ことばの遊園地〜詩、MIDI、言葉遊び
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    ☆☆☆ 2009・2010年度  2008年度  2007年度  2006年度  2005年度  2004年度

   十二月句帳

単線の小さき町の師走かな

中流といふは激流干蒲団

処方薬得て冬日差す路地ごとに

パルテノンの丘もかくや寒茜

氷上に句点や勁
(つよ)く舞い終えり

一日を遠くへ遣りて柚子湯かな

   十一月句帳

些事追いし間にネットでは雪便り

立冬やさて買うほどのものもなき

無口なる子の神無月大人騒がし

木枯しのビルかすめ落つ御濠端
(おほりばた)

小春日や車クルマのドッグ・ショー

電池2個かろうじてあり冬構え

廃工場小春の日差し惜しみなく

四、五人の竿先にある小春かな

来てみれば木枯らしもなき丘の上

枯れ野原吹き渡れアジアの風よ

   十月句帳

連綿と東アジアのすすきかな

山稜の尽きて湖水の寥
(りょう)と澄む

声ばかり初灯油売り過ぎにけり

秋の雨蛍光管を替えし昼

バス停で柿の色してバスを待つ

すじ雲の下は爽けし些事
(さじ)に充(み)

秋冷に今日一日の査証
(ビザ)を得る

そぞろ寒眼鏡を替えて株価読む

   九月句帳

獅子の檻二百十日の閑散と

梨の実を並べて朝の柔らかき

投票日蜻蛉無所属新なるよ

名月や時々刻々と町の影

歩道橋九月の嘘のやや重く

新涼の夜の筆圧や遠汽笛

喚く子に昔ながらの月の影

コスモスの視界に淡き自意識の

秋の日は子を鮮やかに強くして

   八月句帳

九十のおばぁは聴きたいジャズピアノ

生ビール母音子音と飲み干しぬ

三人五人日陰に童心展開す

観音に犬繋がれて施餓鬼行

水色のクレヨンがない終戦日

「秋雨」を読む子読めぬ子皆降られ

終電を待つしばらくは虫の声

   七月句帳

仲の悪い奴とも遊ぶ夏休み

軍都燃ゆ燃えたのは人雲立ちぬ

胸像と簾
(すだれ)の家のお骨かな

車列絶え世界をピン止め蝉の声

落第生前も後ろも天の川

炎昼に電話ボックス只立ってゐる

庭花火ブックカバーは「あいして」と

ひまわりに一瞥
(いちべつ)与へ急ぎけり

ベビーカー地雷はなきや夏巡る

新線の試運転車に夏日射す

   六月句帳

この世へのなごりのかんざし天の川
 ( 惜別 ある婦人に )

梅雨間近手押し車の婆を抜く

夏至過ぎて意固地ひとつの綿毛かな

悪口を言ってみる夏気化速し

隠したいもの干天のダム底に

豆飯やフリーダイヤルメモ忘る

夏空と大河を分けて新車輌

四囲めぐるビル列のプラネタリウム

   五月句帳

菜の花の一群れごとに光の座

川べりのサイダー壜
(びん)を住まいとす

夏日まだ弱き世界へ烏
(からす)立つ

葉桜の駅を特急通過せり

棟梁の家に今年も吹き流し

手も足も出ず新緑の夢だるま

五月青し竿先に触るるソプラノ

夏めいてカヌー大河を斜めかな

母の日のパラグライダー空の菓子

噴水止まり埠頭ぐぁらんと広し

   四月句帳

雲雀野
(ひばりの)に着信の音の軽きかな

制服の光の層のまだ硬き

遠目には桜が主役教護院

紋白は石と雲との間の子

花惜しみ人黙す川辺りの町

ティンパニの螺旋
(ねじ)締め直す春夜かな

入学を終えて纏
(まと)わる母子あり

晩春を不知火型で筑波澄む

   三月句帳

湿潤の気の春光を貫きぬ

卒園やひらりひらりと丘を越え

  ↑(卒園日ひらりひらりと丘を越え)改

春闇に顔を埋めてもう出たくない

彼岸宵何か可笑しき地球の隅で

風の春ごっこ遊びのむつかしき

永き日に飛行機雲のほどけゆく

新開地地蔵は寂し花の頃

雛のなき窓といふ窓開け放つ

   ニ月句帳

嬰児
(やや)笑ふピアニッシモの春は来ぬ

誇れ誇れ十五の春の失意眩しき

往きよりはやや暖かき跨線橋

塩つかみ投げ入れし鍋浅き春

建国日外来病棟足早に

(ほの)かに乾くナースステーション深海艇

鉄橋の固有の空の春浅し

神々の駆け下り来る
(かけおりきたる)春一番

春立ちぬ地もあり銀河のはずれかな

雪が降るチャイム静かに太くして

   一月句帳

富士静か雪嶺をたたずみ抑ふ

元日の目鼻決まらぬ夕餉
(ゆうげ)かな

一年の計の始めの途中下車

巨悪なる言葉無縁の初仕事

水郷の冬旅客機が前を行く

神域冴え郵便ポストの丸頭

水縁りの古き家並みに寒気団

息白しバス停脇の無言かな

成人日追い抜く猫のロータリー

大寒を斜めに過ぎる交差点

寒雲覆ふ鰐一匹臥せる街

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