vol.17
<雨の木の下で>
(8)詩集のお値段
2000.6.28
さて、前回からもう2か月近くたってしまった。詩集のできるまでをリアルタイムで報告なんて言ったけど、もう校正は校了して、紙も決まって、あとはできてくるのを待つばかりという状況である。
詩集のタイトルは
『ピクニック』。予約販売のご案内をしていますので、ご興味のある方はどうぞ。
さて、版元のあざみ書房の社主、藤富さんから以下のような手紙をもらったのは4月の始めのこと。すぐに打ち合わせをして、具体的に次のようなやり取りがあった。詩集作りの細かいところや具体的にかかるお金などをとりあえず書いておく。
以下は藤富さんと早い時期に打ち合わせがあったこと。
>1 本のサイズは? あるいは見本になる本(例えばご自身の本でも他の人のものでもいいですが)
打ち合わせのときに、藤富さんは、わたしの既刊詩集など数冊見本にもってきてくださった。わたしはあざみ書房から以前出た、井上典子さんの『象の栽培』を持参した。大きさは何判というのか、横幅180MM、縦幅150MMのサイズである。A5判を30MMほど寸詰まりにした大きさである。これに決める。
>2 本扉か表紙(あるいはジャケット)に図柄が入るのでしょうか。入っても入らなくても墨一色でいいですか。墨一色でアミ掛けで濃淡出しましょうか。
制作費はできるだけ安くしたいと思っていたので、墨一色でやってもらうことにした。第二詩集は藤富氏にイラストを頼んだのだが、それがオオスカシバという蛾の細密画だったので、彼はとても驚いた。「ぼくは細密画はかいたことありませんけど・・・と言いながら、素敵なオオスカシバ蛾をかいてくれた。でも今回はわたしはぜひお願いしたい方がいた。KIKIHOUSEの桐田真輔さんである。ろくなお礼もできないし、OKしていただけるか不安だったが、お願いしてみるということになった。
>3 函は不要ですか。もしなければビニール・カバーですか。セロファンでしょうか。
函は不要、ビニール・カバーも不要、セロファンも不要にしてもらった。ソフトカバーの紙の手触りが好きである。
>4 帯をつけるなら、その文章はどなたかに書いてもらうのでしょうか。ぼくが書くのでしょうか。あるいは不要か。
藤富さんに書いていただきたいです。ぜひお願いします。と依頼。
これについては、後日藤富さんから、ぼくはうまくかけないといけないから、自分でコピーを考えてみたら? と言われた。わたしはとてもがっかりして、せっかくあざみで出すのに、藤富さんに書いていただけないなんて・・・、恋愛詩って苦手ですかあとむくれた。それで結局藤富さんが、一生懸命何度も書き直して、コピーを考えてくれた。
>5 綴じはムセンより糸かがりが少しねだんが張りますが、やはり糸かがりでしょうね。
はい、糸かがり、糸かがり!
>6 箔押しを表紙などにしますか。
箔押しはいりません。
>7 本文用紙はクリーム系ですか白系の用紙ですか。
ううん、よく分からないけどクリーム系ですか、と答えるやいなや、藤富さんは「いや、この白が絶対いい!」と言って指し示したのが、第二詩集の本文である。10年経つのにまったく色が褪せないと言う。で1も2もなくそれに決定。
>8 あとがきは、追ってお書きになるんでしょうね。
はい、早いうちに書きます。
>9 奥付の上か別のところに著作一覧のような略歴を入れるのでしょうか。
入れません。
>10 はやく本が出来るにこしたことはありませんが、納期、特別に考えていらっしゃいますか。
特にありません。秋ぐらいにできればOKです。
これは制作が順調に進んで、早くて7月下旬、遅くても8月中旬には納品ということになった。
>11 奥付に御自身の住所入れますか。
これは入れません。
>12 謹呈用紙の方に住所を入れることにしますか。
はい、そうします。
>13 部数をきめるのに、寄贈A冊、知己、友人B冊、委託などで置いてもらう、はじめ3冊ぐらい池袋ぱろうる、はじめ5冊ぐらいか10冊を地方小出版へ計C冊、そして自分がもっている分D冊
A+B+C+D=合計の部数ですが、現在どのようにお考えですか。
細かいく数は決めていないが300部ぐらいと答えるが、あとでもう一度考えて400部にしてもらう。この数年で詩人の知り合いがずいぶん増えて、寄贈だけで300部を越えそうである。
>14 思潮社のように営業でやっておられるところは、頭から・・・円と言いますが、ぼくのは営業でないし、広告を出すわけではありませんので、関さんの方の予算で印刷、製本、紙などを杉谷さんという友人に尋ねつつやります。念のため費用が必要なのは、
A いとう企画での組版(杉谷さんが京成社を定年でおやめになりました)
B 印刷、製本
(AB すべて、いとう企画と杉谷さんがやってくれます。)
C 編集と連絡 ぼくがやります。ABの一割。
D 寄贈用の発送の代金、封筒。
E 謝礼 杉谷さんに5000円ぐらい。
このうち発送を宅急便でやるか、郵便局かでぐっと値段がちがいます。これはいずれお話します。 藤富保男
お金に糸目をつけないほど金持ちならいいが、爪に火をともして自費出版の費用を工面しているのだからこれはとても重要である。一般に詩集にかかる費用は1ページ1000円といわれる。今度の詩集は96ページあるので、やはり100万円詩集ということになるのか。わたしとしてはかかってもA+B+Cで70万円ぐらいに押さえたいと話した。原稿はテキストファイルにしてフロッピィで渡す。
Dはわたしが浅草橋へ出かけて安い封筒を探してくる。
Eも了解。
寄贈用の発送については、あざみ書房で送る方がメール便で出せるのでだんぜん安い。納品されたらあざみに出かけて、藤富さんと二人でせっせと封筒入れ作業をする予定。
このあと、初校から4校までの校正のやり取り。イラストのやり取り、カバー、表紙、帯、見返し、扉の紙の色や質の細かい相談を繰り返した。紙の質が二転三転してなかなか決まらなかったが、ほかは順調に進んだ。
最終的な見積もりは以下の通り。
>A いとう企画での組版
>B 印刷、製本
>(AB すべて、いとう企画と杉谷さんがやってくれます。)
A+B合わせて、いとう企画へ支払い分が¥620、000(数量400部単価1550円)+消費税¥31、000=¥651、000
>C 編集と連絡 ぼくがやります。ABの一割。
¥62、000
>E 謝礼 杉谷さんに5、000円ぐらい。
というわけで、A+B+C+Eで¥718、000円となった。70万円を少し出たが、96ページの詩集としては、ほかと比べるとだいぶお安いのではないだろうか。
これ以外に
D 寄贈用の発送の代金、封筒。
がある。この郵送料がばかにならない。300部をメール便¥160で出して¥48、000 封筒は浅草橋で1枚3円ぐらいのを買ってくるつもり。
<雨の木の下で>「雨の塔」をみていた(布村浩一)
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