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vol.6 「gui詩gui詩」 Poetry Reading



森原智子



森原 智子

guiの重鎮森原智子。朗読なんて一度もやったことないのにとんでもないと抵抗するのを、わたしに処女をちょうだいと口説き落とした。前回のBooby Trapの会に参加して雰囲気がよかったせいか、とても協力的で感謝。二次会ではいつもの毒舌が聞かれず、奥成さんはもの足りなかった様子。

 さて、詩を読もう。朝ぼらけのクネクネ通りをたどっていくと、飲茶店「クレオール」あたりに棲む猫に会えるかもしれない。



(森原智子)もともとこの地声ですし、自分の詩はもちろんのこと、人様の詩をきちんと聴いたこともただの一度もなくて、朗読といってもちゃんとできるかどうかわかりませんけれども、やってみます。


朗読 森原智子  
朗読はrealPlayer5で聴くことができます。download




飲茶店「クレオール」考   <悼む・寺門仁氏>





太陽のまだらな 夜明けの点滴が

甘く 残されている

小さな富士山はこの街にもあるが

つねに美貌であるって辛いものがあるはず

おおひとつらねの

歴史の服を ぱんぱんとはらってたたむとき

朝帰りの光線は ことさら すてき

わたしはそれを低いところから見ている

さて

場末ビルに恒例のゴミ缶二つ 屹立だ



それが店の合図で 海へ向いている

生き物はどれも必死に陰れたがったけれど

猫のみは咀嚼のタップを踏みつつ 椅子で

危い現われかたをするこの世へ

ながながし夜尾夜尾 などてかもねむか



わたしのいのちが猫の中核のハンモックで

粗粗しい方舟のごとく揉まれると
           おうとつ
中国袖の少年が凹凸のテーブルへ

灰色粒子コーヒーを運んでくる
    ペット
(夜通し喇叭の先端に

青い蝉がとりついていると細く訴えて)



店で中断している クネクネ通りよ

置き忘れのボロ洋車のかげで

大柳の葉はふり乱れ そこから

ネグリジェの少女が前をひらいたような
      き め
新鮮な不幸の肌理がかすんで過ぎた



(シンガポール迄 来ているタイフーン)

店員たちが瞬間かたまった

ラジオへの愛

電源の ごく薄い枯れかた

わたしはそれを低いところから感じている

    (*あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜を独りかも寝む)

       (gui no.52より 1997年)



森原 智子(もりはら ともこ)

最近の詩集

「露まんだら」2884円思潮社刊
モダニズムの手法を自家薬籠中のものとした練達の詩人が、女性特有の繊細さと残忍さを抒情に隠し織った眼も覚めるような華麗な詩集。装丁・勝井三雄。

「十一断片」2060円思潮社刊
強かな不在証明 詩人は必要以上の言葉を費やさない あとは読者が11の断片を繋げ おのが痛みとしてどう感じるか 試される仕掛けになっている(帯文より)

「スロー・ダンス」2678円思潮社刊
"rain tree" vol.5<詩を読む6>森原智子「花丸」を読む に紹介があります。


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