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vol.5

(関富士子の詩)


いいたい

                  関富士子



いうに いえない

いえば いわず

いわれなく いわれ

いわなくて いいの

いわなきゃ いやなの

いわず もがな

いわずと しれる



あいたい

あえても あえない

あえば あうほど

あいしても あとずさり

おあいそが あきれ

あえれば あわない

あわずに あう



したい

しんでも しない

しにぎわ しおくれ

しどころ しにそこね

しにばな さかない

にしに わかれる

しに ものぐるい



*この詩には本歌があります。<雨の木の下で5>
「言葉遊びの作者」をごらんください。





"rain tree" vol.5


 gui詩gui詩 Poetry Reading in "howl" the bar at Aoyama 1998.6.27 
「おばのこと」「さくらくらくら」 朗読 関富士子  朗読はrealPlayer5で聴くことができます。download




おばのこと




おばのこと

おおおばのおこと

こばこのおと

おとこのこばと

とののおことば



ずがいこつ

こいつがこつずい

いがいっこずつ

いこつがいずこ



こもりうた

うりもたこも

こうもりもたたり

もりもたもこうりもうり

もうこりた



あいしてる

あいてるし

しいてあるし

あるいてしてるし

いしあてる



なきわらい

わなはきらい

わななきいらいら

きはわらわない

きらわない



しおひがり

おしりがひがし

ひがおりしおり

しおがひりひり



なれのはて

なのはなののはれて

ははのてはなれて

はれてなのれて







さくらくらくら

                 関 富士子



はなさけばむざんな胸はざらざら

はるのかぶれ芽はふくれはれるはりさける

こんやはきんのみかづき木のえだにひっかけて

ままよまつりの宵もさまようままきまま

めくらましのみちのむこうめまいの森へ



からすのてかがみ

ねずみのこづつみ

かみだのみのてがみ

おおかみのたてがみ

あかずきんのせんたくばさみ



ただはだかでだいて肌はただれて

ゆうやみのかゆいゆめの繭ゆれてゆがんで

かむかきくどくかじる瘡ぶたかきむしる

誰がだましたかじだんだこだまする

ここのつのくるしみくりかえしかじかむ岸べ



むじなのおさななじみ

すれっからしのわすれがたみ

さかうらみのさけのみ

はやのみこみのひめぎみ

あいびきのさんぼんすぎ



ややくやむか宿やにやすむかあめもやむか

なにもしらないのそらなみだにしぞらの虹ににじむ

つめたいはんげつの爪をつみつまびくつみつくり

かぜあらしあめまじりいなびかり花はちりぢり



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vol.5

先生が

                 関 富士子



先生が亡くなったと聞かされて

半信半疑で出かけた

先生は顔に薄い布をかけて布団に寝ておられた

線香やろうそくが並んでいる

なんということだ

わたしはもういい年だがこんなときの挨拶も知らない

とりあえず線香を一本立てて手を合わせる

享年六十七歳

わたしがはたちのとき先生は四十歳だったのか

初めて出会った本物の詩人だった

枕元に炬燵があってみんな座っている

人がやってきて手を合わせるとそこに座る

ぎゅう詰めでうっかり立ち上がると

先生の頭を蹴とばすのではないか

炬燵の上にはおにぎりや沢庵がいっぱいで

おなかはすいていない早く帰りたい

でもすすめられるので冷めかけた味噌汁をすする

寝ている先生の枕元で物を食べるのは失礼な気がする

急に起き上がって文句を言われるのではないか

  おいひとの頭を蹴とばすなよ

  これはちょっと生意気なやつでね

先生わたしはただ甘えていただけです

先生は黙って寝ている

死んだ人は話さないし物も食べないのだ

わたしは生きているので

椀に残った葱をもそもそと口に入れる

門口を出ると隣家の垣根に鳩がいる

鳴くかと思ってしばらく見ていたが鳴かない

今は冬であれはドバトだ

キジバトの愛啼を胸苦しく聴いたのは五月だった

 そしてわたしの住むその親川の片割れの川

  汚れた名残り川の崖上で 午前五時

  虚ろな含み声のキジバトが啼き 夜が明けるのだ

  スッポー ポーポーポー

  アッ スッポー ポーポーポー


               *渋澤孝輔著 詩集『啼鳥四季』から「五月のキジバト」
                   詩誌「ティルス」6渋澤孝輔追悼号1999.1.30に掲載


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