その28 : カレーはまずく作れ

僕は好物を尋ねられると「寿司、うなぎ、ザルそば」と答えることに決めているが、一つ別格と言える食べ物がある。

それは「カレー」。

カレーのにおいはどんな時でも確実に食欲をかき立てるパワーをもっている。カレーを一度食べ始めるとやめられなくなって、小食の僕ですらどんどんおかわりをしたくなるものだ。そして実際多くの日本人がそうなのではないか。考えてみると恐ろしい食べ物だと言える。インドの人はすごい料理をあみだしたものだ。友人がくれたココナッツミルクの入った激辛のタイ・カレー(グリーンカレー)も本当にうまかった。

あおいも無類のカレー好きで、しょっちゅう作りたがる。カレーを作ると二人とも、つい食べ過ぎるので、あまり作らないように言ってあるのだが、僕がちょっと目を離すと、もうジャガイモを切り始めていたりする。

あおいの食べ方はこうだ。

ご飯は少な目で、割とサラサラに作ったカレー汁をたっぷりかける。ご飯をできるだけ食べないようにして、カレーを中心に食べ進め、「あっ、ご飯が余っちゃった」ということで、またそこにカレーをおたまでたっぷりかける。それを何度もくり返す「永久カレー」のパターンに入っている。だから一回の食事でひと鍋のカレーを全部食べてしまうことが多い。

鍋に少し余ったりすると、翌日、またジャガイモやカレー粉を足して、「あっ、またこんなにできちゃった!」とわざとらしく言い、それでまた「永久カレー」をやるという、もはや救いのないエンドレスな世界に突入してしまうのだ。

僕もつられて食べてしまうが、胃腸の処理能力があおいとは違うので、後で苦しむことになる。

ローストチキンの焼き汁をロクさんにボトル一本もらったときも、さっそくあおいはそこにカレー粉やら、クミンシードやらを加えてカレーを作り始めた。最後にコクを出そうとウスターソース(業務用)を入れたところ、ドボドボ入れ過ぎてしまった。

「ありゃー、まずくなっちゃったかな」

が、僕は言った。

「それでいいんだ。カレーはなんとかまずく作ってくれ!」

(2004.1)
30. わびしすぎた「ワカメいため」
29. ざるそば地獄
28. カレーはまずく作れ
番外編7. “ステキ”な暮らしは
遠く

27. カステラ・クリスマス
26. お菓子のライバル
25. 桜エビさえあれば・・・
24. おかゆ生活を偲ぶ
23. 「ワカメ炒め」VS
「マヨネうどん」

番外編6. 倹約妻との日々
番外編5. 雪の中のニ人
番外編4. 婚前旅行の思ひ出
22. つわりの終わり
番外編3. カラマーゾフのヤギ
番外編2. 貧しい食卓
21. あおいのつわり
番外編1. 農民あおい
20. 「コーシー」中毒
19. 肉なし「肉まん」
18. コロッケにあこがれて
17. 雪を食べる
16. 幻の愛妻弁当
15. アケビのヤケ食い
14. 村のおやつ
13. 確信の食事ぶり
12. キノコの道
11. ろくさんのイワナ
10. お菓子の家
09. ついに肥料まで・・・
08. オカラを取られたトリ
07. 怒涛のスイカ
06. うちのニワトリを食べる
05. さまざまなモチ
04. 「お好み焼き」の連続食い
03. 栗ごはんの日々
02. 熊のスパゲティ
01. 「玄米きりたんぽ」の末路
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