ふたりはひとつ(折り句詩共同制作の試み)
樋口俊実 & 関富士子
天 気 (1998.1.16)
は郵便男の通過ののち白眉をくもらせ
菜園に短篇ほどのわずかな文字を降らせた (1.21)
似たような絵を赤道のあちら側で見た記憶がある
あれは死者の日それとも節分 (1.26)
らしゃ敷きの処刑台のひとに群集が投擲する果実
史書にはないがわたしたちもその欠片を食べた (2.4)
のどの汗を拭きながら束の間 郵便男は足を休める
田畑と荒れ野と渓谷とあの夕暮れとこの真昼の途中で (2.14)
とんがり杉の先から小さな渦巻が
へびいちごの森へ落ちるのを見るあいだだけ(3.1)
もしもはあり得ないのだが もしも今ここに
有る灰と散逸の午後が夏至の日の短い夢であれば (3.18)
ルーペを握ったファーブルが今 昏睡した
ゾウムシをハチから奪うところだ(3.27)
差しかえと落丁だらけの昆虫図鑑をたよりに
夜の来ない岸辺を探すわたしたちの掠れた声がする(5.9)
名前をどこに失くしたのかしら
ラベルは水に白いまま貼りましょう(5.23)
打ち据えられた草たちの影を川面が正確に映し
けしの群落を炎が包むとやがて良い煙が高く遠くひろがる(6.3)
がらんどうの天井を郵便男はゆく
人々がことづてるのは連綿たる雲の呼び名(6.10)
生きものの匂いのするほうへ風をたどり
だれかがまだ文字に空の慰藉を読んでいる場所へと(6.16)
折り句の楽しみ7
折り句の答え
4「ききはうすをたずねて」
(KIKIHOUSE)は、北村太郎の詩に隠された暗号を発見した桐田真輔さんのHP。北村太郎の折り句が解読されています。
5「甘露汲み朔月の野で待っていて不二」
6「あなたのすきなたべものなあに」「おやすみなさい未来の大人も昔の子どももいまのあなたも」
以上の4つはそれぞれ宛先のVZXさんの文字がヒントになっています。
7「はなにあらしのたとへもあるぞさよならだけが人生だ」