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                心を癒す7つの習慣 4.明るい面を見る

 4.明るい面を見る

 1.暗い面を見てしまう癖に注意 
 人生には明るい面もあれば暗い面もあり、これは避けられないことである。しかしながら、同じ運命や状況であっても、ある人はそれを「明るい」と見るし、ある人は「暗い」と見ることはある。ということはつまり、物事には明るい面もあれば暗い面もあり、両者が共存しているということであって、さらにまた、明るいとか暗いというのは主観的なものだということでもある。
 ところで、心に傷があると(というより、傷のない人間などいないのだが)、それに関連する事柄に対しては、それを暗いものと(一般化して)見てしまう傾向がある。たとえば女性に傷つけられた経験をもっていると、その女性に対して否定的な見解をもつのではなく、「女性一般」に対して否定的な見解を抱き、暗いイメージをそこに見てしまうようになる。たったひとりの女性との否定的な経験を土台に、女性すべてが否定的な存在であると結論することは、あきらかに無理があり偏見といってもいいのだが、これが人間の心理なのである。たとえるなら、足の痛みをかばうために、一方の足を引きずって歩いていると、その足が治ってもひきずって歩く癖がついてしまうようなものである。

 2.潜在意識は観測された通りに運命を形成する 
 もしも生まれ育った家庭が否定的なもので、その結果、家庭というものに対して否定的な、つまりは暗い側面ばかりを見る傾向が根を下ろしてしまうと、いざ成人になって幸せな家庭を築いたとしても、さまざまな問題が生じてくるようになる。すでに述べたように、物事には明るい面もあれば暗い面もある。正確に言えば、私たちはどのような面にも、明るい面を見つけることもできるし、暗い面を見つけることもできるのだ。
 すると、どんなに恵まれた幸せな家庭であっても、そこに暗い面を見ることになる。人間というものは、物事を暗く見ると、実際に暗くなってしまうものである。潜在意識は、いわば運命の創造者なので、その通りの暗い運命が訪れることになってしまう。
 潜在意識は、願望したことを実現するとよくいわれるが、これは少し正確ではない。潜在意識は、それが望むことであれ、望まないことであれ、“観測された通りに”運命を形成するのだ。だから、「自分は失敗する」と思っていると、いくら成功を望んでも失敗してしまう。
 そこで大切なのは、物事の明るい面を観測すること、見ることである。これは以前から「ポジティブ・シンキング」などと呼ばれていることなのだが、私がここで訴えたいのは、もう少し違った角度からのものである。
 たとえば、世の中には人の欠点を見つけては陰で批判したり悪口をいう人がときおりいるが、このことによって、その人には実際に悪意をもった人との出会いが多くなってしまい、自らの運命を暗くしてしまう。このような人に対して、「人のよい面を見つけるようにしなさい」といっても、最初はそのように心がけるかもしれないが、長い間の癖というのは、そう簡単には修正できないので、やがてもとのように、人の悪い面ばかりを見るような人間へと逆戻りしてしまう。

 3.否定的想念は依存症と似ている
 最初は無理に足を引きづっていても、しだいに足を引きずることの方が楽になってしまったりする。同じように、「この世の中は悪い人間ばかりだ」とか、「自分は何をやってもダメなんだ」という思いこみが長い間続いてしまうと、今度はそう思った方が楽であり、安心してしまうようになる。それ以外の考え方をするのが苦痛に思われてしまうのだ。これは一種の「中毒」のようなもので、タバコは明らかに身体に悪いのだが、習慣になると、タバコをやめるのに苦痛を感じるようなものだ。同じように、心は本来、物事を明るく考え、自分の欠点よりは魅力の方を評価することに快感を覚えるはずなのだが、いつしか物事を否定的に、自分を卑下することに快感を覚えるようになってしまう。これはもちろん、無意識的なものである。タバコが身体に悪いように、否定的な暗い想念も身体に悪いのであるが、身体に悪いものほど、人を引きつけるものをもっているのかもしれない。
 タバコやアルコールの場合、それは「緊張から解放される」というのが、それに病みつきになってしまった人の大きな理由のようだ。同様に、悲観的思考にも、ある種「緊張からの解放」という、神経を麻痺させる作用があるように思われる。物事を最初から否定的に、暗く考えていれば、期待はずれの不運が訪れても、大きなショックを受けなくてすむ。もしも人生に大きな期待を抱いていて、それが裏切られたときのショックは大きいだろう。否定的な想念は、いわばそのための予防線のように作用する。
 このように、なかば中毒となった心の悪癖を治すには、タバコやアルコール、麻薬の中毒(依存症)を治すのと、プロセス的には似ているので、そのような心構えで忍耐強く挑む姿勢が大切になってくる。

 4.明るい想念は、心の傷となった不幸を再評価して新たな見解を与える
 麻薬などの依存症から立ち直った人は、やはりその禁断症状が相当苦しかったというような声を聴く。また、同じ仲間と一緒に協力したことが大きな効果につながったともいわれる。同じように、今まで暗い面ばかりを見ていた人が、明るい面を見ることを永続的な「習慣」とするには、「暗く見たい」という誘惑に、断固として立ち向かわなければならない。そのためには、無理をせずに、毎日、少しずつ、暗く見る習慣のなかに、明るく見る習慣を入れていくことである。これは忍耐力を要するが、決して難しいことではない。最初から、多少の苦しみは伴うものだと覚悟を決めてかかれば、乗り越えられるものである。また、いっぺんに乗り越えなくたっていい。人間は弱いものである。誘惑に負けたり勝ったりを繰り返しながら成長していく。だから、何度か挫折してもかまわない。そのたびに必ず挑戦し続けることさえ忘れなければ。人間にはそれができる。何度失敗しても立ち上がることが。その意味では、人間はやはり強い存在である。
 そのために、強力に役だってくれるのは、物事を明るく見る習慣のある人との交わりである。こういう人とつきあうと、しだいによい影響を受けて、自然に自分自身も物事を明るく見れるようになっていく。
 そして、そのような肯定的な思考の習慣が確立されると、どうなるだろうか?
 そのような明るい想念で、過去に受けた心の傷を思い返すとき、今までは暗いと思っていた出来事を“再評価”し、そのなかにも明るい要素があったことを見いだすようになる。場合によっては、それは人生の大きな発展のための貴重なステップであり、不運どころか大変な幸運であったという評価を与えることも稀ではない。
 過去に受けた心の傷は、このようにして癒されていく。

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