第参拾弐話「黄龍」 |
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いきなり場面は内藤新宿。 雪の中、夜の明けない朝を不思議がる杏花。 そこに御厨が現れ、 「こんな夜道――いや、もう朝か?――若い女の一人歩きは感心せんな」 と、咎める。が―― 「そんなことより、竜泉寺はどう?」 などと、一向に気にせず、ぜんぜん違う事を訊く杏花。 苦笑しつつ答える御厨。 「――相変わらず、あのままだ。……あいつらは、大丈夫なんだろうか」 「そうね……今は、あいつらだけが、あたしたちの希望だものね。」 「必ず、生きて帰ってこいよ、遼の字――」 闇に降りしきる雪空を見上げて、つぶやく二人――。 ★ その頃。当の「あいつら」―― 互いの気持ちを確かめ合い、ラブラブかかってこんかい状態となった遼&藍と、 無事合流を果たした鬼龍組の面々は、 すでに富士山頂付近まで到達していた。 しかし、案の定、今まで現れなかった黒蠅翁のお出迎えだ。 「オ前タチニフサワシイ相手ヲ用意シタ――」 などとほざき、例によって幻の戦場――「名もなき寺」なる場所に誘い込まれる。 戦闘へ――。
〜うわっ、十兵衛と武蔵がいやがる。なるほどね。 「この儂らは、きゃつの術によって≪作られた≫、数打ち(量産)の品じゃぞ。 人も刀も、数打ちの品は大したものではない。 今の儂らに負けるなら、それはお主らも、その程度のものということ――」 「――御託は関係ない。こうしてこの世に居る以上、斬るのみよ」 (↑妄想補完。てか、もはや言うまでもないか……) 思惑はそれぞれなれど、遠慮なく斬りこんで来るなら同じじゃ。すまぬが、斬る!〜
というわけで、遠慮なく斬った。 「……ヤハリ御主か……水箭戸遼次郎ヨ……。 ダガ、アノオ方ヲ止メル術ハ、御主ラニハナイ。 ニンゲンヨ……滅ビノ刻ハ、目ノ前ダ……クックック……」 うっとうしい捨て台詞を残して、黒蠅翁、消滅。
山頂へと急ぐ一行に、再び地鳴りが。 また雪崩攻撃かと、あわてて山頂へ駆け上がってみると、 そこには、恐ろしい≪気≫が渦を巻いていた。 空は不気味な黒雲に覆われ、魂も凍るような雪が降りしきる。 地上は、霧のような異様な≪気≫の流れが岩の間を巡り、大地を揺るがす。 地鳴りは、その鳴動だったようだ。 そして―― 「人よ、死すべき者よ――」 ついに、すべての元凶・柳生宗崇、登場。
と共に、あたりの≪気≫――あまねく日の本の大地の≪気≫の乱れが、一層激しくなる。 「う……なんだか――胸が……苦しい……」 その影響を受けてか、苦しみ始める藍。 「ふん、≪菩薩眼の娘≫か。――だが我は、そのような能力はなくとも、 この≪龍脈≫の≪力≫を制し、すべてを支配して見せる!」 が――うそぶく宗崇の言葉とはうらはらに、突然鎮まって行くあたりの≪気≫。 「なに……?」 みるまに、鳴動は収まり、≪気≫の流れは穏やかになって行く。 「あ――息が……楽に……?」 うずくまって、遼次郎に支えられていた藍も、落ちついてきたようだ。 「これは――貴様の≪力≫なのか、≪菩薩眼の娘≫よ!? 貴様の≪心≫に、周りの≪気≫が共鳴し、鎮まろうとしたとでも、言うのか!?」 いささか意外そうに、あたりを見回す宗崇。しかし―― 「……だが、再び乱せばよい。それだけのことよ」 そう言うと、言葉の通り、邪悪な≪力≫を放出せんとする、そこへ。 「させるか!」 鋭い叫びとともに、遼次郎の掌から打ち出された≪気≫が、宗崇を打つ。 「ぐっ、貴様! 水箭戸……遼次郎と言ったな――」 睨み合う、遼次郎と宗崇。 そこに、割りこむようにして立ち上がった藍が、宗崇を見据え、全員の気持ちを代弁する。 「――世界は、すべての生き物たちのものよ。 誰か一人に、それを支配する権利なんて、ないはず――。 どうしてもそれをすると言うのなら……私たちは戦う。みんなのために――!」 ――戦闘へ。
〜いかに<力>があろうとも、今のあんたはまだ「ヒト」のうち。うちらの敵ではないよん〜
激闘の末、倒したかに見えた宗崇。 ところが――奇怪な<蟲>の能力と、もちろん彼自身の≪力≫によって、 みるまにあっさり回復してしまう。 「ふっ……愚かな。不死の身体を持つ我を、倒すことなど出来ぬわ。――ぬっ?」 突如、宗崇の持つ<陰の勾玉>が哭きはじめた。 どうやら、遼次郎の持つ<陽の勾玉>と共鳴しているようだ。 思わず、自分のふところに目をやる遼次郎。そのスキを突き――、 「そこにあったか」 ――と、そのふところを切り裂き、転げ落ちた勾玉を拾う宗崇。
「……<鍵>。ようやく――揃ったな……」 ほとんど恍惚とすら言えるような表情で、感慨にふける宗崇に――、 「……誰もお前にやるとは言ってない。返して貰おうか」 前に進み出て、不敵に言い放つ天戒。 「お前たちニンゲンが持っていても、無意味なモノだ。 この勾玉は、覇王にこそ、相応しい――」 睨み返す宗崇。 「そいつが王の器にふさわしいかどうかは、天が決めることだ――。 天に背きし貴様が、王である筈がない」 「ふっ――ならば、見よ!」 全員が見つめる前で、<陰><陽>二つの勾玉が、くるくると宙に浮き、 ついには融合して、一つになった。 「我を巡れ、≪龍脈≫の≪力≫よ!目覚めよ、≪黄龍≫の≪力≫よ――!」 叫ぶ宗崇。そして――! 戦闘へ――。
〜うわあっ! なんじゃ、この<邪龍>って敵は!? デカ! 攻撃がどこからともなく来るので、まずは攻撃目標を捜すところから始める始末。 どうやら、三つ(四つだったか?)ばかりの「急所」があるようだ。 相手がいかにデカくても、要は急所を叩けばよい。ならば、今までの敵と、大差はないさ。 行け、鬼龍組! 行け、ラブラブカップル(笑)!〜
「秘拳・黄龍ラブラブ菩薩拳!」 (↑そんなワザはありません) 遼&藍の究極の秘密兵器がついに炸裂して(しませんって)、 富士山頂に巻き付く、巨大な邪龍は消え去った――。 富士の≪気≫も本来の自然の流れに戻っていく。 しかし、上空には渦巻く黒雲がわだかまったまま、雪も降りしきるのみ。まさか――? その、時! 「ニンゲン……め……」 ボロボロになり、回復も効かない様子の――宗崇、現る。 「まさか……貴様らニンゲン如きに……我が大望を阻まれることになろうとは……な……」 「柳生っ!」
「――≪器≫、か……。なるほど、確かに≪龍脈≫の≪氣≫は、 我が身に受けるには、巨大過ぎた。 抑えきれず――黄龍ならぬ、ただ暴れ回るだけの邪龍になってしまった。 だが、<次>は、こうはいかぬぞ。必ず、この≪力≫を、我が物にして見せる――」 ぶつぶつと「反省」をする宗崇の足元に、団子の串が突き刺さる。 「貴様に<次>はねえよ。ここで死ぬんだからな」 視線を上げた宗崇に、もっともなツッコミを入れる京梧。 「――ふ……ふっふっふ……」 「なにがおかしい」 「言った筈だ。我は不死身だと――。何度でも甦り、この世を闇に染めてやる……」
「そんなことはさせないわ! 私たちだって――何度でも、この世界を護って見せる!」 かかってきなさい状態のせいか、心もとても強くなった藍が叫ぶ。 「限りある命のニンゲンに、それは出来ぬ。それが、ニンゲンの宿命と言うやつよ」 「いいえ。私たちの子が――また、その子が――その<想い>は、受け継いでくれる。 それが、それこそが、人間の≪力≫というものよ」 「……藍の言う通りだ。生の価値とは、どれだけ永く生きたか、ではなく―― 限りある生の中で、<何を成したのか>――それに尽きる。 そして、成し得たことを、子々孫々に受け継いで行く……。 そうして、彼らの記憶に残ったその者は、≪不死の者≫となるのだ。 本当の意味での、――な」 頭領らしく、藍を庇うようにずいと前に出て、締める天戒。
「ふん、この期に及んで、まだそんな戯言を。 ならば、そのニンゲンの≪力≫とやら、見せてみろ――」 そう言った宗崇の目は、天戒でもなく、藍でもない、他の面々ではさらさらない、 ただひとり、遼次郎だけを見据えていた。 「求め」に応じるがごとく、心配する一行を抑え、一騎討ちの舞台に進み出る遼次郎。
「ことごとく我が邪魔をした、水箭戸――遼次郎。 貴様の存在が鬼と龍をひとつにし、 貴様がもたらした<勾玉>が、結果としては我を滅ぼした。 黒蠅翁も気にしていた貴様――貴様こそが、もしや……真の――? ならば、貴様を倒し、貴様を<我が物>にできれば――!」 野望に燃える剣を構える宗崇。 「……その挫けぬ精神力だけは、見習うべき点なのかもしれんがな――」 呆れたように、秘拳の構えで応じる遼次郎。 そして――!
★
その時、遠くから富士を見ていた者が居たら、仰天しただろう。 不気味な黒雲に包まれていた富士の山頂に突然、 まるで龍が昇天するかのような、眩しい光の柱が立ち昇り、 雲を切り裂き、吹き飛ばしたからだ。 しかも次の瞬間、 ここしばらくの不気味な天候不順がウソのように晴れ渡り、青空が見えたのだから……。 そして江戸では、さらに驚いた現象が起こっていたと言う――。
最終話「真神」へ続く――。
ふう。いよいよラス前です。 とりあえず、今回は藍が元気です(笑)! 敵の首魁に、ガンガン説教カマシてくれています! やはり、前回で、ラブラブ状態になったのが、精神的に大きな支えとなっているのでしょう。 「秘拳・黄龍ラブラブ菩薩拳」なんて技だって出せます(出せません)し! しっかし、他のメンバーは見事に出番がなかったなあ。 しかたないから、京梧の団子の串くらいは付け足しておきました(笑)。 さあ、次はいよいよラストです! |
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