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vol.18

Poetry Reading

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ヤリタ ミサコの 詩  1 (アーティスト詩)

tubui won't cry for K − 宮入恭平とのコラボレーションソングtubu世紀の間の詩―長澤忍「ゾロの世紀とゾロの世紀の間を」へtubuJINJINする詩 tubu(1)階段を降りる シオミミエコへ tubuALLENとMAKOTOと肛門へ



   「i won't cry for K」朗読ヤリタミサコ  155.45

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i won't cry for K − 宮入恭平とのコラボレーションソング




からっぽの闇
夜が明るすぎる
明日が見えすぎている
ぼくも見え透いている
遠くも近すぎる 明日が近すぎる 空が近すぎる
メタフィジカルな欲望 コトバを持った肉体たち 熱くもない 冷た
 くもない
ぼくはどこにもいない
無関心の拡大する 認識の 海へ 海へ 海へ
何を言ったらいいだろう
何が ぎくしゃく 何が 欲しいの? どこに 行くの? 何が あるの?
声の耳 閉じている コトバの耳 閉じている
後悔はしない 傷つくことはない
ポエティクス ポエティクス ポエティクス ポエティクス
悲しいのは必要な条件 個人的なことは政治的
アイムアウォーラス アイムアウォーラス アイムアウォーラス
アイムアウォーラス
  
青は明るい無意味の底に沈んだ
明るい無意味 沈黙する 忘れられた 何か
からっぽの夜 からっぽの闇
割れた 意味は 明るい夜の空に消えた
わかりすぎた明日
振り返るものは 何もなくて ひとりでもふたりでもなく
孤独ではない 意味はない 個性はない 理由もない
わかっているのは 青は明るい無意味の底に沈んだこと
声の耳 閉じている コトバの耳 閉じている
  
近すぎる遠く 明るすぎる闇
存在は不安なだけ 不安な存在
ぼくもここにはいない
笑うことはない 怒ることもできない
夢は近すぎて 見ることはできない
不安だけの存在 存在だけの不在
不安はない 喪失もない
  
からっぽの闇 夜が明るすぎる
声の耳 閉じている コトバの耳 閉じている
青は明るい無意味の底に沈んだ
何が ぎくしゃく 何が 欲しいの? どこに 行くの? 何が あるの?
わかりすぎた明日に
近すぎる遠くに
求めるものは 何もない

宮入恭平は、ライブ活動をしているミュージシャン。長野県出身、1968年生まれ。 ポエトリーリーディングにも参加していて、東京ポエケットや 中日詩人会の朗読会などに出演した。現在はハワイで、勉強中。
宮入恭平 tubuKYOHEI MIYAIRI's web site

tubu世紀の間の詩―長澤忍「ゾロの世紀とゾロの世紀の間を」へ(ヤリタミサコ)へ(横組みのみ)
<詩>紅タイルを採りに(関富士子)へ(縦組み横スクロール)縦組み縦スクロール表示






世紀の間の詩―長澤忍「ゾロの世紀とゾロの世紀の間を」へ




べたつく体 の 痕跡 を 追いかける
余白を見失って 目的を見失って 空を見失って
わたしは 信濃川の河岸段丘を 3段とびで駆け上がり 息も切らさず
20メートルの雲の切れ端を つかみとって 飛び降りてくる
地下の 冷たい壁には 聞こえない音が ただ運動している
連動して振動する わたしの右の鼓膜
  
ナガサワシノブは「消印だけがひとつの人称だった」という
人称をもたないシノブ
人格をもたないシノブ
体重をもたないシノブ
時間をもたないシノブ
  
時間の壁のうえに時間の壁が わたしたちを覆い尽くしていく
ゼロとイチに ゼロとイチ ゼロとイチ ゼロとイチ ゼロとイチ ゼロとイチ
  ゼロとイチに すっぽりとわたしたちは囲まれていく
アルとナイとに分類されていく
弥彦の山から太平洋へ異常発生していくありもしない捏造された存在の
ナガサワシノブは
記憶と記録で仮装しながら ビデオと現実をひっくり返して入れ替える
ゼロとイチを銅版画に固定して カメラから抜き取った現実を太陽光に当て
破りとった左の肺から コトバを振り落としていく
  
どうして あなたは明るい絶望をそんなにたくさん持ってるのですか?
   あなたは 残酷な叙情ですね?
   新発田のザクロも血の味がしますね?
   横に長く伸びる夕日のような味ですよ 
  
1999年をあたりまえに過ぎてしまう憂鬱を わたしたちは共有しなかった
2000年を黙って通り過ぎてしまう欺瞞を わたしたちは共有しなかった
シノブとわたしたち
世紀の壁と時間の壁のあいだで 
  
固有名という古傷に 新たな傷を刻み込むことで 古傷を忘れる行動
骨折したコトバには 別な部分を骨折させて レントゲンを大量に照射する衝動
消印と余白と文字は 記録に記録を重ね続けることで 記録であることをきっぱ
 りやめる
シノブの網膜には 蛇行する ゼロとイチが大量発生し
  切断された心臓と錆びた片耳には 磁気の嵐が吹きこんで
そうして シノブは 世界中の記号をすべて飲み込んで
  真綿のようにゆっくりと武装し続ける


20000915
*長澤忍は、新潟県在住の30代の男性詩人。先ごろは関ヶ原in恵比寿という、関西は平居謙のグループと朗読勝負を行ない、敗戦将軍となった。基本的に即興朗読を行なう。
この作品は2000年「ウルトラ5号」に発表された長澤忍の「ゾロの世紀とゾロの世紀の間を」 からインスピレーションを受けたもの。 長澤忍とは、このような互いのコレスポンダンスを、セッション集に まとめたいね、という共通の意志を持っている。

*紙版no.18 2000.11.25発行に掲載
<詩>「ゾロの世紀とゾロの世紀の間を」(長澤忍)へ(縦組み横スクロール)縦組み縦スクロール表示
ヤリタミサコの詩vol.15tubu「ナガサワシノブが刻印する」へ(横組みのみ)

tubuJINJINする詩(ヤリタミサコ)へ(横組みのみ)
<詩>i won't cry for K − 宮入恭平とのコラボレーションソングへ(横組みのみ)



JINJINする詩



疾走する たくさんの
野菜たちから 助詞を すっぱりと抜き去って
取り出した てにをは を 山のようにためこんで
冷蔵庫に こっそりと 動詞をふりかけて詰め込んで
  
現在完了形をかけっこさせる MURATA JIN
  
その間 自分は こっそり 発芽していく JIN
  
蔓がからまるようにJINの右手は
左目から
つるりん と
眼球を取り出してみせる
  
左のかかとの上で
その眼球を
くるくると回してみせる JIN
  
そうして
JINは
口から ふうっと ハダシの右足を吐き出すと・・・
  
「お茶下さい」と小松くんが
ウーロン茶のグラスを持って
右・左・右・左 と 床の上を歩いていく
  
ハダシの重力は・重力からの開放
開放のコトバは・コトバの無力
無力の26.5センチは・26.5センチ以外のなにものでもない
  
JINの右足で蹴りだされた 左眼球は
冥王星と第7官界とレテ川を1周して帰ってくる
氷抜きの小松くんのお茶は
温度が2度上昇する
  
眼球の帰りを待って
JINはオープンとクローズを256回繰り返す
口から 吐いた ハダシの右足に
カウントとって 8の字運動をさせている
too late too flat too much too・・・
  
JINは発芽している右足に凱旋した眼球を接ぎ木し骨折した助動詞たちを解体し
小松くんの心拍数に合わせて不良の不具合の不明箇所をまき散らす
JINは鉄筋の野菜たちを失語症にしてしまうまでに紫外線はシャットアウトし
不穏な冷蔵庫のなかで口から吐き出された右足は不規則な運動を繰り返していく
JIN JIN JIN JIN .....


*「mook mini fumi」 VOL.4 2000.9.1
*JINは、名古屋在住の大学生詩人村田仁のこと。
村田は小松亮一とふたりでブルー・マヨネーズブルーマヨネーズというユニットで リーディングやパフォーマンスを行ない、詩集を出している。

tubu@階段を降りる シオミミエコへ(ヤリタミサコ)へ(横組みのみ)
世紀の間の詩―長澤忍「ゾロの世紀とゾロの世紀の間を」へ(ヤリタミサコ)へ(横組みのみ)



(1)階段を降りる シオミミエコへ



(2)肩甲骨またはあぶみ骨のつぎめから、最大限に酸素を
 吸ってください
(3)(または、半月板を2ミリ動かすこと)
(4)動耳筋を北極星の位置に直してください。
  
(5)自発しなさい。
(6)目は閉じても閉じなくてもよい。
―右手の指先は重力に正しく従ってください。
―自分であってもなくてもよい。
  
1999年12月31日アムステルダム・シルベスターギャラリーで
756人の名前が呼び上げられた。
  
(7)2000年2月29日の本郷で、右足が触れた、階段
 の数を記憶してください。
(8)正方形のピアノが空中を飛んで来る。落下に注意!
(9)20メートルの脚立に積み上げられた、アルファベット
 たちに視線をあわせてはならない。
  
―ブラジルと交信している消しゴムを放置せよ。
 それは、単に松橋さんのことだと思う自由はある。
―中村さんと言ってもよい。
  
アンフラマンス アンフラマンス アンフラマンス
デュシャンは薄膜といった。
ああ薄膜。
  
(10)水戸とグムンデンとジャック・ドンギーを同時に
(11)想起せよ。
(12)『不在』を挿入せよ。
 発声を伴って。ああ。
(13)22時18分までは、TKを考えてはならない。
 8の字を抱擁せよ。
(14)点滅するポピドンヨードを除去し、拡張子を忘却せよ。
 ああ。
そうして、カーネーションと、渚にて。て。


*(1)‐(14)は原文では丸囲み1-14です。 2000年9月「青焔53号」

・シオミミエコは、大阪在住のアーティスト塩見允枝子のこと。ヨーコ・オノ、ナムジュン・パイクらと60年代からニューヨークで始まった、フルクサスという芸術運動に加わって活動している。

tubu<詩>ALLENとMAKOTOと肛門へ(ヤリタミサコ)へ(横組みのみ)
JINJINする詩(ヤリタミサコ)へ(横組みのみ)





 「ALLENとMAKOTOと肛門へ」朗読ヤリタミサコ  195.67

ALLENとMAKOTOと肛門へ



Allenとmakotoが
がっ し と
握手する
makotoは「タカシマですっ」
眼の光をぎらりとさせ
allenはメガネで
受け止める
ふたり きっと
肛門のハナシをしている
まこちゃんと呼ばれ スカートをはいて育った
makotoと
davidの来る前に黙々と排便するallenは
肛門コンシャスネスな ふたりだ
makotoはチベットのシェルパにも
肛門の拭きかたの文化を教えた
日本式拭きかたも伝授してきた
allenは 自分の肛門も 愛する人の肛門も
いつもいつも いつくしんだ
愛 も なみだ も 肛門で確かめた
ふたり
肛門で盛り上がっている に 違いない
銃と剣とで侵略するのが ペニス的 力 とすると
アヘンをのみこんだチャイナや 基地をのみこんだオキナワは
肛門的 としようか
異論はあっても
とにかく 今は
allenとmakotoの肛門論に参加したいのだ
肛門から口唇への清潔な宇宙で遊んだのは
あの タルホ
すましたカオで 星と 腸と 肛門と 透明なプラスティック
とで イギーポップのように遊んだ
allenはnaomiもdavidもpeterも
肛門で妊んだ
naomiという音は1988年に
かずこサンのニホンゴと同じくらい
わたしの 横隔膜に 直撃した
allenのkaddishは
わたしの肺を ぎゅっと ぎゅっと つかんだ
そのとき 砂防会館は オモシロイイキモノタチが
たくさんたくさんつどっていた
allenの口から肛門まで 広く広くはてしなく
エアーズロックの 小川の 赤土の 鳥の 脳の 細胞の 病院の 格子の
飛行機の 雲の じゅうたんの 坐禅の 足の 愛の 空気の 風の 肛門の
見えてくる
等身大の巨人
はみかむ わらう うたう おどる そこに いる
愉快な肛門
allen
ネクタイノallen
beatのbombを わたしは肛門で抱き取った


「青焔46号」1997年
* allenは、1997年4月に亡くなったアレン・ギンズバーグ
* makotoは、ギンズバーグの「* 白いかたびら」* を訳した高島誠。1993年8月に死去。ヤリタミサコの一生の詩の先生。

tubu<詩>フラグメンタルオフィスキル2000(ヤリタミサコ)へ(横組みのみ)
@階段を降りる シオミミエコへ(ヤリタミサコ)へ(横組みのみ)

rain tree homeもくじ執筆者別もくじ詩人たち最新号もくじ最新号back number1- もくじBackNumberback number18 もくじvol.18ふろくWhat's New閑月忙日rain tree から世界へリンク関富士子の詩集・エッセイなど詩集など