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(縦組表示)ふたりはひとつ2(折り句詩共同制作の試み)「閑月」関富士子×樋口俊実"rain tree" vol.12

閑月

                    99・2・1せ
  
誰かがみそ蔵で資本論を読んでいる
よく通るうら声で漢字を間違えながら     2・11ひ 
木戸の留め金がきしんで
風ではないものの気配がある         2・28せ
おだやかな春の日の浅い夢のなかで
繰り返す悪寒に幾度も揺りおこされて     3・15ひ
未完の主人公はさすらう
金壷まなこに砂が吹くスクリーンの破れめを  3・28せ
今の今迄そこにあった眩い宝石の山が
次の瞬間はもう鯨の腹へと消え失せ      4・22ひ
鯨の鬚は地ねずみにかじられ
地ねずみの齧歯は瞼のうえに散乱する     5・9せ
左の手に塩の結晶を白く握りしめたまま
絹と貨幣で贖える幸福のことを考えると    6・22ひ
指が六本あれば札束がつかめる
二つ目よりも輝く三つ目の瞳         7・4せ
どの古い世紀の地図にも略奪の跡は残り
雲雀たちの声さえ領土を言い募る       8・23ひ
ひからびた皮袋を捨てよ
目覚めのかわきを贖うことはできない     9・17せ
空の岸から野原をわたる声に耳をふさいで
言葉だけで夢の続きにあらがうために     11・16ひ
戸障子のあかるみの向こうに
待っている忙月の影を呼ぶ          11・19せ
 


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