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                    探求の光(第3話)

 今までは違う「別の道」が人を変える

 二人の(実際はひとりの)天使が、私に面白いものを見せてあげようといった。すると空中に大きな鏡のようなものが現れた。見ると、そこは薄暗く、異様な光景で、人相の悪いたくさんの人たちがいた。ある者はののしりあい、ある者は奪い合い、叩いたり、悪口を言い合って反目していた。それは地獄に住む住民であるという。何とも醜い様子で、このような人たちとは関わり合いになりたくないと思った。すると、そんな私の心を読みとるかのように、まず右の天使がこういった。
 「もしもあなたが、“こんな人たちは自分とは違う。自分はもっとレベルの高い人間だから、こんな人たちとつきあうのはよそう。自分まで悪い影響を受けてしまうから”と、こう思ったとしたら、まさにあなたの心は地獄の住民のそれなのです。“分離”こそが地獄の大きな特徴だからです。この世の醜い人たちは、あなたの心の醜い部分が現象化されたにすぎません。彼らはあなたの一部分なのです。ですから、自分の傷をいたわるように、彼らに接しなさい。みんな同じ、過ちを犯す同胞なのだとして、寛容でありなさい」
 今度は、左の天使が口を開いた。
 「醜悪な状況の中で、その悪しき影響を受けないように、ただ独りありなさい。自分の生き方はあなた方とは違うのだと、断固として示してあげなさい。この世の中に、まったく違う存在が、違う道が、違う光があるということを示してあげなさい。もしも右の頬を殴られたら、殴り返すのではなく、左の頬を差し出しなさい。それが地獄の住民とは違う生き方なのです。憎しみに対して、善意をもって接しなさい」
 すると、突然、鏡の中にいる地獄の住民のひとりが、私の存在に気づいて、鏡から飛び出して私に殴りかかってきた。二人の天使が同時にいった。
 「恐れてはいけません!」
 難しいことではあったが、努力して心の中に恐怖が起きないようにした。すると地獄の住民は奇妙な顔をして「俺が怖くないのか?」といった。私は「怖くない」と、(少し無理をして)答えた。
 すると「不思議なこともあるもんだ」といって鏡の中に戻っていった。そこで彼は、別の地獄の住民から殴られそうになったが、平然として殴り返すことをしなかった。すると相手は同じように「俺が怖くないのか?」と尋ね、彼は「怖くない」と答えて、「不思議なこともあるもんだ」といった。そしてその人間が、また別の人間から殴られそうになったのだが、彼も同じように殴ることをしなかった。こうして、鏡の中で連鎖反応のように広がっていった。すると、みるみるうちに地獄の住民は争いがおさまっていき、いつしか明るい光が射し込めて、お互いがいたわり合うような平和な世界となった。

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