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12月26日(水)年の瀬
もう今年も終わるというのに、いただいた詩集や詩誌のお礼が一つも書けていない。送ってくださった方、ごめんなさい。必ず読んでいますがお返事書けないのをお許しください。
弁解するようだが、今年はわたしのなりわいの学習参考書の編集が最多忙期で、厳しい締めきりに追われる毎日だった。教科書は小・中・高と一年ずつずらしながら、四年に一度改訂がある。今年は学習指導要領の大幅改訂もあって、小・中学校教科書が同時に新しくなった。それに合わせて、学参業界は解説書や問題集などを一挙に書き替えなければならない。これを逃せばあとは四年後まで食いっぱぐれるので各社必死である。かくして下っ端のわたしのような個人ライターまで、大忙しになる。
こんなことをいちいち説明しなくてもいいよって思うけど、どうかな。
実はわたしの胸にここしばらくすっきりしないちくちくがあるのだ。棘のように刺さっているらしく、ときどき意地悪く痛む。いつだったか、詩人たちの小さな集まりがあり、気心の知れた仲間内で、詩集や詩誌をいただいてもなかなか返事が書けなくて、、、とぐちったことがある。そのときある人に言われた言葉である。「いただいた詩集の返事も出さないのはおかしい。関さんは、自分の書いた詩が最高だ、いちばんすばらしいと思っているんじゃないか、それが人の感想を書くときに悪く影響しているんじゃないか、、。」お酒の勢いもあるのか、ふだん優しい人なのに、非常に強い調子で非難された。
わたしはその言葉に驚いてこのように返答した。
「わたしはもちろん、自分の書いた詩がいちばん大切で、いいものだと思っている。でもそれは、ここにいる詩人のだれもが自分自身の詩について思っていることだ。そのぐらいの自負がなくて、だれにも読まれない詩を何年も書き続けることができるだろうか。でも、そのことが人の作品への批評に影響しているとは思わない。返事が書けないのは物理的にその時間がとれないというだけのことにすぎない。」
わたしはすっかり怒り心頭でぷりぷり帰ってきたのだった。そう言った人物についてはわたしは今でもとても信頼に足る人だと思っている。そういう人に、わたしの書く感想文の内容や、詩人たちとの付き合い方について、批判的に思われていたとはまったく想像していなかった。驚いたしショックだった。なんだかずいぶん意地悪な言い方だったな、わたしのどんな態度が彼の気に触ったのだろう。彼の中の何があんなふうに言わせたのだろう、と今も思い出すと嫌な気分になる。しかし、考えてみれば、もらったもののお礼をしないのは世間一般の常識から見れば、礼儀知らずと言われることである。
送ってくださるのは、たいていは長く作品のやりとりがある詩人たちだし、感想を書くたいへんさを皆知っているから、返事がないのを責められたことはない。でも、なぜわたしに?と思うような見知らぬ方から送られた場合はどうなのだろう。たいていは謹呈用紙が一枚入っているだけで、うんともすんとも書いていない。いただくほうもそのほうが気が楽である。詩集を作るにはたいへんなお金がかかっているのだから、出すほうとしてもなまなかな気持ちではないのはわかる。だからといって、みんなが感想をくれるのが当然だと思うのだろうか? 自費出版したたいせつな詩誌や詩集を、郵送料を負担して送ってくださる方々は、わたしの返事がないのを怒っているのかな。たいしたものも書いていないくせに、自分が一番だと思っている傲慢な奴だと思われているのだろうか。ごめんねー。返事を書けない詩集がたまっていくのを見ると、彼の言葉が不意に思い出されてわたしを苦しめるのである。
わたし自身、詩誌や詩集をいろいろな詩人に勝手に送りつけているが、返事をほとんど期待していない。たまさかていねいな褒め言葉をいただいても、そのときはうれしくてもそれきりのことが多い。めったにないが、詩誌などで丁寧に批評を載せてくださっても、ありがとうございます、で終わりである。ときどき、楽しみにしています、というはがきがふらりと返ってくるととても嬉しい。詩人たちとの詩のやりとりは、わたしの場合そんなふうにごくあっさりしている。あまり出かけていってあいさつしたりもしない。でも、心に残った詩はいつまでも忘れないし、名前をきけば、あ、あの詩を書いた人、とすぐにわかる。こうして、詩が読まれれば充分ではないだろうか。
今は自分の詩を書く時間を取るのもままならないが、それについては心配していない。きのう、今年最後の締めきりの仕事を終えて、暮れかかる川沿いの道を自転車で走って宅配便に載せ、ほっと気がつくと世の中はクリスマスだった。すっかり忘れていた。もうプレゼントをねだる子どもたちもいない。自分のためにワインを買って帰った。こういうときに、もらった詩集をせっせと読むべきだろうか。あるいは、詩人たちのおおぜい集まるところに出かけていって、交流とやらをするべきだろうか。いやいや、わたしは、心静かに詩を書くのである。次の日までに二つ仕上げることができた。詩は書けるときもあるし書けないときもあるさ。仕事の多忙は、長年の経験で一時のものだとわかっている。必ずゆっくりと読んだり書いたりできる時が来る。
12月2日 詩誌・詩集情報 11月に見つけた花や実
巷に起こる事件やできごとを見聞きするにつけ、人の世の無常を感じる今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしですか。それにひきかえ、植物は淡々と、毎年季節ごとに芽を出し花を咲かせ、成長して実をつけ枯れていきます。それがこれからも毎年繰り返され、人類がすべて滅び去ったあとも、変わらずつづくのだと思うと心が慰められます。せめて、彼らの迷惑にならないように、ひっそりと生き、死んでいきましょう。
ちょっと殊勝な心境の12月です。
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