稽古記録第三回その3】
(1999/10/01)Up Date

インタビュアー(私自身の出番)のシーンも終わり、やっとこの物語の主人公、キャプテン・エイハブが登場してくる事になった。な、長かった!!
実際この芝居中、エイハブが登場するのは物語の中盤からだから、稽古も後の方になるの分かっていた。で、稽古の残りが、あと2週間か・・・すでに公演稽古が始まってから1ヶ月半が経とうとしているので・・・・・え〜っと、あ、計算が合わない! 
ど、どうしよう!?

『アーサーとして、役者として』

今回の『ムーンライトリハーサル』の公演稽古記録として避けては通れない事がある。トシ(稲葉)のことだ。なんと言っても今回の公演稽古で、トシが一番きつかったと思う。
それと演出を付ける内田さんも。
事実をそのまま述べてしまえば、再三にわたってシーンが進まないと書いていたその原因はトシだった。もちろんトシ一人が原因では決してない。しかし、トシは二役に付いていた。アーサーとマルス。どちらも物語の中心となる人物。主役だ。だがトシの台詞で稽古は止まり、トシの行動でダメ出しが入った。もう一度やり直し、もう一度やり直し、もう一度、もう一度・・・・・。同じシーンを何度も繰り返した。一週間も稽古場にいれば、自分のパート以外の台詞(それこそ台本一冊分)も言えるくらい繰り返した。シーンが進む訳がなかった。

この日(4月23日)私は初めてトシと同じシーンを過ごした。しかし、自分の演技に夢中だったので、役者としてのトシを感じる事が出来なかった。逆に自分でイメージしながら稽古してたのと同じアーサーや、若子、キャリーがそこにいたので(当たり前か?)、「わっ!本物がいる!!」と、ちょっと喜んでいた(笑)。そして劇中の私のパートナー、カメラマン役の進藤とも初めてシーンを過ごした。進藤はこの役の為に、プロカメラマンの元に一日弟子入りをして役作りをしていた。大西さんと言って、公演パンフやスチールを撮ってもらっているプロカメラマンの方で、カメラの構え方、プロの立ち振る舞いを研究してきたらしい。そう言えば最初に稽古していた時とフォームが違う! 何となくプロっぽく見えるじゃん! 進藤曰く、「プロはカメラを構える時にカメラに自分が近づいていくのだ」と言う事を発見したらしく、自分のフォームを変えたらしいのだ。私もインタビュアーのフォームを研究する為に、いろいろな映画を観たりして研究した。でもやっぱり、実際にプロの元、現場で研究が出きるなんて・・・ちょっと羨ましいな! この進藤は、前回の『最後の太郎』で“九官鳥”役をやっていたので憶えている方も多いと思いますが、集中力は劇団の中でも一番ではないかと思うぐらい凄いのです!稽古の時も、8時間ず〜〜っとシャッターを切りっぱなしでカメラを構えていたし・・・・・。パートナーとしても私の集中の助けになった。私たちの登場したシーンも周りの反応は良かったので、ちょっと先が見えた気がした。

だが、前にこの日は何事もなく終わったと書いたが、これは私たちのパートに対してのダメ出しが少なかったと言う話で、実際にはトシのパートで何度もストップが入っていた。
しかし前日、トシは難しいシーンを一発でクリアしていた。それは劇中劇(戦争下のマルスとマリアの話)で、目の見えないキャリー(大川)の部屋からアーサーがパンを間違って持ってきてしまうというシーンなのだが、この『ムーンライトリハーサル』を上演する度の稽古で、毎回歴代マルスがストップしてしまう“ムーンライト難所”の一つと呼ばれていたシーンを、トシは一日で終わらせてしまったのだ!! 稽古の残り日数と、台本の進み具合をにらめっこしていた舞台監督のヤス(安田)も、このシーンに何日か割り裂いていたので、内田さん共々この嬉しい計算違いに意気揚揚としていた。これで波に乗ってくれ・・・・と誰もが願っていたと思う。それが難しい事だと知りつつも。

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