天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

スペシャル番外編前編『間違えた荷物を届ける』

「なんやねんいきなりそれ」に対する解説。

ギフト番外編を楽しみにして下さってる4・5人ほどの方、ありがとうございます。今回は、番外編の番外編として、いきなり新キャラクターを登場させていただきたいと思います。発案、激烈中居ファン、インターネットのできない女いわしくんによる、愉快な世界をお楽しみ下さい。

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今日の由紀夫ちゃんのお仕事

その1.届け物「MO」届け先「変な男」

「メールでーす!」
中居正広は、そのオフィスのドアを開けながら元気よく言った。
「あー、中居ちゃーん」
見慣れた総務の女の子に、にっこりと笑いかける。
「はーい、中居ちゃんでーす。えーと、これと、これと…。2通ですねー、サインお願いしまーす」
「はいはーい。そだ、中居ちゃん、チョコレートいらない?」
「チョコ?いるいる、くれんの?」
「あげる、あげる。お土産でもらったの、生チョコ。はい」
口の中にポンと放り込まれ、幸せそうな笑顔になった中居は、口の中でもごもごとお礼を言いながら、総務からのメールを受け取って、廊下に出た。

自転車によるメール送付サービス。中居がしているのはそういう仕事だった。巨大なオフィスビル内でのサービスと、複数のオフィス間でのサービスをいくつか受け持って、一日中、自転車で走りまわっている。
「えーと、経理と、技術のー、第2っつったら、30階か」
持っているメールの宛先を確認し、どこから回るかを決定。
「順調、順調―」
メールを渡しては、お菓子だの、ジュースだの貰いつつ、今日も楽しく順調に、仕事は進行中だった。

「これはね、確実に、こっそりと、迅速に、本人に渡せってものなのね」
「大体そうだよな」
早坂由紀夫は、整った顔をほとんど動かさずに言った。
「そりゃそうなんだけど、とりわけ!こっそりと!迅速に!な訳。かなり重要なものだから」
その『重要なもの』が入ったバッグを、背中から野長瀬にかけられる。
「渡すのは、こいつ」
写真を渡され、名前を告げられる。溝口武弘の記憶が戻ってから、あの神懸かり的な記憶力は鳴りを潜めたが、それでも、由紀夫の記憶力は、普通の人間よりも遥かによく、2度とは告げさせない。
「それでね、ここで待ってるからって。時間は、4時ね、4時まで。でも、早い分にはいいのよ。3時から待ってるって」
渡された地図を見て、由紀夫の目は丸くなる。
首を傾げ奈緒美を見たが、奈緒美もただ首を振るばかり。
「おっかしなヤツ…」
十二時ジャスト。そう呟いて、由紀夫は出かけた。

「あぁー、すっげーうまそぉー!」
中居は、お弁当を広げてる女の子たちを覗き込んではしゃいだ声を上げる。
「中ちゃん、お昼は?」
「んー、これ済むまでこのビル出られねーもん。いいなぁ、おかーさんに作って貰ったの?」
「失礼な。自分で作ったのよ」
「うっそ!すげーじゃん!ね、ね、ちょっとちょーだい?」
「あげてもいいけどさぁー…」
ねぇ、と女の子たちが顔を見合わせる。
「なんで、中ちゃんって、太らない訳―?」
どのフロアでも、必ず何か食べさせてもらってる中居が、典型的な痩せの大食いなのは有名だった。
「えー?俺って、見た通り繊細で、気ぃ遣いだろー?だから、胃に穴開いててさぁ、そっから落ちるんだよ」
じゃあ、これと、これと、と女の子たちはお弁当の蓋におかず、ごはんを山盛りにしていた。
「聞けよっ!」
「はいはい。とっとと食って、とっとと帰って。女としてイヤになるから」
「ごめんねー、俺の体重が50kgなくって、ウェストが60cmないばっかりにぃー」
「死ね!死んでしまえっ!」

午後12時30分。
中居は、とりあえずお腹を満足させてご機嫌で自転車に乗っていた。鮮やかなカラーリングのマウンテンバイク。中居の会社では、そのカラーリングで、誰の自転車なのか解るようにしてあって、何せ一番派手なのが中居の自転車だった。同僚の、森且行や、香取慎吾から、中居くんセンスない!とさんっざん言われたいるが、気にしない。中居はどういう訳か、自分のセンスには、一点の疑いも持ってはいかなった。
蛍光ピンクとパステルグリーン基調のマウンテンバイクで、調子っぱずれの鼻歌を歌いながら、お気に入りの定食屋に(まだ食うか)向かっている途中。
「あれ、この先なんだっけ」
鼻歌の歌詞について考えながら、スピードをほとんど殺さず、脇道から本道へ突っ込んだ時。

真横からの衝撃に、由紀夫は訳が解らないまま歩道に投げ出された。
「…んだっ…!?」
「イッテーっ!」
受け身を取る間もなく、何が起こったのか瞬間、理解できなかった由紀夫は、倒れたまま耳に入って来た、一番大きな音に反応して首を巡らす。
「あぁっ!ゴメンっ!」
その音を出していたモノが、重なり合ってる2台の自転車を飛び越えて由紀夫のそばに来た。
「大丈夫っ?ちょっと、あ、これ!なぁ、平気!?ごめんなぁっ?」
『これ』の声で、体がひっくり返された。何で起き上がれないんだと思ってたら、斜めがけしてたバッグが、変な形で体の下に敷き込まれ、ベルトに引っ張れていたかららしい。
「怪我してねぇ?大丈夫っ?」
そのバッグを片手に、尋ねられる。
「何だぁ…?」
「いや、俺がさ、突っ込んじゃって、うわ!自転車!平気かなぁっ!」
なんだか、小さいのがちょこちょこしている。ぼうっと由紀夫は思った。
「なんか、変わった自転車?」
「あー、大丈夫」
由紀夫は起き上がり、軽くスーツの膝を払い、自転車を起こした。さすがは有名自動車メーカーの自転車。横っ腹に自転車が突っ込んだくらいじゃあどうにもなっていない。
「ごめんな?俺、ちょっと急いでて」
「前、向いて運転しろよ。こっちが車だったらどーすんだ」
「あー、そだなぁー…」
カリカリっと頭をかいて、えへ、と中居は笑った。
「自転車でよかった」
「よかったじゃなくって…」
呆れたように由紀夫が言葉を続けようとすると、大ぶりな腕時計を見た男が、顔色を変える。
「やべ…っ!あ、ごめんな!ちょっと時間なくって」
「あ?あぁ…」
あわあわとマウンテンバイクを立て直し、猛ダッシュで目の前から消えた男を、呆然と由紀夫は見送った。
「…また事故るぞ…」
そう呟きながら、自分も自転車に足をかけ、何かおかしい事に気がついた。
ん?と自分を点検し、周囲を点検し、顔色を変える。
「バッグ…!」
こんなにも簡単に、あんなにも訳の解らないヤツに荷物を奪われたかと思うと、思わず頭に血が上った。遅れたのは、一分にもならないほどの時間なのに、あの由紀夫が追いかけたにも関わらず、妙な色のマウンテンバイクは視界から消えている。
「ちっきしょ…!」
12時40分。由紀夫はキツく唇を噛んだ。

「やべーっ!ランチタイム終わっちまうよぉーっ!」
他人の自転車につっこみ、思いっきり転ばせておきながら、ランチタイムが終わるごときの理由で、猛スピードでマウンテンバイクを飛ばしている中居は、あれ?と足を止めた。
「何だ、これ…」
自分の肩に、見慣れない黒いメッセンジャーバッグ。
「俺のは、これだし…」
背中のリュックを確認し、ゲッ!と一声叫んだ。
「あいつのだぁーっ!」
180度ターンを決め、元来た道をダッシュする中居。
この辺りは中居のテリトリーで、細い道の一つ一つまでよく知っている。最速のルートで戻ったのだが、由紀夫の姿はない。
「あっちゃー…、どーしよぉー…!」
両手で頭を押さえ、しばし棒立ちになっていた中居は、リュックから携帯を取り出した。
ちょっと見ただけだけど、あれだけ目立つ男だったら、人海戦術で探せるんじゃないかと思い、会社に電話をする。
「もしもしー!?あ、吾郎―っ?」
『…どしたの、中居くん。今日は何。どのメール間違えたの。もしかして無くした?』
「何だよ、その言い方―っ!なぁ、慎吾と森って出てんの?」
『出てるよ』
「ちょっとさぁ、こっちに回してもらう訳にいかねぇ?」
『はぁ?』
「別にあいつらじゃなくっても、空いてるヤツ…。あ!おまえでも、剛でもいいや!ちょっと来てっ?」
携帯の向こうから、同僚である稲垣吾郎の、思いっきりなため息が聞こえてきた。
『バカだバカだと思ってたけど、ホントバカだね中居くんは』
「何でぇ!」
『俺も、剛も、内勤だっていつになったら覚えられる訳?メール忘れたから持ってこいだの、間違えたから交換してこいだの』
「ちがうんだって!」
てめぇは小姑か!と内心で思いながら、状況が状況だけに、比較的低姿勢に中居は言う。

事情を説明すると、再び大きなため息がつかれ、多少建設的な言葉が投げかけられた。
『目立つ人なんだね?特徴は?』
「カッコいい!」
『…………』
「もしもしぃー?」
『カッコいい、と。それから?』
「えーと、髪の毛くくってた」
『…で?』
「んー、とぉー…。あ!スーツがねずみ色!」
『ねずみ色って、俺、10年ぶりぐらいに聞いたよ』
「うっせぇな!灰色だ!灰色!」
『グレーね』
「日本人だったら、日本語使えーっ!!」
『カッコよくて、髪の毛くくってて、『ねずみ色』のスーツ…。これで見つけられると思う?真剣に』
「そんで、自転車もすっげーカッケーの」
剛―、と電話の向こうで呼びかけてる声がした。
『とりあえず、森くんと慎吾に連絡してみるから。あ、そのバッグ、中味入ってるの?』
「え?」
言われて、バッグを開ける。
「んーとぉー…。CDシングル…。ケース入りの。あ、でも、ケースあかねーや」
『CDシングルぅー?それだけ?』
「それだけ。でも、これ誰んだろ。普通のジャケットじゃねぇんだよ。なんかー、プラスチックで、中味見えてんだけど、取り出せなくって…。タイトルも書いてねぇし…」
『ちょ、ちょっと待って?』
どうしていいのか解らないという声がした。
「へ?」
『それって、ひょっとしてMOじゃないの?』
「えむお?」
『…。君さぁ、日本でも指折りの大会社に出入りしてんだよねぇ…』
「してるよ?何、えむおって」
『…そのCDは、ケースから出さなくても使えるの』
MOを届けに行った事もあるはずなのに…、と、吾郎はこの同僚の事がちょっと不憫になってきた。
「そーなんだぁ。そんで、えむおって何よ」
『中居くんは一生知らなくてもいい事。…あ、そう?。中居くん、二人に連絡ついて、そっち行けるって』
「あ、ホントっ!」
『そのCDちゃんとしまって。無くすんじゃないよ?』
「解ってるよっ!じゃなっ!」

「ホントウに、それしか解んないの?」
お昼食べてるからやだー、と明るく言った森と慎吾を、穏やかに懐柔し、説得し、現場に向かわせた草なぎ剛が、吾郎のメモを見ながら尋ねる。
「…あいつらの野生の勘に任せるしかないよね」

「人一人探して欲しいんだけど」
田村に電話して由紀夫は言った。
『な、何だよ…』
「20代前半の男で、身長が170cmくらい。ただし、結構底の厚い靴はいてたから、靴脱いじゃったら、165cmくらい、かな。かなりの痩せ型。茶髪で、首のあたりまでのストレート。色はかなり赤め。顔が小さくて、目がでかい。ちょっと吊り系の二重。よく見れば綺麗な顔かも。スタイルはよくって、多分、7・8頭身はある。派手なピンクとグリーンのマウンテンバイクに乗ってて、ブルゾンが赤。袖にワンポイントあったんだけど、どっかの会社のマークっぽい。パンツはカーキ色で、靴は黒のブーツ。右手の人差し指と中指、左手の中指にシルバーの指輪。上着と同じマーク入りの赤いリュック」
『す、すごいな…、久々に聞いたぞ、それ…。うーん、そのマークか、自転車の登録ナンバーでも解れば…』
「そこだけ白で、Sがデザインされてたと思う。全体的に逆三角形になるように」
『じゃあ…、会社名がSで始まるか』
「多分な。さすがに難しいと思うけど…」
『とりあえず、やってみるわ』
「頼むなー」
12時45分。電話を切った由紀夫は、さらに人海戦術もするため、事務所に電話を入れた。

タイムリミットまで、後3時間15分。

<つづく>

バカ中居と、勘違い由紀夫は、果たして無事再会を果たす事が出来るのか!!タイムリミットまで後3時間15分だ!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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