子。欠席の森原智子にかわって急遽読んでもらった。突然の指名に困惑していたが、緊張してつかえながらもピンチヒッターをこなしてくれた。国峰照子にあこがれて、guiに入りたいと手紙を書いたが、その手紙は封も切られず事務所の田村デザインの本棚の間に落っこちたまま半年。ある日やってきた奥成達が、ふとその手紙に目をとめた。というエピソードの持ち主。端正なスタイルを構築する詩も、こころの微妙なゆれを表現している詩も、どちらも魅力的。

小野原教子





衣服ばかり



身を読まれることになれていると

ふと読めなくなったときに置き場をなくす

それは、もうわたしの身体が読むところがなくなったのだろう

と、気づくまでには時間がかかる

相手を傷つけ、自分も傷つき

それでも晒すことになれた身には

もうどうしようもなく

刺青を彫ろうか、どこを削ぎ落とそうかなどと考えてみるけれど

これ以上傷を増やすのも相手には迷惑なものだ

おもしろい、興味深い、趣がある、奥ゆかしい

などということばはただ宙を舞っているだけ

彼は投げ出すのだ

ペンを

彼は投げ出した、疲れた

晒した身はもう何もすることがなく

ただ風に吹かれるばかり

そうして風を巻き込もうとする衣服

期待して翻っているのは衣服ばかり

gui no.55 december1998より
小野原教子
向かって右から、小野原教子・田村祐介・井上典子


野坂政司 詩四篇香川紘子「命の日数」「土に返る」"gui20周年フェスタ"もくじ
"rain tree" バックナンバーvol.8もくじへ"rain tree" 表紙へ"rain tree"もくじへふろくへ