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南川優子 vol.8
 gui20周年フェスタ Poetry Reading 



南川 優子



guiに入ったきっかけは、飯田隆昭さんの紹介だったんですけれども、その出会いっていうのはお酒で、彼はすごく酒飲みなんですけれどもわたしも酒飲みなんです。バーで知り合ってなぜか英文学の話をしていて、わたし詩書いてるんですけどって言ったら、なんかあんまし信用しなかったんですけども、あとからこの女ほんとに詩書いてんのかなって思ったって言ってたんで、たぶん最初信用しなかったと思うんですけども、あとで詩を送ったら、じゃあぼくの入ってるところがあるからってぜひ来なさいって言われたということで。今日は詩を二篇。

  

独り歩き

肩から生えることになれてしまった手が
スイカのたねのように
ぷっと路上に吐き出されたのだ。
ああ、またいつものやつだ、
こんどのはまた、ずいぶんどっしりした枝ぶりだ、
アスファルトはまぶたをとじる。
手は歯を食いしばって起きあがり
バス停の方向にかけだす
ああ、またいつものやつだ、
とっぴょうしもない風に連れ去られたのだ、
アスファルトは眠りに帰る。
手はわたしをふりかえらない、
手はわたしをなつかしがらない。
カルシウムは絶対的権力だった。
すべすべの声で
育て育てと命じていた。
手はわたしをふりかえらない
手はわたしをなつかしがらない。
いまや手は
海のむこうがわ
猫ののどもとをなでて
ぬくぬくと愛を得ている。





キモチ

  
歩いていると
とりあえずよく生きていることになります
走り出すと
はるかによく生きていることになります
立ち止まると
なまけていることにされそうです
  
詩は
歩いています
コトバは
走り出します
キモチは
ときおり立ち止まります
キモチはキモチよくなりたいのに
コトバがゆるしてくれません
キモチは愚鈍です つまずきます あざむかれます
コトバが手を引いてやらないと
歩くこともできません
  
コトバは
都合が悪くなると逃げ隠れします
今朝も 食卓に句読点を残したまま
キモチをおいて どこかへ出かけてしまいました
キモチはベッドのなかで
もう少し寝ることにします
キモチは
肺だけはじょうぶです
大きく息を吸います
まぶたをとじて
刈り取られた草のにおいを 体に充満させます
そのまま透明な風船となって 上昇します
  
高い タカイ 頂上 テッペン
いま キモチは タカイです
キモチが ノボッテいます
キモチが タカイのは
キモチが 怒っているからでしょうか
キモチがノボッテいるのは
キモチが 浮かれているからでしょうか
晴れ晴れと喜ばしく 
晴れ晴れと腹立たしく
眼下で噴水が静止したかと思うと
空が黒いのが見えました
  
救助されたキモチは
コトバに手を握られ 眠っています
キモチにどんなキモチがわいたのか
コトバにはわかりません
コトバは今日の業務日誌に
「ツライキモチ」と書いておきました
タイムカードを押して
早く帰りたかったからです


南川 優子(みなみかわ ゆうこ) guiに参加してもう4年の月日が経ちました。でもまだguiの5分の1の年数ですね。初の詩集『ポフウェル氏の生活』を今月末刊行予定です。
 作品が、rain ree vol.6 gui詩gui詩にあります。
南川さんのホームページができました。 そふと 新作詩。第一詩集「ポフウェル氏の生活」の紹介もあります。

南川優子向かって右から、国峰照子・徳弘康代・南川優子

山中真知子「野詩趣」「かざりばね」
飯田隆昭「わがふるさとは」
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