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外法帖放遊記

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第拾弐話「燧火(すいか)」後篇
竜泉寺の三人は、とりあえず篭城。
捕り手の「逆賊」扱いの声に憤慨する小鈴だが、
そんなことを言っている場合ではない。
「よりによって、時諏佐先生の留守の時に――」
だが、その先生も、すでに捕まっていることを、彼らは知らない。
「早く帰って来て、遼次郎――」

ところが、当の遼次郎は、京梧とともに、町角でかくれんぼ状態。
町中が、御用提灯で埋まっているのだ。
「この分だと、寺も危ねえな。早く帰ってやらねえと」
焦る京梧の足元に、なぜか瓦版拾壱号が。
「寺への、いい土産もできたじゃねえか。よし――行くぞ」
いや、行くのはいいんですが――、
拾号、貰ってませんよ、私……。またか……。

一方、もう篭城も保たない三人。
雄慶が一人で討って出て、血路を開かんと決意するが、
小鈴も共に出ると言い張る。
びっしり取り囲まれた境内に出て、捕り手に堂々説教をかます雄慶
もはや覚悟の三人である。
と、そこに! の二人が、ようやく駆けつける。
心強い援軍に喜ぶ三人。
「たかがふたりばかり増えたところで――」
捕り手の言葉が終わらぬうちに、
「いえ、援軍はそれだけでは、ありませんよ――」
彼らの後ろに現れたのは――、ようやく目覚めた、美冬
そういえば、等々力不動で、雄慶が担いで避難させたんだった。
ただし、その髪は金色だ。
そう、あの「ピセル」と名乗る、異国の女性の人格で現れたのである。
同じ国の者同士が争う現実に心を痛め、
その現状を打破せんとする龍閃組に、力を貸してくれるという。
戦闘へ――。

火盗改めあたりが束になろうと、どうなる相手ではない龍閃組
が、そこに今回の首謀者、松平<京都守護職>容保が。
彼が、幕府の新たな戦力にして守りの要として呼び出したのは――、
やはり、あの御用船の中で戦った、「謎の兵」
そしてその正体は、人に蘭学の科学と外法を施した<超人>の集団。
名付けて、<鬼兵隊>――!

龍閃組はおろか、火盗改め方も、もはや必要ないと、
取り潰しを宣告する容保
どういうことかと詰め寄る火盗改めの長官までも、
<鬼兵隊>でぶった斬る。
「同じ幕府の人を、なんで!」
怒る小鈴
「不要になった道具を、処分しただけだ……」
などと、うそぶく容保
もはや、いかんともし難し。戦闘へ――。

だが、「鬼退治の専門家」に、「鬼」では勝てぬ――。
ご自慢の「新兵器」を破られ、驚愕する容保
取り巻く火盗改たちに、龍閃組を斬れと命令するが、
いまさらそんな命令を、聞けるわけもない。
と、そこに御厨登場。
火盗改め方は、江戸の町と庶民を護り、
より良い世の中にするための組織。
決して、殺戮のための組織じゃあ、ないはずだぜっ」
同意する、上司の榊茂保衛門。手下の与助
そして、遼次郎

「幕府に逆らって、生きていけると思っているのかっ、愚か者がっ」
あくまでも居丈高な容保。と、そこに――
「愚かなのは、お前さんのほうだよ」
颯爽と現れた風々斎。なんと円空上人もいっしょだ。
どうやら、彼ら「穏健派」の方でも、
「鬼兵隊」のコトは独自に調査していたらしい。
と、いうことはやはり、風々斎の「正体」は、幕府の要人で――
「知らんのか? あのお方こそ、軍艦奉行の、勝安房守様なるぞ!」
御厨の説明で、びっくり納得する一行。
勝安房守といえば、勝麟太郎――またの名を勝海舟のことだ。
開国派、筆頭。とんだ大物である。

しかし、その勝海舟までも逆賊よばわりし、
この騒ぎも、「将軍直々の密命である」などと言いはる容保
キレる海舟
「やいやい容保、黙って聞いてりゃいい気になりやがって。
将軍直々の命令だと?
このお方を前にしても、同じことがほざけるか?」
そして呼び出されたのは――まごうことなき、本物の将軍・徳川家茂
「大阪から、舟で連れてくるのは、大変だったぜ」
って、アンタ……。
しかし、龍閃組将軍勝海舟円空上人――。
これだけの顔ぶれに説得されても、気を変えるどころか、
面々を「クソ野郎」呼ばわりで、開き直る容保
円空上人の診立てによると、どうやら「何者か」に「憑かれて」いるらしい。

小鈴の弓鳴りと円空上人の咒法により、「祓って」みると――、
「黒蠅翁」と名乗る、不気味な「影」が現れた。
「大イナル刻ハ来レリ――コレヨリ半年後、コノ国ハ闇ニ包マレル」
不気味な「予言」を始める黒蠅翁
「ソノ時コソ、龍ガ目覚メ、大イナル時代ガ始マルデアロウ……」
「妙なこと言いやがって、てめえの目的は何だっ」
我ガ主ガ、コノ世ノ王トナルコト――」
「なんだとう?」
「クックック……デハ、マタ会オウ……」
「あっ、待ちやがれっ」
いきりたつ一行を無視して、消え去る黒蠅翁

松平容保は、気絶しているだけで無事――。
元はといえば、幕府重臣でありながら、開国派にも理解のある、
「ものわかりのよい」人間だったらしい容保
あの黒蠅翁に憑かれて人格が変わっていたのだとすれば、
正気に戻った以上、もうこんな騒ぎは起こさないだろう。

将軍直々に声もかけられ、どうやら安泰の龍閃組
もちろん、「組織が残った」のが嬉しいというわけではない。
組織は無くなっても、彼らは勝手に戦うだろう。
そうではなくて、
「江戸の町と庶民を護る組織」の意義が認められたこと、
幕府のトップが、そういう意思を持っていることが確認できたこと。
それが嬉しい、龍閃組であった。

だが、新たな不安は、その黒蠅翁と、「予言」の内容である――。
やつは何者なのか。「主」とは――。

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