
vol.15
<詩>GEORGEの胸ポケット(関富士子)へ
「かない ゆうじ」執筆者紹介
山を降りる
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ときどき膝がガクガクと |
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揺れることがある |
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揺れるその膝を |
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ギュッと抱きしめたくなることがある |
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けっして病気などではないのだが |
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口元がどういうわけか |
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うまく開かず |
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うまく閉じない |
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そんなときぼくは |
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むかし登った山の頂上から |
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ゆっくり |
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ゆっくり |
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下山したいと思う |
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大切な人よ |
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どうかぼくが死ぬときには |
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この膝を |
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おもいっきり抱いていてほしい |
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きつく きつく |
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抱いていてほしい |
<詩>ありがとう(金井雄二)へ
<詩>GEORGEの胸ポケット(関富士子)へ
ありがとう
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ありがとう |
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この言葉は |
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いつ聞いても |
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いい言葉だ |
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それが泉の底から |
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湧きでたものなら |
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なおいい |
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人が本当に |
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ありがたく思った時 |
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ありがとう |
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とその一言があるということは |
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単純にうれしい |
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でも |
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声をだして言えるならまだいい |
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なんとも気恥ずかしくて |
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そんなもん蹴っ飛ばしちまえ! |
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と思ったりして |
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心の中だけでつぶやいていたりする |
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でもきっと言うよ |
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妻や子に |
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そして |
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やさしい人に |
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ありがとう! |
<詩>通学路(金井雄二)へ
<詩>山を降りる(金井雄二)へ
通学路
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わたしの数メートル先を歩いている |
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ランドセルを背負っている君 |
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君はどこかで会ったことがあるような |
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なんとなく後姿が |
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わたしの息子にそっくりで |
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しかし君は髪の毛が意外に短くて |
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息子はもっと長髪で |
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色あせた茶色のジャンパーなんて着ておらず |
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ましてやコーデュロイのズボンなんて |
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はいちゃいない |
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でもその後姿が |
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息子にそっくりで |
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いやむしろわたし自身にそっくりで |
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人違いに決ってはいるのだけれど |
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なんだろう |
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この胸さわぎ |
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走ってわたしは君に声をかけたくなり |
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走りだすのだが |
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いつまでたっても追いつけない |
<詩>北国は眠っている(金井雄二)へ
<詩>ありがとう(金井雄二)へ
北国は眠っている
二〇〇〇年を迎えて
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こちらでは今雨が降っている |
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きっと北国では雪になるだろう |
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雨雲をおいかけるように |
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電車を乗り継いで |
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北へ向かおう |
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もうすでに |
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寝台なんてとれないし |
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何時間も |
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夜の闇を見続けなければならないだろうけど |
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家では妻が |
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ぼくがどこへ出かけたか |
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きっと探しまわるだろう |
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息子は学校から帰ってきて |
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今日ぼくが家にいないことを |
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不思議に思うだろう |
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きっと北国は眠っている |
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ぼくはその上を |
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静かにはいまわる |
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そしてぼくはやっと取り戻すだろう |
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こちら側では見つけられなかった |
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むかし無くしてしまったあの何かを |
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ぼくに今見えるものは |
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空から降ってくる冷たい雨 |
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きっと北国では |
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それは針になるだろう |
<詩>確認 1−3(金井雄二)へ
<詩>通学路(金井雄二)へ
<詩>冬の庭師/GEORGEの胸ポケット(関富士子)へ
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