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えんぴつ
鉛筆の芯の香りが 爪の先に残るのが嫌いだった 子供のころ あつめた小銭をにぎりしめ いっしんに シャープ・ペンシルを買いに走った 手には 今でもそのノック式0.5mmのシャープが 流転の人生のように転がっている
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フォルクス・ワーゲン
丘の上にフォルクス・ワーゲン 素手でやさしくつつみこみたくなる 乳房のような丘の あるかないかのその頂上で 風につながれながら 一台だけとまっている 光る脚線美のボディをもった とびっきりの美人 愛しきビートル ドアがあくと まだ髪の毛のしんなりとした男の子が 手で太陽の光をさえぎるように あらわれてくる 男の子は ゆっくりとフォルクス・ワーゲンに話しかけ そしてなだらかな丘を下って行く 何度も何度もふりかえりながら 空冷のリヤエンジン トランスミッションは4速フロア スタイリングやメカニズムは 基本的には何も変わりはしない 風はいつもふっと途切れ 丘の上のフォルクス・ワーゲンは 音もなく動きだした 男の子の影を そっと追いかけるように
独合点'93.3「えんぴつ」「フォルクスワーゲン」金井雄二縦組み横スクロール表示へ
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