|
その14 : 村のおやつ
|
 |
「アブラゲ食ったことあるか」
お隣のユキオさんに聞かれて、え、あの豆腐の揚げたやつ?さすがにそれくらいは、と思っていると
「アブラゲ、まあ、テンプラとも言うどもな。」と言われてもうチンプンカンプンになってしまった。
「ここらのおやつみてえなもんだ。そのうち食べることもあるべ」とおばさん。
どうやらお菓子らしい。そう聞いてあおいは早くも「えー、食べてみたーい。」と言っている。
やがて部落の春祈祷(女の人の集まり)で、あおいはそのアブラゲを食べることになる。帰宅し、興奮気味にそのうまさについて僕に伝えようとするが、どうもイメージがわかない。
そうこうするうちに玄関で隣のおばさんの声。
「今日は彰さんが食べられなくてかわいそうだったから、アブラゲ作って来た。」
なんという優しさ!見ると、揚げまんじゅうと言うか、アンドーナツのようなものが8つ。給食の揚げパンのような香りがうまそうだ。
「これこれ!」とあおい。
1つをかじってみると意外と皮がモチモチしている。小麦粉にもち米粉を混ぜてあるとのこと。そして中に入っている甘いものは、最初わからなかったが、なんと干し柿のようだった。他のやつは中身がサツマイモだったり、甘納豆だったり。最後のやつには、信じられないことに、ビスケットが入っていた。なんという革命的なおやつなんだ、このアブラゲ(テンプラ)ってやつは!
あおいは、今日さんざん食べてきて、おなかいっぱいと言っていたにもかかわらず、揚げたてのこれを見るとまた僕と一緒に食べ始めた。
もう1つ、この村の代表的なおやつは「あずきでっち」だ。
小豆を白砂糖をザラメで煮て、そこに蒸かしたもち米を混ぜ、カタに入れて固め、ヨウカン状にしたものだ。ヨウカンのようで味はおはぎというか、ともかくこれを緑茶といっしょに食べると無性にうまい。
おばあさんが作ったというあずきでっちをろくさんに大量にいただいた。
あずきでっちは、うまいのう。
普通のヨウカンにして10本分というところ。これらを2人で(おもにあおいだが)3〜4日で食べ尽くしてしまったということは、ろくさんも知るまい。
(2001.1.11)
|
 |
|
|
|