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 2020年6月の独想録


 6月25日 私の考え方は今の世間からは受け入れられない
 まずはご報告とお知らせから。
 今月6月20日/21日、イデア ライフ アカデミー瞑想教室「戒律と瞑想」の授業を行いました。地味なテーマですが、霊性向上をめざすためには、戒律を自分で定めて守ることはきわめて重要です。今回、私は正直に言いました。「イデア ライフ アカデミーで学ぶと、不運と苦しみが訪れる!」と。
 巷によくある、自己啓発だとかスピリチュアル系のセミナーなどでは、「幸運が引き寄せられる」とか「仕事がうまくいったりお金が手に入る」といった「おかげ話」を売り物にして人を集めていますが、イデア ライフ アカデミーでは、人集めも金儲けも目的にしていませんので、本当の霊的真理を伝えています。過去の聖人たちの伝記を調べればわかるように、彼らは霊的な道に進むことで、さまざまな不運や災難が訪れるようになっています。しかし、それでいいのです。それこそが、真の幸福に至るための、もっとも最短の近道を歩んでいることになるからです。そのへんの理由を知りたい方は、ぜひダイジェスト版をご覧下さい。安易な手段で幸運を手に入れようとする人々の多い昨今の風潮とは真逆なことを言っていますので、これでますますイデア ライフ アカデミーに参加する人が少なくなってしまうと思いますが(涙)、私は嘘が言えない性格なので、仕方がないとあきらめています(笑)。
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 それでは本題に入ります。
 出版社というものは、基本的にビジネスであり商売ではありますが、本というものは国民の教養を高め、品格を高め、生活を豊かにするものですから、出版社は国の文化の担い手という使命もあるはずです。
 しかし、空前の出版不況ということもあってか、「とにかく売れればいい」という感じで、軽薄でくだらない本ばかりが溢れかえっているように感じます。しかしそういう本が売れるのですから仕方ありません。軽薄な本ばかり読んでいたら、国民は軽薄になります。あるいは軽薄な本が売れるということは、すでに軽薄になっているとも言えますが、いずれにしろ、このままでは、わが国の文化水準は低下してしまうでしょう。

 とはいえ、私も偉そうに言える立場ではないのです。私の体験をお話してみたいと思います。30歳くらいのとき、『神秘の前世占い』という本を出しました。実はこの本は、もともと前世の本ではありませんでした。私が書いた原稿は、『転生の占星術』というタイトルで、内容は、占星術における7つの天体は、人間が地上で身につける徳(調和・忍耐・意思・統合・分析・共感・情熱)を示しており、人間は転生しながらこの徳を養っていく存在であり、その徳を養うためのヒントとしての占星術の活用法でした。

 ところが、当時は、いわゆる『前世ブーム』の真っ最中で、編集者が「これは前世の本にしましょう」と提案してきました。私はその提案に不満でした。前世などに興味はないからです。
 出版の世界は、よほどの大作家でない限り、編集者の方が立場が上です。基本的に著者は編集者の指示に従わなければなりません。もちろん、どうしても著者がゆずれない場合は互いに相談したり、それが決裂したら最悪、出版されない、ということになるのですが、私はもちろん大作家ではないし、正直、出版してお金を稼ぎたいという欲もあったので、編集者の提案をしぶしぶ受け入れるしかありませんでした。
 確かに、「転生」に関する説明のところで、前世について少し書いてはいたのですが、「あなたの前世はこんな感じですよ」といったことを占う本ではなかったのです。しかし、結局、そのような本に書き直さざるを得なくなり、題名も出版社が『神秘の前世占い』と勝手に決めてしまいました。文体も書き直されたりして、これは私のひとりよがりかもしれませんが、最初の原稿がもっていた、格調高い内容が、陳腐で軽薄な内容になってしまいました。なので、この本は私にとっては非常に不本意で、残念な作品なのです。何回か増刷して、ある程度売れたことは売れたのですが、編集者が期待していたほどではありませんでした。

 その後も本を出版してきましたが、『神秘の前世占い』ほどではないにしても、編集者の指示に対して、「これくらいはまあ、いいか」といった感じで、妥協できるところは妥協してきました。
 しかし、しだいにこのように妥協するのが、イヤになってきました。もちろん、編集者と相談して、その結果「確かに編集者の提案の方がいい」と思えば喜んで書き直しをしますが、すぐれた編集者ばかりとは限りません。あきらかに悪い内容に書き直させられてしまうこともあります。とにかく世の中の流れを見て、内容をすばらしくするよりも「いかにしたら売れるか」ということしか頭にない編集者が大半です。

 もちろん、編集者の立場もわかります。編集者は売れる本をどれだけ企画して出したかによって社内の評価が決まります。「どれほどすばらしい本を出したか」ではなく「どれほど売れる本を出したか」で、給料やボーナスの額、出世するかしないかが決まってしまうのです。だから、編集者を責めるつもりはありません。
 ただ、こんなことをしていたら、確実に日本人の知的レベル、日本の文化レベルは劣化してしまうでしょう。

 昨今の、いわゆる「売れる本」、とりわけスピリチュアル系の「売れる本」というのは、何か楽をして運がよくなるとか、あるいは不思議な能力や現象を扱ったようなものばかりです。
 そうした本は、私が書きたい本とはおよそ正反対のものです。つまり、私は今の時代には合わない、求められていない著者だということを悟りました。しかも、売るために内容を書き直すなどということは、もう嫌悪感を覚えるほどイヤになりました。

 このような私の姿勢は、私が運営している哲学&瞑想教室「イデア ライフ アカデミー」でも同じです。もともと屋根裏部屋の小さな部屋を使った教室なので、14人しか入れない少人数の塾のようなものですから、最初からお金を儲けようなどと思ってもいないし、だからこそ、人を集めるために、世の中で人気があるようなことを教えるといった、不本意なことをせずにすんでいるのですが、もし「苦労せず誰でもラクに簡単に幸運が引き寄せられる、幸せになれる!」などと宣伝すれば、そこそこ人は集まるでしょうし、受講費を高額にすれば、金儲けもできるかもしれません。
 しかし、私はもう、心にもない妥協をするのに疲れてしまいました。だから、自分が真実と信じることしか話したり書いたりしないことにしました。そうした姿勢は、この世的には、自らの首を絞めるようなものなのですが、性格的にできないのですから仕方ありません。

 こうした理由から、「イデア ライフ アカデミーで学べば不運や苦しみが訪れる」と言ったのです。そんなことを言わなければ参加者も増えてくるかと思いますが、「苦労もせずに幸せになれる」などということはありません。そんなことがあるなら、とっくに釈迦もキリストも、その他多くの聖人も発見していたでしょうし、あんなに苦労なんかしていなかったはずです。

 誰もが、いつかは受け入れなければならない苦しみというものを抱えているのです。それを抱え続けていると、苦しみがもっと重くなってしまう傾向があるのです。だから、受けなければならない不運や苦しみなら、早く経験した方が、ずっと軽くてすむのです。しかもその経験によって品性(霊性)を高めることができます。「イデア ライフ アカデミーで学ぶと不運や苦しみが訪れる」と言ったのは、そういう意味なのです。イデア ライフ アカデミーでは、魂の浄化作用を促進させることをめざしているからです。

 それでも、たいていの人は怖れて来なくなるだろうなと、ということは覚悟しています。
 「苦労なく幸せになれる」などと、魔法のようなものを求めて、セミナーなどをあちこちまわり、その種の本を買いあさっても、結局、たいそうな金額を巻き上げられて終わりです。そのうえ、本来なら早く経験すれば軽くてすんだ苦しみを、みすみす重くしてしまうのです。霊性向上にも役立ちません。
 いずれにしろ、たとえイデア ライフ アカデミーに人が来なくなったとしても、私は誰もいない教室で、正直なことを述べる授業をしていくでしょう。
 なぜなら、『神秘の前世占い』のときのような後悔は二度としたくないからです。
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