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vol.16
「みついたかこ」執筆者紹介

三井喬子の詩
              mail三井喬子

 

四月の茄子


旬のものではないのに勢いが良くて
茄子はつやつや。
そしてピカピカ
歌うようにきゅるきゅる。
水道水の流れを二筋に分けて
つやつやピカピカきゅるきゅる、きゅる。
撫ぜるように
絞るように
揉むように
にっにっにぃ

へたの棘が つきっ!
人差し指に逆らって ああ逆らって
必死の一撃。
わたしは七つの女の子で
七つなりに意地悪で
嘘つきで
寡黙であることの理も利も心得ていて、
黙って 傷を舐めた。
花冷えの
ひんやりとしたシンクに茄子が四本

一本迷子になっちゃった。
五本パックの茄子のうち
お前が食べたのはどの子かい
一際大きいあの子かい
器量よしの丸いのかい
小さいのかい細いのかい
       出来そこないの筋っ子かい。
誤魔化しようもないのだが シンクには
茄子は始めから四本だけ(よ)。
ついつい言ってしまった言い訳が
言い訳を呼んで山になり
海にもなって わたしは七つ。
それ で
それで それ で

茄子は
いつかの夕食の汚れたお皿に残してきました、
お母さん
人差し指の棘が痛いので お母さん
お腹はまだまだ膨らまず
お母さん
わたしはまだまだ七つのままで
茄子は四本あるだけで
足の下から冷えてきて
お母さん
今夜は お腹の底まで寒いです。


紙版no.16掲載
tubu<詩>歴史の風土(三井喬子)tubu<詩>洪水(三井喬子)<詩>モクセイの木(関富士子)
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