rain tree homeもくじ執筆者別もくじ詩人たち最新号もくじ最新号back number vol.1- もくじBackNumberback number17 もくじvol.17ふろくWhat's New閑月忙日rain tree から世界へリンク関富士子の詩集・エッセイなど詩集など
vol.17

1955年の感謝祭


ダイアン・ディ・プリマ


中上哲夫さんから次のようなお手紙と、ダイアンのほかの詩が届きました。来客リストの痛烈な人物描写、アメリカらしくハードですね。でもおもしろいです。(関富士子)
 

中上哲夫さんのコメント

先に送ったダイアン・ディ・プリマの「買い物リスト」は「1955年の感謝祭」という作品の一部でして、ちゃんと読むと、(今回"ビート詩集"に入れようと思ってはじめて読んだ)「メニュー」や「来客リスト」もありました。
全貌をフロッピー・ディスクからプリントアウトして送ります。読んでください。
わたしの想像かなりちがっていたけど、それもご愛敬。ご存じのように、モダニズムの時代以来、作者の意図は絶対ではなく、解釈と鑑賞は読者の手にゆだねられるようになりました。つまり、どう読んでもいいのだ。お元気で。2000.8.1

1955年の感謝祭

  

メニュー



殻つきの蛤
ロースト・ダック
フィレ・ミニヨン
サラダーマッシュルームーアスパラガス
焼きたてのロールパン
シャブリーヴァン・ローゼ
イタリアン・パストリー


  

買物リスト



パセリ
大蒜
塵取り
ヘアピン
マッシュルーム
ブランディ?
ワイン
ロースト鍋


  

来客リスト



   わがまま女と気まぐれから結婚し、気まぐれとさ
らに絶望からほとんどかの女から免れているディック。
そう、進んでというわけではないけどなんでも食べる男。
締まりのない、名状しがたい顔。
   ディックと結婚したわがまま女、ミリセント。俳
優業の方がらくだという理由でダンスはあきらめ、月四
〇ドルのイーストサイドのアパートにエアコン入れさせ、
子どもたちを憎み、だれも欲しない女。首尾よく流産し、
入院中は何度も何度も癇癪を起こした。蛤も家鴨もアス
パラガスもマッシュルームも食べようとしない。パスト
リーをちびちび齧る。甘ったるい声でノーサンキューを
ずっといいつづけるのだ。
  
   豆のスープの方が好きなダン。
  
   ダウニーで食事する方が好きなビル。
  
   蛤の代わりに牡蠣があった方がよく、ガーリック
パンがあるといいと思っている男。出されたものはなん
でも食べ、ともあれこの集まりではなにか価値あるもの
にあふれている。座を占めている権利。
  
   不適当なことをいいつづけるが、気づきさえすれ
ばリプトン・ヌードル・スープを飲んでくれるピーター。
口いっぱい頬ばってたえずしゃべり、身振り手振り説明
する男。
  
   そして、この饗宴を造り出し、それを食べ、全部
をすこしずつ食べ、女性がほかの女性の家のディナーに
呼ばれたときはいかにあるべきかという観点からミリセ
ントにいらいらするわたしたち。
  
   飲み残したワインさえあった。


ダイアン・ディ・プリマ『ディナーと夢魔』(1961)より

Diane Di Prima

プリマは、イタリア移民の賛成として1934年にニューヨークに生まれてそこで育った。大学をドロップアウトして物書きになると、グリニッジ・ヴィレッジに住んだ。種々の職業につくとともに、画家や音楽家、詩人たちと係わった。ニューヨークの詩人劇場で活躍したあと、60年代後半サンフランスシスコに移住し、6人の子どもを育てた。早くも1962年に禅の鈴木大拙老師に出会った。老師の死後、他の仏教徒たちを見つけた。そのなかにチベットのラマ僧チョギャム・トルンパがいて、1983年弟子として認められた。
 プリマは、ロバート・ダンカンと一緒にサンフランシスコのニュー・カレッジに詩学プログラムを設立するとともに、ジャック・ケルアック詩学ナローパ研究所で定期的に教えている。
 著書としては、『この種の鳥は後向き飛ぶ』『ディナーと夢魔』『革命への手紙』『大地の歌』『ロバ』などの詩集のほか、自伝『一ビートニクの思い出』などがある。(中上哲夫)


vol.16tubuダイアン・ディ・プリマ「1955年、感謝祭のための買い物リスト」を読む (中上哲夫/関富士子)へ

tubu<詩を読む>釣れない幸せ(中上哲夫詩集『甘い水』を読む)(関富士子)へ
<詩を読む> 言語秩序からの解放(栄瞳流フリル言語の生成) (佐藤文明 )へ

rain tree homeもくじ執筆者別もくじ詩人たち最新号もくじ最新号back number vol.1- もくじBackNumberback number17 もくじvol.17ふろくWhat's New閑月忙日rain tree から世界へリンク関富士子の詩集・エッセイなど詩集など