| わがまま女と気まぐれから結婚し、気まぐれとさ | 
| らに絶望からほとんどかの女から免れているディック。 | 
| そう、進んでというわけではないけどなんでも食べる男。 | 
| 締まりのない、名状しがたい顔。 | 
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| ディックと結婚したわがまま女、ミリセント。俳 | 
| 優業の方がらくだという理由でダンスはあきらめ、月四 | 
| 〇ドルのイーストサイドのアパートにエアコン入れさせ、 | 
| 子どもたちを憎み、だれも欲しない女。首尾よく流産し、 | 
| 入院中は何度も何度も癇癪を起こした。蛤も家鴨もアス | 
| パラガスもマッシュルームも食べようとしない。パスト | 
| リーをちびちび齧る。甘ったるい声でノーサンキューを | 
| ずっといいつづけるのだ。 | 
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| 豆のスープの方が好きなダン。 | 
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| ダウニーで食事する方が好きなビル。 | 
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| 蛤の代わりに牡蠣があった方がよく、ガーリック | 
| パンがあるといいと思っている男。出されたものはなん | 
| でも食べ、ともあれこの集まりではなにか価値あるもの | 
| にあふれている。座を占めている権利。 | 
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| 不適当なことをいいつづけるが、気づきさえすれ | 
| ばリプトン・ヌードル・スープを飲んでくれるピーター。 | 
| 口いっぱい頬ばってたえずしゃべり、身振り手振り説明 | 
| する男。 | 
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| そして、この饗宴を造り出し、それを食べ、全部 | 
| をすこしずつ食べ、女性がほかの女性の家のディナーに | 
| 呼ばれたときはいかにあるべきかという観点からミリセ | 
| ントにいらいらするわたしたち。 | 
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| 飲み残したワインさえあった。 |