「ごめんなさい」なんて言われると憎めないのです。特に男の子の親は、自分の子供のことを考えながら読むことになるのでしょう。おもしろかった!!
本書にはひろすけ童話23篇が収録されていて、大人が読める本になっています。欲を言えば、表紙以外はイラストが無いのですが、読者のイメージを膨らませる補助のために、挿絵が数点くらいはあっても良かったのではないかと思いました。
例えば『一杯のかけそば』のような、いわゆるお涙頂戴話は、ツボにはまった人は泣けるけど、冷静な人にとってはかえってヤラセっぽく感じて嫌悪感すら覚えてしまいます。
表題作『泣いた赤おに』は有名な童話ですが、物語の中で友情に基づいたヤラセ行為が行われます。読者の涙を誘うのは、青おにのヤラセではないまごころの友情です。ストーリーが分かっていても赤おにに共感し、泣ける場面です。去って行った青おにとはもう二度と会えないかもしれませんが、どこまでも友情は失われることはありません。
今回のテーマは、最近話題のお宝物についてです。テレビで、お宝物鑑定がずいぶんもてはやされましたが、ほんとうに、それだけの価値があるのかな?と、感じさせる今回のお話です。
それなりに面白いのですが、他の「ゾロリ」よりちょっとアイデアが乏しいような、もう少し話を突っ込んでもいいような気がします。
でも、最後の最後に出てくるにんじゃたちには笑えます。
お話の最後には解説も入り、なるほどなーと感心するばかりです。情景が思い描け、ヨーロッパの森の風景が思い浮かび、大人が楽しむ童話なのだなと、気づきました。ストゥルンヴェルペーターしかり、ドイツの童話は、道徳的で、なかなか辛らつで、それも興味深いです。