| 外法帖放遊記 |
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第拾弐話「燧火(すいか)」後篇 |
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竜泉寺の三人は、とりあえず篭城。 捕り手の「逆賊」扱いの声に憤慨する小鈴だが、 そんなことを言っている場合ではない。 「よりによって、時諏佐先生の留守の時に――」 だが、その先生も、すでに捕まっていることを、彼らは知らない。 「早く帰って来て、遼次郎――」 ★ ところが、当の遼次郎は、京梧とともに、町角でかくれんぼ状態。 町中が、御用提灯で埋まっているのだ。 「この分だと、寺も危ねえな。早く帰ってやらねえと」 焦る京梧の足元に、なぜか瓦版拾壱号が。 「寺への、いい土産もできたじゃねえか。よし――行くぞ」 いや、行くのはいいんですが――、 拾号、貰ってませんよ、私……。またか……。 一方、もう篭城も保たない三人。 雄慶が一人で討って出て、血路を開かんと決意するが、 藍と小鈴も共に出ると言い張る。 びっしり取り囲まれた境内に出て、捕り手に堂々説教をかます雄慶。 もはや覚悟の三人である。 と、そこに! 遼&京の二人が、ようやく駆けつける。 心強い援軍に喜ぶ三人。 「たかがふたりばかり増えたところで――」 捕り手の言葉が終わらぬうちに、 「いえ、援軍はそれだけでは、ありませんよ――」 彼らの後ろに現れたのは――、ようやく目覚めた、美冬! そういえば、等々力不動で、雄慶が担いで避難させたんだった。 ただし、その髪は金色だ。 そう、あの「ピセル」と名乗る、異国の女性の人格で現れたのである。 同じ国の者同士が争う現実に心を痛め、 その現状を打破せんとする龍閃組に、力を貸してくれるという。 戦闘へ――。 火盗改めあたりが束になろうと、どうなる相手ではない龍閃組。 が、そこに今回の首謀者、松平<京都守護職>容保が。 彼が、幕府の新たな戦力にして守りの要として呼び出したのは――、 やはり、あの御用船の中で戦った、「謎の兵」! そしてその正体は、人に蘭学の科学と外法を施した<超人>の集団。 名付けて、<鬼兵隊>――! 龍閃組はおろか、火盗改め方も、もはや必要ないと、 取り潰しを宣告する容保。 どういうことかと詰め寄る火盗改めの長官までも、 <鬼兵隊>でぶった斬る。 「同じ幕府の人を、なんで!」 怒る小鈴。 「不要になった道具を、処分しただけだ……」 などと、うそぶく容保。 もはや、いかんともし難し。戦闘へ――。 だが、「鬼退治の専門家」に、「鬼」では勝てぬ――。 ご自慢の「新兵器」を破られ、驚愕する容保。 取り巻く火盗改たちに、龍閃組を斬れと命令するが、 いまさらそんな命令を、聞けるわけもない。 と、そこに御厨登場。 「火盗改め方は、江戸の町と庶民を護り、 より良い世の中にするための組織。 決して、殺戮のための組織じゃあ、ないはずだぜっ」 同意する、上司の榊茂保衛門。手下の与助。 そして、遼次郎。 「幕府に逆らって、生きていけると思っているのかっ、愚か者がっ」 あくまでも居丈高な容保。と、そこに―― 「愚かなのは、お前さんのほうだよ」 颯爽と現れた風々斎。なんと円空上人もいっしょだ。 どうやら、彼ら「穏健派」の方でも、 「鬼兵隊」のコトは独自に調査していたらしい。 と、いうことはやはり、風々斎の「正体」は、幕府の要人で―― 「知らんのか? あのお方こそ、軍艦奉行の、勝安房守様なるぞ!」 御厨の説明で、びっくり納得する一行。 勝安房守といえば、勝麟太郎――またの名を勝海舟のことだ。 開国派、筆頭。とんだ大物である。 しかし、その勝海舟までも逆賊よばわりし、 この騒ぎも、「将軍直々の密命である」などと言いはる容保。 キレる海舟。 「やいやい容保、黙って聞いてりゃいい気になりやがって。 将軍直々の命令だと? このお方を前にしても、同じことがほざけるか?」 そして呼び出されたのは――まごうことなき、本物の将軍・徳川家茂! 「大阪から、舟で連れてくるのは、大変だったぜ」 って、アンタ……。 しかし、龍閃組、将軍、勝海舟、円空上人――。 これだけの顔ぶれに説得されても、気を変えるどころか、 面々を「クソ野郎」呼ばわりで、開き直る容保。 円空上人の診立てによると、どうやら「何者か」に「憑かれて」いるらしい。 小鈴の弓鳴りと円空上人の咒法により、「祓って」みると――、 「黒蠅翁」と名乗る、不気味な「影」が現れた。 「大イナル刻ハ来レリ――コレヨリ半年後、コノ国ハ闇ニ包マレル」 不気味な「予言」を始める黒蠅翁。 「ソノ時コソ、龍ガ目覚メ、大イナル時代ガ始マルデアロウ……」 「妙なこと言いやがって、てめえの目的は何だっ」 「我ガ主ガ、コノ世ノ王トナルコト――」 「なんだとう?」 「クックック……デハ、マタ会オウ……」 「あっ、待ちやがれっ」 いきりたつ一行を無視して、消え去る黒蠅翁。 松平容保は、気絶しているだけで無事――。 元はといえば、幕府重臣でありながら、開国派にも理解のある、 「ものわかりのよい」人間だったらしい容保。 あの黒蠅翁に憑かれて人格が変わっていたのだとすれば、 正気に戻った以上、もうこんな騒ぎは起こさないだろう。 将軍直々に声もかけられ、どうやら安泰の龍閃組。 もちろん、「組織が残った」のが嬉しいというわけではない。 組織は無くなっても、彼らは勝手に戦うだろう。 そうではなくて、 「江戸の町と庶民を護る組織」の意義が認められたこと、 幕府のトップが、そういう意思を持っていることが確認できたこと。 それが嬉しい、龍閃組であった。 だが、新たな不安は、その黒蠅翁と、「予言」の内容である――。 やつは何者なのか。「主」とは――。 |
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