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　　　２０１０句帳

年明けて微動もせざる富士のあり

元日の新聞に飽き庭に出づ

三が日だんだん減ってく気欝かな

真っ直ぐに菜の花の道駅舎まで

春景を怒気はらみ行く貨物かな

寒風や走者それぞれ虚ろにて

影ひとつ川鳥にあり冬日落つ

恋心といふには淡く寒茜

桜吹き入れ二両電車の動き出す

菜花摘む父娘菜花に溺れおり

ホームラン菜の花が皆揺れている

自販機のコーヒーボタン初夏の風

五月祭林檎蜜菓子口下手に

さえずりはお地蔵さまのおわす辺

　　　２００９句帳

初旅の坂の上には雲ありや

薫風や定理公式散乱す

鬼平に人恋わしめて遠花火

秋日やや褪せてタクシー溜まりけり

秋の日の都市一角に没しけり

哲学も宗教もなく秋深し

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