番外編2 : 貧しい食卓

人は、私達夫婦がとんでもなく貧しい食生活を送っているに違いないと考えがちである。

実のところ、私達の食事はとんでもなく貧しい。

豆入りの玄米にみそ汁、煮物か漬物。朝食にはタマゴがつくものの、肉などは、まず登場しない。スーパーの肉のコーナーは素通りだ(もっとも、塩・油などのコーナー以外はほとんど素通りなのだが)。

つまり、「見た目」と金額的に言って貧しい。

しかし、負けおしみのようだが、私達の満足度はかなり高い。人生において、かつてないほどだ。

私達の「満足と感じるレベル」は、埼玉時代よりだいぶ引き下げられているようだ。

ともかく、食べるものがあること自体かなり嬉しい。

たまにトウフを使った料理などをもらうと、「おお、トウフだぁ!」と喜んでしまうし、カニ缶をもらった時など、カニの持つ圧倒的なまでのうま味に翻弄され、言葉を失うほどだった。こういう喜びが理解できなくなるほどに、「満足レベル」を引き上げてしまわないようにしたいものだ(このように貧しさを心のありようでカバーしているかのような私達を「ギマン的」と人は思うだろうか。ともあれ、この「満足レベル引き下げ法」は、いろいろな事に応用できるのでお試しあれ。よくはわからないが、地球環境を守る生活へのヒントも含まれているような気がする)。

それに加えて、私達の食材には「生命力・安全性」がある。

自分が作ったコメ・野菜、健康なトリとそのタマゴ、沢で釣ったイワナ。この村の山菜・キノコも天下一品だ。こういった自然の「気」が満ちたものを食べられる喜びは何ものにも代え難い。

とにかく、どんなごちそうを食べるにしろ、食べ物への素直なありがたみが湧いてこない時には、雪をどんどん腹につめこんでいくのと大差ない。

山登りの時、山頂で食べるただの塩むすびがどんなにうまいことか。

私達はいつも登山者のような心持ちなのかも知れない。

(2001.1 紙版「んだすか。」から転載)
30. わびしすぎた「ワカメいため」
29. ざるそば地獄
28. カレーはまずく作れ
番外編7. “ステキ”な暮らしは
遠く

27. カステラ・クリスマス
26. お菓子のライバル
25. 桜エビさえあれば・・・
24. おかゆ生活を偲ぶ
23. 「ワカメ炒め」VS
「マヨネうどん」

番外編6. 倹約妻との日々
番外編5. 雪の中のニ人
番外編4. 婚前旅行の思ひ出
22. つわりの終わり
番外編3. カラマーゾフのヤギ
番外編2. 貧しい食卓
21. あおいのつわり
番外編1. 農民あおい
20. 「コーシー」中毒
19. 肉なし「肉まん」
18. コロッケにあこがれて
17. 雪を食べる
16. 幻の愛妻弁当
15. アケビのヤケ食い
14. 村のおやつ
13. 確信の食事ぶり
12. キノコの道
11. ろくさんのイワナ
10. お菓子の家
09. ついに肥料まで・・・
08. オカラを取られたトリ
07. 怒涛のスイカ
06. うちのニワトリを食べる
05. さまざまなモチ
04. 「お好み焼き」の連続食い
03. 栗ごはんの日々
02. 熊のスパゲティ
01. 「玄米きりたんぽ」の末路
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