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vol.14

<雨の木の下で>






ホ−ム・ペ−ジ「rain tree」参加顛末記 1999.12.9   嵯峨恵子

 関さんのお誘いに乗って、ハイハイと返事した私でしたが、インタ−ネット、パソコン、Eメ−ル等、よくわかっていた訳ではありませんでした。
 会社では社内事務処理に早くから機械を使い、端末に向かうのも慣れてはいましたが、何せ、現在の部署は(詳しい説明は差し控えます)経費削減のおり、まともにEメ−ルはおろか、ワ−ド、エクセルの研修も受けさせてもらえぬまま、かろうじて与えられたお古のパソコンを我流でいじって、現在のレベル(?)に達していたので、たかが知れている状態でした。

 まず、家にあるワ−プロではDOSという形では原稿を作成できないことがわかり、我が家のワ−プロの古さを自覚した私は意を決して新しい(パソコンではなく)ワ−プロを買いました。これは最新型だったため、パソコン通信とインタ−ネットができるものでした。それに電話線を繋いで通信してしまったところ、ゆるゆると申し込みが通過してしまい、あっと言う間にEメ−ル・アドレスを入手してしまいました。これで何とか原稿を電送できることになりました。

 しかし、いくら最新といってもワ−プロとパソコンは機能が違います。ファイル形式で送れと言われてもできません。関さんから送られたファイル形式のものも、私のワ−プロではアルファベットと数字の美しい模様ではありますが、意味がわからない。そこで、原稿は家から送り、会社のパソコンで完成状態をチェックすることとなりました。
 もともとせっかちでそそっかしい私のことです。必ずお送りした原稿が間違っているものですから、そのたびに訂正をお願いしております。

 HPは画面で見るものですので、画面を巻物のように上下、左右に動かしていかないと進んでいきません。それで長い文章はマッチしないと判断し、なるべく短文を繋ぐことを考えました。「暗幕日記」シリ−ズは映画の感想ですから、タイムリ−でありこの形態に合うはず。毎週気合を入れて映画館に出掛けています。単なる酔狂かもしれませんが。どこの紐つきでもないので、好きなことが言えます。
 詩はだいたい短いものしか書いたことがないため、画面に収まってしまうものがほとんどで心配しませんでした。関さんも読みやすく縦組、横組と画面を工夫いただいてます。

 一ヵ月が過ぎ紙版も出て、友人たちからぽつぽつと感想が届くようになりました。詩人の友人たちはインタ−ネットをやらない人も多いので、画面を印刷したものをあげると喜ばれました。これだと同人誌とあまり変わらない気もしますが、「パソコン インタ−ネット 見たこともない」という詩の入った詩集がベスト・セラ−になる世の中です。アレルギ−のある人も多いでしょう。何にでも良いことと悪いことの両方があります。ましてインタ−ネットやパソコンはまだ開発途上なのですから譲歩も必要です。

 会社のパソコンでHPを眺めていますと、おじさんが覗き込みます。「きれいな画面だね」「きれいな画面でしょう」と私も答えます。日常に溶け込んだ風景になりつつあります。彼は内容を全くわかってはおりませんけれど、エクセルの表は作れるのです。
 Eメ−ルをいただいて嬉しかったのは、実は町内の会社のOBであるおじさまからでした。現代詩に興味などないようでしたけれど、読んでいただくようになってからは、さすがに人生体験豊かな含蓄のあるお言葉もいただくようになりました。きっと、詩に関心のある普通の方(?)もネット・サ−フィンの途中でこのコ−ナ−にお寄りいただいているのかもしれませんね。

 もうすぐ、十二月も終わります。店子である私の任期も終わりに近づいてきました。毎週、新しいものをひとつは出すように心がけたつもりです。その分、太っ腹大家さんである関さんにはご苦労をおかけしてしまいましたが、来年、新しい月にはまた新しい店子の方の詩やエッセイがどんどん楽しめることでしょう。  最後に、できましたら「rain tree」のご感想を私か関さんまでお送りいただければ幸いです。簡単なもので結構ですよ。




テキスト文書の作り方 1999.12.9 関富士子

上の嵯峨さんの文章で、「「パソコン インタ−ネット 見たこともない」という詩の入った詩集」というのは、茨木のり子さんの『倚りかからず』。「ばかものよ」というのり子節健在といったところか。

ところで、今回登場してもらった嵯峨恵子さん、こうして改めて読んでみると結構いろいろな傾向のものを書いている。「サバイビング・ピカソ」や「マーキング」など、ジェンダーとしての男をかかせると、そのシニカルな批評眼が冴える。さらに過激に、血も涙もなくやってくれると、独自のジャンルを確立しそうな気がするがどうだろう。と、これはわたしの勝手な期待。「七月の影」「四月の魚」などの作品は、技法的にも本格的で、感覚で読ませるわたしのとても好きな作品、今度新作を書いてくれたのはいわゆる「母もの」だが、押し付けがましくなくからっとしていて、肉親の情愛がじわっとにじんでくる。
それにしても圧巻はやはり「暗幕日記」である。映画を見まくるという行為自体が主張になっていると感じ入ったしだい。それでなくてもここのところ映画を見に行く余裕のないわたしとしては、日記を読んで見たような気持ちになれるところがよい。ほかにも趣味をたくさんお持ちのようだ。


その嵯峨さんの苦闘ぶり、わたしの3年前を思い出す。面倒なことに巻き込んでしまってごめんなさい。それはそれとして、ファイルのやり取りの方法、これまで参加の皆さんに説明してきて、これからも続くものなので、のちのちのために書いておきたい。

 原稿のやり取りは、短いものなら、パソコンのワープロソフトや、ウインドウズなら付属のメモ帳で書いた文字の部分を「コピー」し、メールに「貼り付け」れば、どのパソコンでも受け渡しができる。しかし、長くて容量の大きいものや、短くてもHPに掲載するためにhtml文書に加工しなければならないものは、できるだけメールにファイルを「添付」して送ってもらうとありがたい。

ところがこのファイルというのはテキスト文書の形式でないと、インターネットメールに「添付」でやり取りすることができない。
テキスト文書というのは、文字と改行だけの情報しか含まず、非常にシンプルでどのパソコンでも読める。相手がマックでも大丈夫。よけいな情報がついていないので、html文書に加工するにもしやすい。

ウィンドウズのメモ帳で書いた文章ははじめからテキスト文書の形になる。ワードパットも新規作成で「テキストドキュメント」を選べばテキスト文書になる。しかし、パソコンに本格的なワープロソフトを入れて、これで書いている方も多いだろう。ワープロソフトは、各メーカーごとにいろいろな種類がある。それぞれ独自の文書形式があり、文字の大きさや字詰め、行数などの情報も指定できる。これを保存すると、さまざまな情報ごとワープロ独自の形式で保存される。この文書はそのワープロでしか読めない。 これをそのままメールに添付して送っても、奇妙なおどろおどろしい漢字や数字や記号が表れるだけで何も読めないということになる。。

メールに添付するには、この文書をテキスト文書に変換しなければならない。その機能がどのワープロにもついているはずである。 たとえば、ウインドウズなら必ずついている簡易ワープロのワードパット、これで作った「ワード6ドキュメント」の形式の文書をメールで送りたい場合、これをテキストドキュメントにするのはとても簡単。

1 メニューバーの「ファイル」-「名前を付けて保存」をクリック。
2 ダイアローグボックスが出る。
3 ファイル名の後に、半角の小文字で「.txt」と記入する。
4 「保存」をクリック。
これでテキスト文書のできあがり。できたかどうか確認しよう。
「ファイル」−「開く」をクリックして、ダイアローグボックスの「ファイルの種類」で、「すべてのファイル」を選ぶ。すると、元の文書のとなりに、同じ名前でアイコンの異なるファイルができている。これがテキスト文書である。
これでも面倒だったら、ワープロで書いた文書の文字部分を「コピー」して、「メモ帳」の新規作成画面にはり付けるという方法もある。

細かいことだがもう一つだけお願い。
ワープロで作った文書は、行ごとに字詰めを決めて、そこにいちいち改行マークがついているものがある。テキスト文書では、文字データのほかにこの改行部分も情報として含まれる。ところがパソコンのブラウザというのは、マシンによって文字の大小の設定がまちまちだから、この字詰めはマシンごとに違ってくる。このままhtml文書にすると、改行の部分に半角ほどのアキができてしまう。これをなくすには、改行されている部分を全部詰めていく作業が必要になる。これが長い文章だと結構たいへん。というわけで、改行は、本来必要な文章の段落ごとにつけるだけにとどめてほしい。

次回登場の金井雄二さんからもテキスト文書を送ってもらった。金井さんこれでばっちりです。12月末からどうぞよろしくお願いいたします。

嵯峨さんが買われたというのはワープロ専用機なので、このやり方はあてはまらないだろう。でも、インターネットやメールができるのならファイルも添付できる。またテキスト文書あるいはms-dosに変換する機能がついている。わたしのワープロ専用機はキャノン製でもう5年ほど使っている古いものだが、dos変換ができるので、仕事の原稿はキャノンの形式で書いたものをdosに変換してフロッピィで送っている。最新式のワープロなら、フロッピィではなくメールにこれを「添付」できるでしょう。嵯峨さん、お暇な折に研究してみてくださいね。きっと役に立ちます。

それにしてもさすがは嵯峨さん、わたしの太っ腹を、どうして見破ったか。ただいまノンアルコールダイエット、継続中です。





1999年の終わりに 1999.11.18 嵯峨 恵子

 今年は西暦千年代の終わりである。今年も残すところわずかともなれば、来年二千年をめぐってあれこれ、商魂逞しい動きもあって来年の干支である辰より、二千年記念の商品の方が多いくらいだ。

 しかし、数字も基準があって始まるものなのだから、基準がずれればいい加減なのではないだろうか。西暦にしてもキリストの生まれた年を基準としたはずが、四年のずれがあることは周知のとおりである。

 最近、地球上の鉄よりも重い元素は超新星爆発でできるということを知った。超新星爆発とは重たい星が死ぬ時の最後である。地球上に金、銀、プラチナなどの重い元素が存在するのは、地球誕生以前に星があったということなのだ。何度かの星の生と死の後、それらの材料が再び集まって地球が生まれ、やがて我々も生まれるに到った。星の生と死などと簡単に書いたが、むろん、我々の生死の長さなどとはスケ−ルが違うわけで、かんばって百年くらいの人間に対して、あちらは数百億光年などというのはざらである。ちなみに太陽くらいの大きさの星はそれなりに長生きで、大きい星の方が短命であるらしい。何やら意味深いと考えるのは私の深読みか。

 ご近所のアンドロメダ星雲がすごいスピ−ドで我が銀河星雲に接近中であるとも聞く。星雲どうしがぶつかるのはめずらしいことではないらしい。はるか未来、ふたつの星雲はぶつかり、新しい星々が生まれるのだという。その頃、人類は存在しているであろうか。いやいや、そのようなことを心配するより、ま近なミレニアムの祝祭に杯でもあげている方が我々にはふさわしい。

 星は長寿であるが、その星もいつかは滅びる。滅びて後新しい星が生まれ、やがて輝きだす。人の一生にできることは少ない。この生を精一杯過ごすことこそ、真っ当な人の生き方ではなかろうか。いつの時代も普通が案外むずかしい。




飛天 99.11.18  関 富士子

 この秋、北陸・京都・奈良と旅をした。一人旅は二十数年ぶりのこと。

 奈良の薬師寺には三重塔が二つある。東塔は八世紀のものだ。これが千年以上も建っていること自体が不思議だ。西塔は焼失したのを昭和五十六年に東塔と何もかも同じに再建したものだという。

 東塔のてっぺんのくすんだ白緑色の水煙を見上げて、おもむろに双眼鏡を取り出す。京都の東寺でも、失礼ながらこれで、薄暗い堂の奥に立っている神々のお顔を眺めてきた。帝釈天はハンサムである。法隆寺の金堂の雨樋に狂おしく巻き付いた龍の鱗の一枚一枚を舐めるように見た。薬師寺の薬師如来の、黒光りする右手の指のあいだには、柔らかそうな薄い水かき!がついている。

 塔を下からゆっくりとたどっていく。整然と並んだ丸い甍に刻まれた鬼たち、屋根の先に下がる風鐸などを眺めながら、塔のてっぺんまで行くと、青空に炎のような水煙がリズミカルに燃えている。全体はプレート状の彫金で、くっきりした透かし彫りである。楽奏しながら舞う二十四体の「飛天」が彫られているのだという。その中に少女時代に憧れていた笛を吹く人がいるはずなのだ。

 三十年前の修学旅行では双眼鏡は持っていなかった。記憶のなかの笛を吹く人は、何かの写真で見て一目惚れしたのである。背後に雲を巻き付かせ、うっとりと目を閉じて、笛にくちびるを寄せている。薄絹の裾はひるがえってたなびく雲に紛れている。彼は千三百年のあいだそこで笛を吹き続けている。

 水煙の炎の先端が、巻き上がるように輝いて、双眼鏡に細部が浮かび上がった。中心の柱に寄り添うようにして、その人はいた。思ったより小さい。片膝をつき一方の膝は立てた姿勢で、全身の輪郭がかろうじて見える。炎のなかで身を焦がしているようでもあり、空の中ほどに軽やかに浮かんでいるようでもある。ほかの「飛天」の姿はよく見わけられないが、彼らの奏でる古代の音楽が響いてくるようだ。

 新しい西塔にも「飛天」たちはいるのだろうか。金色に輝く水煙は逆光になって見えない。彼らはまたあと千年を生きるのだ。千年ののち人間のだれかが、その笛の音に耳を澄ましているのだろうか。  


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