第5回その7
【最終回】
(1999/10/21) Up Date

5月16日、千秋楽

この日とうとう千秋楽を迎えた。
迎えることが出来た、と言っても過言ではない位いろいろなことがあった。毎公演毎公演厳しいが、今回は特に先の見えない公演稽古ではなかったろうか?“ミスキャスト”に始まり、台本の進みの遅れ、大掛かりなセットの座礁などなど・・・・今思い返しても、何か一つでも欠けた部分があったらここまで来れなかったかも知れない。改めてチームワークの大切さを知った公演だった。

最後の回の前、内田さんから話があった。

「やっと今日で最後。昨日の公演良かった。やっとプレイヤーズ・ハウスっぽくなってきた。アンケートもただ感動しました、ではない。やっときたって感じ。もう今回は昨日以上のものを絶対に見せないとだめ。今日は自分で厳しく、自分を追い込んでやってほしい。
みんなは幸せだよ。もっともっと、こんなに演技に打ち込んでいいって言われてるんだから。最初劇団を旗揚げした頃は、装置もろくに無い、傍からはいじわるな目で見られて、変な(演劇界の)常識知らなくて笑われて・・・。それをバネにやって来た。最近はそのソウルが少し欠けてきた。でも、
演技がまず命なんだという主張は変わっていない。一度はそのいじわるに負けて挫折したけど、こうして復活した。でもこんなところにとどまっていられない。もっともっと野望はでかい。
この『ムーンライト』の中で“エイハブ”が言っているのは本当の事。本番も稽古も関係ない。これだけ命張っているって事だけが役者のプライド。魂を沸騰させてやってくれ!
最後の回、頑張ろう!!!」

そう言って内田さんは舞台を後にして楽屋へ消えた。
最後に「さぁ〜戦争だ!!」と言う気合いの掛け声と共に・・・。
その後、舞台監督のヤス(安田)からも話があった。

「今日で最後。思い残すことなくやってほしい。あの二人(内田さんと道子さん)は必ずやるから、みんなで助けてあげるつもりで舞台に立って欲しい。スタッフもお願いします。
公演も本当に最後。今まで3〜4ヶ月がんばってきたのも最後。全力でいこう!」

本当に最後!
キャロル・斉藤とも最後!
そう自分に言い聞かせ、数時間後に迎える本番を前に大きく深呼吸をした。



・・・・・そして数時間後、最後の舞台が幕を閉じた。
これで終わり、これで最後。
毎回思う事だけど、公演を通じて色々なことを学ぶ。今回も色々なことを発見し、いろいろなことをみんなから教わった。これを次の公演への糧として、私自身ももっともっと成長したい。いや、きっと成長する!! と心に誓う。

「お疲れさまでした。俺はいい公演だったと思うよ。完璧ではなかったかも知れないけど、良かったと思う。過去4公演(プレイヤーズ・ハウスの充電期間後)の中で一番良かった。
やっぱ『ムーンライト』はキツイんだよ。アーサーになる人はみんな地獄を味わう。こっちも。でも公演はギリギリじゃないとだめなんだよな。それが楽しい。最後の回、トシから助けられた。やっぱり、あのトシの身になってみないと主役をやるキツさは分らないからな。不安や孤独感で一杯になって夜も眠れない。俺も味わったことがあるから分るけど、決していいもんじゃない。でも得だと思うよ、成長するから。今回本当にもうダメだって思った時が何回もあった。俺自身も逃げ出したい気持ちが、ふと頭をよぎったりした。でも、よくここまで来れたな。トシも本当にお疲れさま。」

さようなら、ムーンライトリハーサル

家に帰って日記をつけた。
しばらくは稽古もない。
みんなともしばらくお別れだ。
お別れ・・・・・・もう1人別れを告げる人がいた。

今日で『ムーンライトリハーサル』は最後だ。
キャロル・斉藤ともお別れだ。
キャロル、あなたはすごくやなやつで、おばさんになっちゃってて、人の傷、心の痛みもおかまいなしにズケズケと入っていくようなやつだけど、あなたの記者としてのプライドと執念とプロ意識に、私は敬意を表したいです。

前回公演の“口上ヅトメ”役で大失敗したあの瞬間、あの瞬間を絶対に忘れない。
キャロルに教わったこと、自分という存在に自信を持って、どっしりといること。それと生きていくパワーの強さ、そして“プロ”ということ。
・・・一番は
“プロである”ということ。

その役をやる為には、その役の人物の優しさや、強さや、困難を乗り越えていくパワーなどを、演じる役者自身がそれを持たないと出来ないということ。

全然練習ができなくて、明日自分の出番となったあの夜、ものすごいどもりで体もガタガタしてた。大道具に今回行って初めて分かった気持ち。衣装を探しに歩き回って初めて味わった気持ち。

そして、やっぱり元気である、ということ。

キャロル、会えて本当によかった。
・・・・・・・たまには、素敵な記事も書いてネ!

長かった公演もさようなら。
この稽古記録もさようなら。
そして、次へ向かって新しい何かを求めて。


続・稽古記録/完
1999/10/21



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