rain tree homeもくじ執筆者別もくじ詩人たち最新号もくじ最新号back number vol.1- もくじBackNumberback number11 もくじvol.11ふろくWhat's New閑月忙日rain tree から世界へリンク関富士子の詩集・エッセイなど詩集など
vol.11
<詩>定期バスに乗って(関富士子)

   駿河昌樹の詩 1  

執筆者紹介
つめたいコーヒーを飲むうつくしい逃げ(・・・・・・・可視の、いま、わたくしですか?)わたくしは輪郭を得ていったきみの記憶論はいま、東京のもっとも闇深い道、なんというところ、ここ?、この、わたしがことばは変わった夏のおわりあけがたのつくりだし方さいごにあたまをわる すっかりわる透いてきて、だんだん、だんだんと透明で

うっかりことばの敷居を



  
カクテル飲んでるうちに 愛のはなし
いつものこと
  
  
みんな 定義するのがすきで
ああだ、こうだ、いいながら 人類の
永遠の課題につらなる
  
  
なんとでもいえるのだよね
やさしさだって
愛を不純にするひとつ、とさえ
───でも
みんな、ことば
  
  
氷をからから鳴らしながら
愛 って
つながりを損なうよね 
いったら
だれにもつうじなかった
いや、愛 ってことばがさ
いいかえたら
ちょっと わかってもらえたような
もらえなかったような
  
  
愛 ってことばを
きみが口にしたときから
こわれはじめたように感じるんだけどね
かたちもない
触れることもできない世界に
すばらしくじぶんがひろがっていく あの気持ち
  
  
うっかり
ことばの敷居を
きみが跨いでしまったばかりに

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つめたいコーヒーを飲む



  
つめたいコーヒーを
飲む
のこっているというだけで
いのちのよう
いのちのゆくえ
わたくしの
ゆくえのように
雪がふる
といいたい気持ち
どこからくる
ふるさとの
ことばむなしくことばとなる
ばかりのことば
わたくしの
どこからくる
雪がふる
つめたさの
海ではなくて
コーヒーの
この残り
はげしく荒れよ
つのりゆく
雪がふる
どこにふる
どこにゆく
ゆくえのよう
いいたい気持ち
わたくしの
いのちの
よう

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うつくしい逃げ



  
エクスキューズの余地を残しておいてやる
ほかに
ひとへのやさしさなんてないだろう?
いくらでも追いつめることはできるだろうけれど
ひとの
花をぼくはみていたい
花びらの
しとやかさにふれていたい
  
  
逃げ、だろうかね
  
  
うつくしい逃げ、と 
ぼくなら
いうところだけどね

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(・・・・・・・可視の、いま、わたくしですか?)



  
時間の霊たちの思いが、
新しいわたくしの羊水になっていくようだ
       
  
空気が不透明になっているのを見た
  
  
喉に、こころが伝えた
「わたくしの思いから、ほら、出ておいで!」
  
  
空の青に身を投げている唇
  
  
風鈴を恋人にしたくなった
緑のかがやきと薄い青むらさきの空
── わたくしのからだ、どんどん輝いていくわ!
  
  
朝顔を髪にさす瞬間が
ことしも来る
どんな名前で、町の大通りに川遊びしよう?
(・・・・・・裸足であすのひかりの道を歩いていた、)
(・・・・・・裸足では州の日、雁の路を歩いてきた、)
  
  
時間の霊たちの思いが、
新しいわたくしの羊水になっていくようだ
  
  
彩りにささえられて
空気のからだに目がなじんできていました
  
  
彩りにささえられて
非旅
  
  
(・・・・雁の路、)
  
  
彩りにささえられて
空気のからだへと出ていっていました
  
  
新しいわたくしの羊水
  
  
彩りにささえられて
時間の霊たちの影が非旅にかたむく
  
  
(・・・・・・・可視の、いま、わたくしですか?)

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わたくしは輪郭を得ていった



  
友がいないので
こころに多くの友をつくっていた
  
  
世間話もまじえず
じかに接してきたひとの世
ひとの夜
  
  
うつくしくても星はとおく
あかときを告げるものはなく
こころとからだをささえながら
わたくしは輪郭を得ていった
  
  
地にからだの影の落ちるとき
わずかにはずれて
べつのあわい影が落ちる
  
  
わたくしの影
  
  
あかとき
それがさらにあきらかになるのを
こころの多くの友が
待っているという

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きみの記憶論はいま、



  
わたしはある日、夜がなかった。皿を割った。
くしゅくしゅ。
くしゅくしゅ。
わたしの近接未来が幸福なひとたちの群れの外壁に干乾びていく音だった。
暗い空の下のだれもいない小学校舎。
わきの細道を歩きながら、記憶をぜんぶ消してもこのわたしだろうかとまた考えた。
記憶をぜんぶ消したわたしはわたしだろうかわたしにとって?
水、記憶のない水のたまり。
湖。
わたしはどこの山中でひっそりと湖をしているのだろう、ほんとうは?
きょうはからだが元気だろう。
まだこのまま続くかもしれない(生きるとはそういうことだ)。
いつかこのままでないだろう(死ぬとはそういうことだ)。
首にやわらかい緩やかな首輪をつけてわたしを飼ってみようかと思っています。
わたしは飼われたい。
ああ、せつない、です!
飼いたいわたしも、いる。
ああ、せつない、です!
飼って! 飼わして! (と、総合する。はははははは!)
暗い。
夜はないのに。
道もある。
死後の世界は夜でないのに暗いという。
もののうっすら見える暗さ。
明るさ、望み、そちらへと傾斜をつくる言葉の流行、いまもですか?
わたしは暗くないよ。小学校舎の上の空が暗いだけだ。
低い空を白い白い大きな雲が流れていく。
わたしはわたしのさだめを見ていた。
どうして言葉は集まるのだろう。葉っぱが目に溜まる。それで運河に森ができる。
ブロックごとに分かれた言葉の詩を読みたくなった。
だれかが書くだろう。なにも教訓なしに。
でも、零度を気取っても書き手は
けっきょく神。言葉、神、わたしは自立していない。
わたしは自立していない。教育する。故郷。澄んだ川、霧の森。
わたしは自立していない。暴力は嫌いだ。お酒、飲まないで。殴るから。やだってば!
わたしは自立していない。自動飛行みたいな暗さ。水を吸いすぎる石の皿。
わたしは自立していない。大きな雲のことを語った。さだめのことを語った。
わたしは自立していない。区役所も大学も詩にならない。雑草とみたらしが、いい。
わたしは自立していない。きみの頭のなかの皿を割った。きみは壊れた。
わたしは自立していない。くりかえしすぎじゃないか、そろそろ。汗、蛍、爪きり。
だが、わたしは自立している。きみのかわりに言ってみただけだ。
わたしは自立している。
近接未来が干乾びて摘み海苔のようにくしゅくしゅ壁の下に堆積している。
暑かった一日、
ノーアイロンの白いシャツを祝祭のように着つづけ、
それをカーテンレールに吊るした。
生きているあいだだけ、神は体臭をきみに与える。
祝祭のように着つづけ、
きみを蕩尽していくきみだ。
わたしは自立していない。
わたしは自立している。
祭りのメロディーが響きつづけているばかり。
ひとりでも賑やかだ。
夜などない。
きみの記憶論はいま、どのあたりまで来たかね?

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東京のもっとも闇深い道、



  
東京のもっとも闇深い道(だそうです・・・・・・)、
そこに、
  
かたちあるもの、かたちの花を、通過するまなざしとなってしまった・・・・・・・
  
(ことばは、なお、わたし、あなた、を、語るための、若葉、古葉、ですか・・・・・・・)
  
もっとも闇深い道、
そこに、
そこ、を、
しばらく辿るのですね、
そういうことになった、
なりました、
        か、・・・・・・・・・・
  
多くの詩のひと、先達は、実際の地名を記し、詩に滑り込もうとした・・・・・・・・
あはは、あれ、・・・・・あれで、
よかったでしょうか、名のちからに縋って、
縋るほかない、詩の時代でしたか・・・・・・・・・・・・・
  
東京のもっとも闇深い
道(だそうです・・・・・・)、そこに、
踏み入る鞘なしの若葉、古葉、
陽のした、さんさんと水滴をまくようなオサナぶりで、
見えないことばの花が、
若葉、古葉を身に纏う、纏おうと
するようです、・・・・・・・・・・・
  
わたくしは降るひかりの筋の裏々、浦々に隠れ、
それを見ていた。
東京のもっとも闇深い道、
風景も、地名も、葉裏の水の玉にからめとられて、
そこの入り口では、
ひかりの筋々と、わたくしだけが、あった・・・・・・・・・・・・・


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なんというところ、ここ?、この、



  
コカコーラの缶?
  
わたし、春へ、ゆく。水際、ちょぼ、ちょぼ、・・・・・・ちょ、ぼ、と、
銀のガラス、かけら、
  
(“青、春、”に戻るみたいだ、きょう。
きょうは。
畔を走った。)あなた、待っていてくれたわよ、ね? あなた、・・・・・・・・・・
  
すっかり物語のない日、
まるでわたしはひいおばあさんの頃、水際を走る澄んだ火の流れ、
  
流れ、
  
流れ、あかるさをよーくごらん、 海と空のあいだをこんなふうに生きてきて、
  
コカコーラのない頃、水際を走る澄んだ火の流れ、
風景が火に走られていく
いのちがわたしに走られていく
(あなた、待っていてくれたわよ、ね? あなた、・・・・・・・・・・)
からだは
  
からだは失われる、みんな、
みんな、柔肌だったとしても、荒れ肌だったとしても、火を通過して、
わたしに流れ込む、走られ、走りぬかれて、
よきもの、みな、水に似るわ、火の水、火の水の流れ、
からだは
  
失われても、みんな、柔肌だった、荒れ肌だった、火を待って、
わたしに合流するまでの宴、よかったじゃないの、陽のもと、月のもと、
ああ長い長い、歳月、風景の、重ね、真皮に沈ませ、なっていく、
流れ、いく、さびしさ、たのしさ、
(“さ”、という区切りの、区切り方の、ここ、国、ね・・・・・・・・
“さ”、さびし“さ”、 たのし“さ”、)
  
どこへいっても風景、音、香り、こころ、ひかり、なんというところだろう、ここは?
ここに、
いる、それだけで、いいよ、と、
告げましょ、ね、
失われても、宴、火を待って、あなた、流れの、性、取り戻しゆく
さびし“さ”、 たのし“さ”、真皮に沈ませ、なっていく、
流れ、これら、風景の、音の、こころの、ひかりの、
  
なんというところ、ここ?、この、
水際、
  
(・・・・・コカコーラの缶?)




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わたしがことばは変わった



  
礎に躓いた。夜、のような(しっとりした)静けさの昼前、てのひらを
ゆるい土につきそうになって、
こころのどこかに、初めてのちからを入れた。
そして、目覚めた、(ような、・・・・・・・)、ような、
わたしのことばが変わった。
  
  
なつかしい信号所。
信号所、ではない、? ただ、信号、と、踏み切り、と、呼べばよい場所。か。
(信号所といいたいのは、・・・・・・・・・・・
  
  
なつかしい、信号、踏み切り、
わたしはそこで青春のすべてを待った。
いつも電車が通っていた。通るところだった。通り終わった
と思う間もなく、また、電車。
若く、しなやかな、からだ、の、時代、すべてをそこで、待った。
  
  
戻ってきた、のではない。
どこを歩いているのだろう、わたし
・・・・・・・若さのよろこびは、他人の、ものだった
・・・・・・・・・・・・・「なつかしい」?、・・・・・・・・「信号」?
・・・・・・・・・・「踏み切り」?
  
  
ある日、人生のおおかたを失って歩いている
歳、年齢、老い、さえもわたしを捨てていくような予感がしていた
ある日、
わたしのおおかたを失って歩いている
人生の
やつ、も、か?・・・・・・・・
  
  
わたしは静かすぎるのでひとには見えないようだ
風がわたしの肌に透明な子どもたちを生みつけていった・・・・・・・・・
透き通った岩、透き通ったカルマ、
いまになって、
じぶんには心臓も肺もなかったらしいと気づく
  
  
「なつかしい」・・・・・・のために生きあうひとたち、か?
歴史は盲目の郵便ポストほどにも海辺に似合っている
さざなみの音、くりかえしを纏いつかせて
松林は千年ののち
葉と幹の色をわずかに変えたく思うかもしれない
友を持ったことがあるかのような、
夢のあわいようす
水のように色があるような ないような
  
  
こころのどこか、はじめての力みは
こころの肉を裂いたようで
わたしは躓きを継続すべきだと感じる
てのひらをゆるい土につきそうになって・・・・・・・・
(継続すべきだと、・・・・・・・・・)
・・・・・・友の夢、
信号所、
良くありえた時代のすべて、(継続すべきだと、・・・・・・・・・)
  
  
わたしがことばが変わった
  
  
わたしがことばは変わった




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夏のおわり



  
太陽のちくしょう、元気な奴め、夏の海をことしも
飲み干せなかった!
あのおんなはどこへ消えたか?
グリーンのすてきなコーラ瓶のそこ
見えないけれど永遠に
残っている歳月
ふたりでいっしょにいるだけで夏だった!
あいつの腋のしたに青空をあおいで
ひまわり色の汗を流した!
はちきれるような黄色の花々にも終わりが来るか!
来る波来る波、見続けて何年たっただろう?
すっかり日焼けしたジジイになって
こころだけはどんどんひまわり色に若返って
ぐるぐるはやくなっていく時の渦に
あっはは! かるく乗りながら
おまえの帰還をずっと待っているぜ!




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あけがたのつくりだし方



  
べつのいい方をさがしているあいだに
時代は色をかえてしまったらしい
ぼくはひさしぶりにビー玉をとりだして
色のさまざまに見入っている
季節はどこをさまよっているだろう
こどもでも大人でもないぼくが
窓から外をのぞいてみるあいだに
世界は寝息をもらしている
ほしかったおもちゃも
探検したかった径も
あるべきところに落ち着いているだろうか
べつのいい方をさがしているあいだに
みんな寝静まってしまったようだ
ほおづえをついて見つめれば
どこでも東の地平線になる
あけがたは来るのではなくて
見つめることで生まれてくるのだった
べつのいい方をさがしているあいだに
ぼくの身についていた
あけがたのつくりだし方




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さいごにあたまをわる すっかりわる



  
たいせつ、このひとは
と思うひとのあたまをうしろから見るとこわい
  
  
うしろから
こわしやすそうなあたま
わるのは
かんたんそう
ちいさなあたま
おおきなあたま
おおきな
あたまだってなんのことはない
すいかほどではない
わるのはかんたんだ、たぶん
すいかだってかんたんにわれる
われる
  
  
むかしおおきな石をなげつけて
あたまをわって処刑した国があった
たくさんのひとで
受刑者をかこんで大石をなげつける
骨があちこちおれて
さいごにあたまをわる
すっかりわる
くだけた骨があたまの皮膚から出て
桃色だか白だか
青空にじかに出会って
しずかな夕暮れになる
われてしまえばあたまはしずかだろう
そのすがたも
そのなかみも
  
  
大石を投げ終えた男たちは家にかえって
母とか
妻とか
妹とかのまなざしのなかで
ゆうげをとった
わる
卵の殻をみて
おもいだすこともあったか
  
  
わってしまえば
おわったことだ、みんな
わってしまったものは
わってしまったもの
  
まだわれていないあなたのだいじな
ひとのあたま
まだわれていないあなた
じしんのあたま
われるまでのたくさんの夕暮れ
あるいはひょっとして
わずか数回の
夕暮れ




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透いてきて、だんだん、だんだんと透明で



  
ことばで澄んだ水のちいさなプールをつくりそーっと入ろうとしましたら
ことば、足りませんでした。
中指は濡れてて、薬指は乾いていて、なんて、
見えないやわらかい穴あきチーズみたいなプールです。
濡れているところ、濡れていないところ、
まだらに肌に散って、
春だか秋だか、わからない、からだ。
こんなプールでも急に出ると寒いかもしれないから、
膝を折って坐っていました。
そうしたらさっき、もう百歳ちかいのに気づいたじぶんです。
  
  
からだのどこかから旧式のフォードが走り出して行く。
ちかい林、とおい林をめぐって、
きっとどこかで歴史のそとの野鳥料理を食べるでしょう。
食べれば食べるほど野鳥の死なない、
絶えぬ小川の流れの秘密料理。
胸をむかしは太陽にひらいて、よくわたしに出会いました。
いまでは頬っぺたからでもじぶんに出会うからね。
月のひかりのメモ帳を漂わせて、
わたし、鉛筆に乗っていく夜の空気です。
  
  
ことば、足りないから、ね、
ことば、足りないから、ね、
そんな言い訳がエネルギーで、ときにひらひら、南の海の
月のひかりの夜の波の花のなかの気まぐれな一本がふと飛び立って見たら飛べちゃった、
そんな空飛ぶお花、
スパゲッティー、入れる直前のぐらぐらのお湯のなかの一瞬のダイヤモンド。
  
  
ああ、おなかが空いてきた。透いて、きた。
おおむかし、それともおお未来、
食べた野鳥料理が、透き通ったおなかを泳ぐ。
  
  
またまた、わたし、幸せ者。
秘密をきらきら陽に照らし、千年ぶりの虫干し。
紫の霧の秘密の倉はからっぽで、
またまた、わたし、幸せ者。
  
  
旧式フォードはいま、どのあたりの林?
会いたいひと、もの、ひとでなし、ものでなしが、
いる、いる、いる、いる、いる、まるで、
わたしが人類生んだみたいね。
イヴだったか、リリスだったか・・・・・・・
  
  
そろそろおなかが空いてきて、
透いて、きて、
急にふいっとプールから上がるとね、
なあんだ、暖かくって、よかった!
濡れていたところ、濡れていなかったところ、
まだらな模様になって、
これからちょっと根つめて、時間から時間をめぐる豹になろうと思った。
  
  
透いて、きて、
だんだん、だんだんと透明で。
  
  
「これから」さんとか、「しだいに」さんとか、
もっと親しい友だちになるよね。
なれる。
  
  
よろしくね、みなさん。
時間と無時間の豹、わたしの両目が
太陽と、月の、これから。




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<詩>枯れた花について(駿河昌樹)
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