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 2015年6月の独想録


 6月9日 リスクを怖れない勇気
 株をやっている人の話によれば、そこそこ稼いでいるのは個人投資家の1割くらいであり、残りの9割は損をしているという。また、どんなに株のベテランで稼いでいても、100%成功はせず、その勝率はわずか3割から4割だという。つまり、10回投資して6回から7回は損を出して失敗していることになる。それでもベテランは損害を最小限におさえ、利益を最大限に得るコツを学んでいるので、最終的には利益を確保しているのだそうである。
 ところで、株の成功者となるためには、経済的な知識やテクニックも大切だが、それ以上に大切なのは「メンタル」であるらしい。つまり、株で成功するには、あらかじめ綿密な計画を立てて、あとはそれに余計な感情を交えずクールに実行することが大切らしいのだが、株で失敗する人は、感情が乱れてしまい、それが失敗の最大の原因であるという。たとえば、株で損をしたときは、いつまでもくよくよと落ち込んでばかりいたり、逆にたまたま儲けたとすると、「自分には株の才能がある」と自惚れて独りよがりのやり方をしたり、欲をかいてしまうなどだ。負けたときは悔しいので、損した分を取り戻そうと乱れた感情で血眼になり、大金を投資するが、それでは冷静な判断はできず、結局負けが連続してついには破産してしまう。
 一方、ベテランの成功している投資家は、失敗しても(実際、6、7割は失敗しているのだから)、それも株が上達するための「授業料」だと思って感情を乱さない。感情を乱すことなく、なぜ失敗したのかを冷静に分析して次の成功に活かすという。また、欲をかくこともしない。当初の計画に反して「まだまだ上がるだろう」と期待して利益確保の売りをせず、計画を安易に変更して、株価が上がるのをそのまま待っている。もちろん、もっと上がることもあるだろう。しかし長い目で見ると、このようなその場の感情に支配された取り引きは、結局は損をしてしまう。そうして一時は大儲けしたといって有頂天になっている投資家も、いつしか資金を使い果たして投資の世界から消えていってしまう。
 それに反して、ベテラン投資家は、あまり欲はかかず、最初に決められた、たとえば20%の利益が確保できたら、それで売りに出してしまう。もちろん、その後でさらに株価は上昇することもあり、正直、悔しい感じもするであろう。しかしベテラン投資家はそうしたことで感情を乱したりしない。あくまでも冷徹に、事前に周到に準備した計画通りに遂行していくだけであるというのだ。また、「自分には投資の才能があるんだ」などと自惚れたりしない。常に謙虚に、すでに十分稼いでいるのに、株の勉強を怠らないというのだ。

 私はこのような厳しい株式投資の世界をかいま見て、これは人生そのものに当てはまるのではないかと思った。まず、人生でやることは、百%うまくいくことはない、ということだ。おそらく、だいたい株と同じように、うまくいくのは、10回やって3回か、4回くらいであろう。あとの6回、7回は失敗してしまうのが普通なのだ。
 ところが、その6回、7回の失敗に、多くの人が耐えられない(もちろん私も人のことはいえない)。1回や2回くらい失敗してあきらめてしまう人も少なくないなかで、6回も7回も失敗してもあきらめずに挑戦し続けるというのは、これはメンタル的に強くなければできないことだ。
 株で大成功したどんなベテラン投資家も、最初のうちは失敗の連続であった。そのなかには数千万円という相当の金額を失った人もいる。退職金が一瞬のうちに三分の一になった人もいる。だが、彼らはそれを「授業料」だと考え、あきらめずに研究しトライして、ついには多額のお金を儲けられるまでになったのである。

 それともうひとつ、株にはリスクが伴うという点だ。大儲けできる反面、資産をごっそり失うというリスクもある。だが、人生もまた、何をするにもリスクが伴っているのではないだろうか? 恋人に愛を告白するのだって、「失恋」というリスクが伴っている。あきらかに見えるリスクもあれば、隠れて見えにくいリスクもあるが、とにかく何かをやろうとしたら、たいていの場合、そこにはリスクが伴っているとみて間違いない。
 株や人生のベテランは、儲けることや成功することよりも、リスク管理にウエイトを置く。つまり、「どのようなリスクが想定され、それはどのくらいダメージをもたらし、そのリスクがやってきたとき、どうすれば最小限にとどめられるか」ということを考えている。そのうえで株投資をしたり、何らかの活動をしたりする。だから、6割から7割失敗したとしても、それほどあわてなくてすむ。人生はトータルで利益を出せればいいのだ。個々の失敗はそれほど問題ではない。だがそれでも、リスクを侵す勇気は必要だ。リスクを侵す勇気のない人は、何をしても大きなものは手に入らない。もっとも、人にはそれぞれのやり方があるから、たとえばコツコツと働いて長い時間をかけて大きな収穫を手に入れるというやり方もある。私はそういうやり方も否定しない。これはリスクの少ない生き方だ。しかし、私は人間としての度量を養うには、あえてリスクに立ち向かう剛胆さといったものが必要ではないかと思っている。リスクを怖れない勇気が必要なのではないだろうか。

 これがどうやら、どのような世界でもベテランと呼べれる人の特徴のようだ。
 私は今まで株などというと、ただお金を右から左に動かして、何ら生産的なことをせずに楽に金を儲けようとするさもしい行いのように思っていた。だが、よくよく話を聞くと、株で成功するには大変な努力、経済や政治や流行など世の中の幅広い様子を把握すること、決してあきらめない根性、感情を乱さない克己心、学ぶことをやめない謙虚さといったことが求められることがわかり、決して「右から左にお金を動かして楽に金が手に入る」というものではないことがわかった(いわゆるビギナーズラックによってそうなる場合もあるだろうが、長続きはしないだろう)。
 このように考えると、株式投資というのは、動機によっては人間性を成長させるよい「修行」になるのではないかと思った。霊的な修行をする前に、まずは株の修行でもしてみたらいいのではないかと、半分本気で考えている。なぜなら、スピリチュアルな世界にはまっている人の中には、この世の基本的なことさえわかっていない人、基本的な人間性や常識さえわかっていない人が少なくないと思われるからである。人生は甘くないこと、うまい儲け話などないこと、努力せずして成功はできないこと、人や社会に頼っては(甘えては)いけないこと、自分の足で経済的に自立すること、失敗しても感情を乱さないこと、失敗しても人や世の中のせいにしないこと、向上心を持ち続け成長し続けること、そして何よりも、成功するまであきらめないことだ。
 こうしたことを、霊的修行をする前に、まずは学ぶことだ。こういうことを学ばずに、へたにスピリチュアルなことに頭をつっこんでも、ろくな人間にはならない。
 そのためにも、私は株式投資をしてみようかなと思っている。もしよろしければ、皆さんにもお勧めしたいと思う。ただし損をしても(最初のうちには必ずといっていいほど損をすると思ってよい)、私はいっさい責任を負えないので、そのつもりで行ってください(笑)。たとえ今まで何年もかかって貯金したお金を一瞬で失うことがあっても、責任はとれません。とりあえずは生活費だけは確保しておいて、余ったお金で少額からやってみるとよいと思います。
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