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                    探求の光(第5話)

 人間に愛することはできない、ただ愛の通路となるだけである

 二人の天使が声をそろえていった。
 「この世の中で一番大切なのは愛です。なぜなら愛は生命だからです。ところで、あなたはすべての人たち、すべての生き物を愛していますか? 少なくても、愛するだれかがいますか?」
 「すべての人を愛しているかといわれると、自信はないけれど、愛する人ならいます」
 私がそう答えると、右の天使がいった。
 「もしもあなたが、“私は愛している”と思うのなら、それは傲慢というものです。あなたには愛することはできません。生きようと思って生きている人はいないように、人間に愛することはできないのです。この世の中で真に愛することができるのは、ただひとつしかありません。それは「愛」です。愛だけが愛せるのです。“愛が”愛するのですよ。あなたではないのです。あなたはただ、天から流れてくる愛の「媒体」になることができるだけです。人間はただ、愛にとって、単なる表現手段に過ぎません。あなたは楽器に過ぎません。楽器は音を出しますが、楽器が演奏するのではありません。あなたという楽器を演奏するのは「愛」なのです。愛があなたを使って、美しい調べを表現するのです」
 次に左の天使がいった。
 「いかに楽器を演奏する人がすぐれていても、楽器の調子が悪ければ、美しい調べを奏でることはできません。調律されていない楽器では、いかなるマエストロといえどもお手上げです。あなたは愛という最高の演奏家にとっての、最高の楽器となるべく、常に自分自身を磨き、高めなければなりません。ところで、優秀な演奏家というものは、楽器とひとつになって演奏します。優秀なピアニストは、自分自身がピアノになるのです。優秀なバイオリニストは、バイオリンを弾くと同時に、“バイオリンから弾かされる”のです。そして、真に愛する人もまた、「愛」によって“愛させられる”のです。生命が“生かされている”ように。あなたが真に愛するとき、それは愛が愛していると同時に、あなた自身が愛しているのです。なぜなら、愛あるところに分離はないからです。そしてあなたが愛と一体になり得るということは、あなたの本質が愛であるということに他なりません。つまり、“あなた”が愛しているということなのです。真実のあなたが」

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