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その19 : 肉なし「肉まん」
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部落の寄り合いに出るたびに、僕は余ったおつまみの類をしばしば持ち帰る。
「ツナピコ」という、サイコロ型の甘辛い乾燥魚肉のおひねりみたいなやつをご存知だろうか。これをたくさん持ちかえった時は、ゴマ、青ノリ、塩などとすり鉢の中ですって、「ふりかけ」を作った。これがなかなかの傑作で、あおいはこれがあると、ご飯を何杯もおかわりした。
スルメや、「イカくん」の場合は、ハサミで細切りにしてビンに保存し、この細切りイカを、ゴマ油と余った酒で炒め、ネギ、白菜を投入し、塩をふって作った僕の「野菜炒め」は何故か「中華」という雰囲気があり、あおいの絶賛をあびた。
真冬のお昼どき、「何を食べようか」と話し合っていると、あおいが「前にもらった肉まん、あんまんがおいしかった」と言い出した。でも今ここにそんなものはないのだし、そんな夢のようなことを言うのはよそう、と僕がたしなめると、あおいは少し考えていたが、「そうだ!」と言って立ち上がった「ちょっと待ってて、作ってくる」。
かなりたって、あおいは本当にホカホカの大きなまんじゅうがいっぱいのお皿を持って現れた。
「こっちが肉まん」2つに割ってみると、中身はあの「野菜炒め」を更に細かく刻んだものが入っていた。かぶりついてみる。と同時に僕は叫んだ。「肉まんだ!」肉などないが、ほぼ、あの雰囲気は完全に出ているように思われた。ゴマ油の香りが決定的な効果をあげているようだった。
続いて「あんまん」の方を割ってみると、中にカボチャの黄色いあんが入っている。
「うーん」と僕はうなった。何という執念だ。ここまでして・・・・。本物ほど皮はふかふかではなかったが、二人は満足して「肉まん、あんまん」を腹一杯食べた。
焼肉のタレが手に入った時、僕たちはストーブにフライパンをのせ、シイタケやジャガイモ、キャベツ、ニンジン等を焼いて、そのタレをつけて食べた。なんとなく焼肉を焼いている気分になった。あおいなどは「焼肉はうまいのう」とあからさまに言った。
この「肉なし焼肉」のことが「テケテケ日記」に出た後、あわれに思った知人から立派な牛肉がおくられて来た時は恐縮したものだった。
(2001.4.25)
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