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vol.20

中上 哲夫 の挨拶詩 4

挨拶詩4 「そんな一日」金井雄二に「体重計」阿蘇豊に「硫黄が匂う日は」佐藤文夫に
挨拶詩3「日永」「順番」関富士子に
挨拶詩2「Spring has come!」 岩木誠一郎に 「阿蘇」阿蘇豊に 「大雪がふった日の夜の詩」油本達夫に
挨拶詩1「父と母のいた正月」「寒中見舞い」「書中お見舞い申し上げます」

 

そんな一日

   ――金井雄二に

  
桜の花が風に舞う姿は
ほんとうに楽しそうだね
気がつくと
夕暮れだった



                     2001・4・2


体重計

           ――阿蘇豊に

  
   
腹の肉をつまむと
百発百中
体重がわかるよ
そして
けさは
腹の肉をつまみつつ
顔をしかめている始末さ



                   2001.5.26


熊太郎物語

               ――この物語の主人公に

  
小学校五年生のときに
少年は大好きな女の子に
そっと手紙をさし出した
すると
差出人の名前を見た
女の子はぷっと吹き出したのだ
そのとき
少年は悟った
自分の名前が
ラブレターに不向きなことを
そして
誓ったのだ
生涯決してラブレターを書かないことを



                     2001・6.15


硫黄が匂う日は

               ――佐藤文夫に

  
港町の坂道で硫黄が匂う日は
三人で行った三宅島を思い出すんだ
あの日
雄山の裾野を歩くと
鳥たちの声がシャワーのようにふってきて
ぼくらはしとどに濡れたっけ
だけど地面に空の薬莢が無数に落ちていたのが
異様だったね
鳥たちの巣はみんな灰の下に埋もれてしまったと思うけれども
いつかポンペイで逃げ遅れた人が倒れたままの姿で掘り出されたね
島唯一の温泉の湯につかると
タオルがチョコレート色に染まったのを覚えてる?
あなたとわたしはすっかり野蛮人扱いされてしまったけど
ほんとうのことをいうと
海亀の肉は甘かったね
諏訪優はというと
苦虫を噛みつぶしたような顔で
もっぱら飛び魚のくさやを齧っていたっけ
もう十年もたつんだね
今夜
本棚の埃のなかから諏訪優の『ギンズバーグ詩集』をひっぱり出すと
かすかに硫黄の匂いがしたよ



                       2001.6.13

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<詩>「挨拶詩」4縦組み横スクロール表示へ縦組み縦スクロール表示
tubu<詩>挨拶詩3「日永」「順番」(中上哲夫)
<詩>机と椅子のある庭(関富士子)
<詩>地上の人に告げて(関富士子)
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