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その4 : 「お好み焼き」の連続食い
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何でもミソ味かしょう油味になってしまうわが家の味付けにいささか飽きてきた僕は、ソースの導入を何度もあおいに進言してきた。が、「ソースはトマトや玉ねぎがとれたら作ればいい」とあっさり却下されてしまう。ねばりにねばって、今年に入ってついに百数十円の「ブルドック中濃ソース、300ミリリットル」の購入が許された。
とは言え、フライやカツがあるわけでなく、ソースは使われることなく、しばらく棚の上に放置されていた。
あおいが出かけていた昼時、僕はソースを使ってみたくなった。台所には珍しく、もらったキャベツがあった。
「そうだ、お好み焼きだ!」
僕はキャベツの葉を2枚を大きく切り、小麦粉と混ぜ、水で練った。それをフライパンで焼き、皿にのせた後、ソースをたっぷりかけて、青のりをやみくもにふりかけた。
これがべらぼうにうまかった。けずりぶしやマヨネーズや肉やエビや紅しょうがなど、欠けているものは多かったが、完全にお好み焼きの味だった。キャベツ、ソース、青のりの三者がそろえば、それはほぼパーフェクトに「あの風味」をだしてしまうようだった。玄米食になじんだ僕には、かなり派手な俗世間の味だった。
帰ってきたあおいにその話をすると、彼女は非常にうらやましがり、「明日さっそくまたやってくれ」とせがんだ。
翌日の昼にもう一度同じように作って見た。すべてが昨日の倍の量の割合で混ぜ、焼いて、ソースと青のりをかけた。
「おいしい〜」とあおいは例の震える泣きそうな声になった。食べて入る間に次のを焼く。でも一瞬で食べてしまうので、焼けるのをもどかしく待つ。
4枚食べたところですべてなくなった。もうさすがに「満腹」という感じ。が、あおいの方はまだ入るようだった。
「まだ、何か食うのか?」 うなずくあおい。
「よし、モチでも食うか」 首をふる。
「何がいいんだ?」
「お好み焼き」
え?これからまたキャベツを切ったり、粉をといたりしろというのか。
「私は同じものたくさん、いつまでも食べ続けるのが好きなの」
そうなのだ。これが彼女の特徴的な食事パターンなのだ。
甘いものを食べた後に口直し、などと言う発想は彼女にはない。ただひたすらに、まんじゅうなどを連続的にたんたんと食べるのがあおい流だった。
かくして2時間に及ぶお好み焼きタイムが繰り広げられたのだった。
(2000.7.12)
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