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rain tree vol.2

はてもなく

木村 信子


クローンわたしはくろうんくろうん

はてもなくわたしを

かこんでくるわたしの音

ゆびさきから雫がこぼれる

ひろがる水

わたしがかさなりあって映る

はてもなく水が鳴る

クローンわたしはくろうんくろうん

つみつくりつみつくり

雫がこぼれるわたしがこぼれる

しゅうねくこぼれつづける

つみつくりつみつくり

つくづくつみつむわたしの狂い

つみつくりつみつくり

狂っても狂っても行きつかないわたしの涯

を積んだ化し舟

のかたむき

わたしのかたむき

つみつくりつみつくり

かこんでくるわたしの音

クローンわたしはくろうんくろうん

はてもないわたしへ

はてもないわたしへ

わたしのかたむき

クローンわたしはくろうんくろうん

かきわけてもかきわけてもわたしの外へ

出られない

はてもないわたしへ

わたしをなげつける

大声で叫ぶ

クローンわたしはくろうんくろうん

ふえつづけるわたしの涯へ

かきわけかきわけかきわけながら

ずれていくわたし

ずれていくわたし

ずれながら

はてもないわたしへ

クローンわたしはくろうんくろうん

クローンわたしはくろうんくろうん




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「雨垂れ石を穿つ」(宮野一世)「緊縛のよろこび解縛のくるしみ」(関富士子ほか)へ
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rain tree vol.2

木村 信子




秋になって、砂地に

白い殻が落ちている

ひろう

せなかをまるめてひろう

殻のようにまるくなっていく

ひろう

とうとつに人を憎みだす

だんだんしゅうねくなる

ひろう

殻のなかに痛みがあるとおもう

とかげが走る

もう一匹

ひろう

殻のなかに耐えきれないものがあるとおもう

せなかが痛い

その痛みもひっくるめて

どこまでもつづいている砂地の

ひろいきれない殻の

とりかえしのつかないことを

ひろう


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「雨垂れ石を穿つ」(宮野一世)「緊縛のよろこび解縛のくるしみ」(関富士子ほか)へ
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rain tree vol.2

さむい風が吹いてくる

木村 信子




さいの河原のおまつりへ

さむい風が吹いてくる

おさいが泣き泣き通るから

あとをおいかけている

ないそでふりふりそでにされ

そでふるふりそでまぼろしの

はながさいているとおもえばいい

だんごをたんとおあがりよ

はながきれいとおもえばいい

まぼろしばかりがげいじゅつよ

だんごをたんとおあがりよ

だんごばかりがしんじつよ

さいの河原のおまつりは

だんごばかりがめいぶつよ

おさいが泣き泣き行くから

さいならさいなら

またいつか

さいごのだんごはおみやげに



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<詩を読む 3>「納屋に囚人を飼う女」(木村信子「日曜日」を読む)(関富士子)へ
<詩>「秋」(木村信子)へ「雨垂れ石を穿つ」(宮野一世)「緊縛のよろこび解縛のくるしみ」(関富士子ほか)へ
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