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 2007年3月の独想録


 3月26日  春の大掃除
 私の家は、年末暮れの大掃除はしないかわりに、春になると大掃除が始まる。理由は簡単で、年末は寒くて掃除が辛いし何かと忙しいからだ。春は気候もよく、たとえば窓を拭いたり屋外で作業をするのも、春の清々しい風を浴びながら楽しくできる。同じやるなら楽しくやった方がよい。それに、春には卒業や進学、就職といったことなどがあるので、むしろ春の方が実質的な「移り変わり」であり、新たな出発に向けて新鮮な気分にしたい。その意味でも、春は大掃除に適していると思っている。
 掃除といっても、ただ汚れや埃を落とすだけではない。整理整頓し、余計なものを捨て、必要なものを取り入れる。むしろ、この方がより重要な意義がある。今後、来るであろう生活様式を予想して、それに適応できるように改善するのだ。
 それから、この一年間、無造作に重ねておいた資料だとか手紙などを分類してまとめ、必要なものは押入に保管したりする。こうすると、後で必要になったとき、すぐにその資料を取り出すことができる。それをしなければ、「あの資料、どこに行ったっけ?」などと、時間をかけて探し出す作業も必要なくなる。何かを探すという時間は、意味のない時間(つまり人生の時間)の浪費だと思っているので、可能な限り、このような時間のロスは減らすように心がけている。あるべきものを、あるべきところにおく。こうすると、すぐに見つかるし、また紛失するというリスクも避けられる。
 もちろん、汚れなども落として丹念に隅々を掃除する。カーテンなども洗濯機で洗う。驚くほど黒ずんで汚れた水になる。窓ガラスもきれいに磨く。外の景色が輝いて見えるようになる。部屋の中に埃やゴミが少なければ少ないほど、健康にもいいし、また、パソコンやプリンターなど精密機械にとってもいい。
 こうして、身辺をきれいに、また使い勝手のいい環境に整えると、気持ちもすっきりとして、文章を書くにしてもより意識が集中できるようになる。作家の中には、まるでゴミに埋もれているような乱雑な書斎の方がいい作品が書けるという人もいるようだが、私はそういう環境ではいい作品は書けそうもない。
 巷では、「掃除をして運をよくする」という本がよく売れているそうだ。風水的なことはともかく、整理整頓すれば気分がよくなり、その気分のよさが幸運を呼び込むといったことはあるかもしれない。
 また、整理整頓をするというのは、とても頭を使う作業である。ある種のしっかりとしたシステムのように頭の中が整理されていなければ、当然、物事も整理整頓はできない。物事を整理整頓できる知性であれば、おそらく生き方に関しても整理整頓できる能力があるに違いない。つまりは、それだけ幸運を呼び寄せる力がついてくることになるのかもしれない。

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